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太古の昔に埋没した魔列車…環菜&アゾート 2

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第10章 水の都の駅舎に相応しくあるには…Story2

 翌朝、日が昇り始めた早朝に、製図をもらおうと陣たちは静麻とロアがいる部屋へ走る。
「おはよう!図面、完成したん?」
 扉を開けて静麻に声をかける。
「あぁ、深夜にな」
「これを参考にすればいいんやね」
「ロアは…眠っているのか」
 パートナーの隣で目を覚ましたグラキエスは、労いの言葉でもかけようと思ったが、彼はぐったりと疲れ、枕を抱いて眠っている。
 実は、グラキエスが眠っていた間、ロアがマッサージをしたり、毛布をかけてくれたりしてた。
 そのおかげで彼のほうは起きても疲れがまったく残っていない。
 起こさないように小さな声音でロアに、ありがとう…お疲れ様、と呟いた。
「主とロアが明け方まで眠らずにいたのだから、我も働かねばな」
 図面の引き方をロアに教えるはずだったが、静麻が丁寧に教えてくれたようで、アウレウスは待機組みとして休息をとっていた。
「駅舎の外に商品や棚とかが届いているぞ」
 発注しておいたものが届いたと和輝が、アウレウスたちに知らせる。
「了解した」
「マネキンや椅子もあったが、誰が注文したんだ?」
「あぁ…、俺だ。ショップの内装に使うんだ」
「さっそく検品に参りましょう、主!」
 全てそろっているかどうか、アウレウスとグラキエスが確認しに向かう。
「ボクたちはシートでも敷いておこうか?」
「床が傷ついたりしないようにやね」
「陣くん、栄養ドリンクのビンが転がってるから踏まないようにね。部屋を出る前に無能化しちゃうよ?」
「うっさいうっさーい、黙れー。本日も快晴やし、絶好調やっ」
 シートを担いでいるせいで両手が塞がっているものの、口で怒りをぶつける。
 資材の搬入してもらうため、通りそうな場所にバサッとシートを広げる。
「技士のおっちゃん、まずは雑貨から作ってもらいたんやけど」
「ぁいぁい。よーし、ぱーっと墨出し済ますぞ、技師2号」
「おっけー」
 2人は軽い口調で言い、内装工事を始める。
 陣がエレベーターで2階に上りきると2人はすでに、墨に合わせてコンクリートブロックを積み上げ、間仕切り作業に入っている。
「おっちゃん。カウンターの上に明かりを置きたいんで、その後ろにコンセントが欲しいんや」
「日本のタイプでいいのか?」
「図面には2極コンセントって、指示があるな」
「んじゃ、日本製だな」
 そこまで欧州の様式を取り入れると扱いが困難になるため、静麻は分かりやすい安全な日本式に統一してくれたようだ。



「駅舎に置く商品の企画ねえ。パラミタ産物の店とかが基本ですよね。コンロン名産の干しく…」
「駄目に決まっているじゃない!」
 玄秀のとんでもない提案を、ティアン・メイ(てぃあん・めい)が却下する。
「首飾りとしてアクセサリーにもなったりしない?」
「ヴァイシャリーに、そんな偏狭の地にいそうな部族アクセサリーなんて、相応しくないわよ!」
「じゃあ、ティアはなんだったらいいのさ?」
「私はー…そうね。お店ってやっぱりかわいくなくちゃ。ぬいぐるみとかアクセサリーとかいっぱい置いて…」
 原色の色合いや、ファンシーで乙女チックな想像をしてみるが…。
「…想像図見てて目が痛くなって来たので却下してもいい?」
 叩き斬るかのようにあっさりと玄秀に却下される。
「(同じこと考えて人がいるだっているのに!)」
 乙女心を理解しようとしない彼に、ムッしたティアンは頬を膨らませながら、コンテナを装備したイコンを操縦する。
「ティア、急に運転が荒っぽくなったけど!?」
「気のせいよっ」
 エレベーターの傍で停止し、フンッとそっぽを向く。
「ねぇ、シュウも手伝ってよ」
 イコンから降りたティアンは、資材をシートの上を降ろす。
「えー…僕は遠慮したいですね」
「手伝おうか?」
 内装工事の様子を見に来たアゾートが、ティアンに言う。
「まだ重たいマネキンとかしかないわよ」
「僕がやりますから、アゾートさんは見学でもしていてください」
「別に…そんなに非力じゃないよ?―…ん〜」
 上半身だけのマネキンを抱え、よたよたとふらつきながらエスカレーターで上る。
「(大丈夫かしら?あ、戻ってきた…)」
「他にも2階に持っていくのある?」
「まだいっぱいあるわよ、その商品棚とかね。でも危ないから店舗の様子を見学してるだけでいいわよ?」
「エリザベートだって仕事してるのに。1人だけ何もやらないのはヤダよ」
「―…俺と運ぼう」
「うん。んー、重いっ。でも頑張る…」
 ただ待っているだけより運んでおいたほうが、工事が終わった時に配置しやすくなると考え、グラキエスと一緒に運ぶ。



「陣くーんっ。指示だけじゃなくって、手も動かしなよー!技師さんばかりに働かせないでよねーーーっ!!」
「速やかにダ・マ・レーーーっ!!!」
 いつの間にやら子供スペースの方で、イラスト書きを手伝っているリーズに向かって、メガホンを手に怒鳴る。
「まったくもう。アゾートちゃんだって、重いもの運んでるのにっ」
 滑り台にキリンのペイントをしつつ、陣がいるほうを睨む。
「後は施工管理技師っちと進めるから、戻ってもいいよ?イラスト描いてくれてありがとうっ」
「どういたしまして♪頼りない陣くんが心配だし、戻ってあげるかなー」
 仕方ないから戻ってやるか、と施工管理技士3号、4号を連れて、雑貨店の工事現場へ戻る。
 施工管理技士の2人は陣の指示の元、パテ処理に入っていた。
「技師のおじさんたち、ボクたちも手伝おう♪」
「へいへい」
「なんで間仕切り壁がいるんだ?」
 ビス頭や壁の繋ぎ目をパテで埋めつつ、1店舗の中に壁があることを疑問に思い、技士4号がリーズに聞く。
「歌菜さんとメシアさんたちの雑貨の領域を分けるためだよ。片方は少し高い品物を置くからね」
「レジも別々ってことか」
「そーなるかな?」
 壁や床の雰囲気は統一するが、客に同じような価格のもとして扱われたら大変だ。
 同じ領域にあったら、安値のものと区別出来ない人が勘違いされる。
 フツーは値段をみれば0のケタで分かるだろう。
 だが、マナーのよい客ばかりとは限らず、それすら見ない者もいるかもしれないからだ。
「まぁ…シャツがお手頃だからといって、ごちゃごちゃにされたままなものアレだけどさ…」
「間仕切り壁はこの店だけでいいんだな?」
「うん、他は大丈夫だよ。今回は雑貨とジオラマと…アイドルグッツ&石鹸屋、SR弁当屋の店の4店舗だね」
「規模も大きくないし、3日もあれば出来るだろ。お嬢ちゃん、クロスを取ってきてくれ」
 パテが乾ききり、技士は脚立に乗ってクロス工事を行う。
「壁紙のことだね!」
 アゾートとグラキエスが運んだ壁紙を、技士たちに渡す。
「ありがとうな」
「すごーい、あっとゆう間に出来ちゃいそう」
 工事開始から1日目。
 雑貨店の工事のみ完成した。