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【ダークサイズ】捨て台詞選手権

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【ダークサイズ】捨て台詞選手権

リアクション

6.大総統の館 4階ガーディアン

「ふう。今回はプライベートビデオとはいえ、結構な撮影量になってしまったわね……」

 ダイソウ達が上がってくるのより一足先に、ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)は4階に向かって階段を駆け上がる。
 彼女はレティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)に今回も付き合わされ、ビデオ撮影係。
 ヒマつぶしも兼ねて、これまでの戦いの数々をビデオに収めている。
 そして続いて4階ガーディアンキャノン モモ(きゃのん・もも)の出番である。
 ミスティは長い間モモとレティシアをほったらかしにしていたので、二人を(正確にはモモを)心配して4階のドアを開ける。

「さぁ〜、モモちゃん……今日もおねぇさまとイイコトしましょうねぇ〜」

 レティシアが両手を妖しくひらひらさせながら、じりじりとモモにせまる。
 対するモモは、引きの体勢を取りながら、レティシアと距離を取っている。

「レティさん……私にはまだそういうのは早いかと……」
「あれぇ、モモちゃん。エリュシオンではあんなに素直だったのにぃ」
「いや、あれは違うんです……」
「何が違うんですかねぇ」
「不可抗力というか、事故というか……」

 レティシアのアタックで、怪しい関係に発展しつつあった二人。
 時間をおいたせいもあって、冷静になったモモは、

(そういえば私、危険な道に踏み込むところでした……)

 と思いなおし、レティシアはそんなモモの再度調教に励んでいる。
 レティシアは突然、瞳を潤ませ、

「モモちゃん! あれが事故だったというんですかぁ? あ、あちきの身体をあんなに弄んでくれたっていうのにぃ」
「いや、弄んだのはあなたでしょう……」
「もうモモちゃんの唇を忘れられない身体になってしまったっていうのにぃ!」
「き、キスはまだ……確かまだだったはず……ですし。とにかく私情で使命をおろそかにするわけには」
「えーい、しゃらくせぇ小娘だ。おとなしくあちきのものになればいいんだよぉ!」
「や、やめてください! もうすぐみんな上がってきますよ」
「よいではないかぁ。よいではないかぁ!」

 ミスティは、

(……いつの間にこんな小芝居が……?)

 と思いながら、忘れずにカメラを回し続ける。

「一ついいか、娘。このダークサイズとやらは、百合クラブという認識でよいのだな?」

 ズズ・トラーター(ずず・とらーたー)が、ミスティに話しかける。

「いや……その認識はダメね……」

 と、ミスティは一応否定するものの、

「それ以外にどう解釈しろと……?」
「うーん……」

 と、モモとレティシアのお代官様ごっこを眺める。
 そんなことは気に留めず、七瀬 雫(ななせ・しずく)は、

「よーし、今日は思いっきり目立つぞー」

 メモしてきたアイデアを見ながら、気合いが入っている。
 結構必死に逃げるモモ、追うごとに興奮が増すレティシアを見ながら、チーターを基本とした元キメラのズズは、徐々に本能を刺激され、うずうずしてくる。

「うーむいかん。雫、ちょっと行ってくる」
「え?」

 と言い残し、しなやかな四肢を躍らせて、鬼ごっこに参加。

「きゃっ」

 ズズはモモをひょいと自分に乗せ、フロア狭しと走り回る。

「あーん! モモちゃん、それはずるいですねぇ〜」

 レティシアは文句を言いながら、ズズに乗るモモを追う。
 そこに3階から上がってくるダイソウ達。
 子供のように走り回って遊んでいるようにしか見えないモモたちを見て、

「お前達……何をしているのだ……?」
「ち、違うんですトウさん、これは違うんです」

 ズズを駆りながら、モモは珍しく戸惑った感じで言い訳する。


☆★☆★☆


『では気を取り直して、4階ガーディアンですね』

 追いかけっこで息が上がっているレティシアを脇に、リアトリスが取り仕切る。
 レティシアは戦闘前に早速休憩に入り、結果的に雫が対ダークサイズの前に立つ。

(まずは……まともな戦闘ができそうですね……)

 モモは少しほっとしながら、雫の隣に立つ。

「よーし、今日はモモちんのスタンプもらうんだもんね! さぁ行くよ、サンフラワーちゃん!」
「え? ちょ、あたしもなの?」

 いよいよ本領発揮と、美羽が向日葵をひっぱり、前に出る。
 美羽のスタンプ集めも、いよいよ残すはモモとダイソウ親衛隊。
 ラルクのスタンプはあるものの、他の親衛隊員が不在のため、今日はモモのスタンプ獲得に的を絞る。
 コハクは美羽のスタンプカードをカメラで写し、対峙する美羽・向日葵VS雫・モモの画を抑える。
 美羽はモモを指さし、

「モモちん! こないだの約束、覚えてるよね」
「もちろんです。私のスタンプが欲しければ、正々堂々! 戦って私を負かすしかありません」

 本来の自分をどうにか取り戻したモモは、すらっとサーベルを抜き放つ。

「不意打ちみたいにまともな戦い来た……ちゃ、ちゃんとやんなきゃだね」

 と、若干の緊張を見せる向日葵。
 雫も負けじと、

「へえ、ダークサイズにはそういうシステムがあるんだね……私が入るからには、これ以上スタンプなんか押させない!」
「対峙する女戦士4人……ふふ、良い画だね」

 コハクも満足そうにカメラを覗く。

「はあっ!」

 早速攻撃をしかける美羽。
 モモはそれをいなし、後方にステップした雫が、ハンドガンを撃つ。
 美羽もそれを読んでかわし、モモに向かって背後からとび蹴りで襲いかかる。

ひゅんっ!

「き、消えた!」

 突然モモの姿が消える。
 美羽が周りを見渡すと、向日葵が、

「美羽ちゃん、あっち!」

 と、指をさす。
 見ると、猛獣使いよろしく、ズズに乗ったモモの姿が。

「あ、あれモモさん? ズズさんは私のパートナーなんだけど……」

 と、戸惑う雫。
 モモはズズをなでながら、

「すみません、雫さん……でも私も……乗り物欲しかったんですっ。トウさんみたいに!」

 と、誰にも言ったことのなかった本音を漏らす。
 ダークサイズ幹部の動物形態の者に、次々に騎乗してしまうダイソウ。
モモは密かに羨ましかったらしい。

「俺を乗り物扱いするではい……」

 と、ズズもこぼすが、まんざらでもない様子。
 負けじと美羽と向日葵はモモを攻めるが、さすがチーターの足になかなか追いつけるものではない。

「は、早い!」
「さすがダークサイズのキャノン・モモ。モモさんの4階を選んでよかった!」

 雫がモモを心強く思いながら、さらに美羽たちの前に立つ。

「ふっふっふ。あなたたちのダークサイズ壊滅作戦もここまでだよ。みんなこの4階で倒れることになるんだからね!」
「なーに言ってんの。今回はあんたたち、負けなきゃいけないんだからねーだ」

 向日葵が雫に言い返すが、雫は動じない。

「だったら、私の壁を乗り越えることができるかな?」

 雫は戦闘態勢を説き、遠い目をしながらそれを見上げる。

「私……この戦いに負けたら、美羽さんにスタンプ押してあげるんだ……」
「な、そ、その台詞……!」
「し、死亡フラグだとっ!」

 と、俄然ギャラリーが盛り上がる。
 ジュレールやコハクが、代表して観戦者の終夏、シシル、ガレットにカメラを向ける。

「死亡フラグとは、その台詞を言った者は次の戦いで思い叶わず死んでいくというもの!」
「つまり解釈を変えると、言った内容と逆パターンの展開が起こらなければならない!」
「ということは! ダークサイズがこの戦いに『負けない』という展開にならなければならない!」
「七瀬雫……あの女、やりやがるぜ……」

 と、普段の口調を無視して説明台詞。
 顕仁もあごまで流れ落ちる汗を手の甲で拭いながら、

「しかしまさか実行する奴がおるとはのう……『死亡フラグの悪用』!!」

 雫は美羽を指さし、宣言する。

「これで、あなたがスタンプを完成させるという展開は『ない』っ!」

 ガーンとショックを受ける美羽。

「そ、そんな……スタンプ……スタンプぅ〜……」

 とつぶやく美羽を、向日葵は励ます。

「大丈夫だよ美羽ちゃん!」
「さ、サンフラワーちゃん……?」
「あなたは此処で倒れちゃいけない! あたしに構わず、先に行けえーっ!」
「サンフラワーちゃん!」
「あたしは必ず、後から追い付く!」


 と、向日葵はモモを指して、美羽を促す。
 ジュレールとコハクが、すかさずカメラを終夏たちに向ける。

「な、なにいーっ!」
「出た! 『死亡フラグ返し』!!」
「反則技だが、悪用に対抗するにはこれしかない!」
「ていうかこれ、返したことになるのか!?」
「もはやよくわからん!」

 終夏たちの解説に後押しされ、勇気を取り戻した美羽はモモに向かってダッシュ。
 そして残った雫と向日葵。
 二人とも後方支援タイプのクラスのため、どのような戦闘になるか、観客も興味津津である。
 口火を切ったのは雫。

「悪いけど向日葵さん、この勝負、魔鎧をパートナーに持つ私の勝ちだよっ!」
「しまった! 魔鎧で強化されたらまずい……」

 向日葵は一歩後ずさる。
 交代する隙に、雫はズズに魔鎧化の合図。彼女はズズを纏おうと、高くジャンプする。
 が、

きゅぴーん

 床に降り立ったのは、そのままの姿の雫と、なぜかズズを纏ったモモ。

「あれーっ、モモさん!? ズズさんは私のパートナーなんだけどーっ!?」
「わ、私も何が何やら……」
「俺も何が何やら……」

 全身ヒョウ柄のカウガールのような魔鎧を纏った、セクシー仕様のモモ。

「いいっ! いいですねぇ、モモちゃん!! カウガール、いや、『ヒョウガール・モモ』ですねぇ」

 レティシアのテンションが一気に上がる。
 モモたちが戸惑う隙をついて、美羽が『ヒプノシス』を発動。

「こうなったら奥の手だよ!」

 美羽は紐で吊った5円玉を垂らし、ゆらりと揺らす。

「あなたはだんだん、スタンプを押したくなる……押したくなぁ〜る……」
「し、しまっ……」

 ヒプノシス(催眠術)を逃れようと、モモは首を振って意識を保とうとするが、美羽は容赦ない。

「スキルと連動してるから、そう簡単には逃れられないよー。さあ、このシートにスタンプを押しなさーい……」
「はい……」

 と、ふらふらと進み出て、スタンプを押したのは向日葵。

「あれ? 向日葵ちゃんまでかかっちゃった……ま、いいか……」

 以前美羽が向日葵にプレゼントした『魔女っ子サンフラワーちゃんスタンプ』。
 それを手に入れて、それはそれで満足げな美羽であるが、あくまで目的はモモのスタンプ。
 モモは手強く抵抗するが、

「も、モモちーゃん。あちき、辛抱たまらんのですねぇ……」

 ズズを纏ったヒョウガール・モモに、レティシアが後ろから抱きつく。

「ちょ、レティさんっ……今は、だめぇ」
「このむきだしの引き締まったお腹。久しぶりですねぇ」
「レティさんっ……味方じゃないんですかぁぅ……」
「あちきも美羽ちゃんの催眠術にかかってしまったんですねぇ。手が勝手に」
「あ……うぅ……うそ……つきぃ……」
「モモちゃんは、あちきの愛を受け入れたくなぁ〜る……」
「……は……はい……」
「あと、スタンプも押したくなぁ〜る……」
「……はい……」

 雫と向日葵をほったらかしで、美羽とレティシアのツープラトン催眠術に、ついにモモは陥落。
 美羽はモモのスタンプを手に入れた!
 レティシアはモモの洗脳に成功した!


☆★☆★☆


 ついに美羽に負けてしまったモモ。
 催眠術が解けた後も、色んな意味で打ちのめされて立ち上がれない。

「この仇は、おねぇさまが絶対にとってくれるはず」

 と、まじめな性格から、レティシアが応募した捨て台詞を言ってみるが、この『おねぇさま』は、キャノン・ネネではなくレティシアを指すため、状況的に何が何やら分からない。
 ダイソウが心配そうにモモに近寄り、

「モモよ……お前は今後、そういうの担当ということで、よいのか……?」
「……もう、どうにでもしてください」

 と、対ダークサイズではなく、レティシアへの敗北宣言ともとれる発言を残す。
 捨て台詞ではなく、なぜか死亡フラグを応募してしまった雫は、向日葵に、

「僕と契約して、パートナーになってよ」

 と、ズズを取られたような寂しさに、冗談紛れに言ってみるが、まだ催眠状態の解けない向日葵は、

「……はい……」

 と、言ってしまったのだが、これが契約としての効力を持つかどうかは謎である。