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【黒髭海賊団】黒髭海賊団の年末大掃除大会!

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【黒髭海賊団】黒髭海賊団の年末大掃除大会!

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 パーティーが続く間も小夜子未沙と彼女が連れてきたメイドロボたち、ローデリヒは、料理を作り続けていた。
「温かいうちに温かい物を食べて貰った方が良いからね」
 未沙が告げるだけあって、皿が空になっていく傍から、新たに作られた、温かな料理が用意されていく。
「姿勢の良さとバランス感覚ならば自信があるのだが、これは……また……違うバランスが要求されているのか」
 華奢な足に浅い器のグラスを盆に載せたままセリカが呟く。
「はっ! 巨大な光条兵器を振り回せるヴァイスのバランス感覚の秘密はこの給仕にあったのか!」
「おーいセリカ、そんな体に力入れてたら飲み物こぼすって、リラックスリラックス」
 何かに気付いた様子だが、やはり的外れのような気付きに思わず苦笑しつつ、給仕のベストと同じ布地で作ってみた雪の結晶の刺繍入り眼帯を身に付けたヴァイスが声を掛ける。
「む……これも修行と思って頑張ろうではないか」
 リラックスと言われても、直ぐに出来るワケでもなく、セリカはヴァイスにそう答えながら、飲み物を運んだ。
「あ、ランスロットさん。この料理も皆さんのところへ運んでください」
 『腕の良い料理人』と呼ばれた腕を振るって、ベアトリーチェも料理の手伝いをしていた。
 好青年であるランスロットに運んでもらえれば女性も喜ぶと思って、彼女は作った料理を彼に運んでもらうよう、声を掛ける。
「これは、何処へ?」
 ランスロットがベアトリーチェから何度目かに渡されたのは、ブッシュ・ド・ノエルという切り株型のケーキだった。
「私のパートナーの美羽さんのところに。あそこで雅羅さんと一緒に居る……」
「彼女だな」
 雅羅と共に甘いものをメインに、料理を隅から隅まで味わっている様子の美羽を指すと、ランスロットの視線もその指す先を追って、確認できたようだ。
 1つ頷くと、ブッシュ・ド・ノエルを持って、美羽たちの傍へと向かう。
「可愛らしいお嬢さん方に、こちらのケーキを」
 美羽と雅羅に近付いて、恭しく一礼したランスロットはブッシュ・ド・ノエルを差し出した。
「ケーキ! ブッシュ・ド・ノエルね」
「私たちに?」
「ええ、あちらのパティシエールさんから」
 厨房の方を指すランスロットの指先を追えば、ベアトリーチェが微笑んで手を振っている。
「美味しそうよね。でも2人で食べ切るには大きいから……美緒先輩たちも一緒に食べないか、誘おうよ」
 美羽はランスロットからブッシュ・ド・ノエルを受け取り、そう雅羅へと提案する。
「美緒たちも喜んでくれるといいわね。ランスロット、運んでくれてありがとう。引き続き頑張ってね?」
 労いの言葉を掛けつつ、雅羅は美羽と共にその場を離れていく。
「言われなくても」
 ランスロットはそれを見送って、空き皿などを厨房へと運ぶため、踵を返した。
「海賊のパーティー料理ってどんなのかしらって楽しみにしてみたけれど、家庭料理とか、イタリアン料理とかなのね?」
 期待していただけに、首を傾げてしまうセレンフィリティであったが、それでも、あれもこれもと手にした皿に取り分けていく。
「掃除でたくさん動いた分、何でも美味しいからいいのだけど……」
「そう? こっちの煮物はまだ味が薄くて……染み込むには、時間が必要な気がするわ」
 気持ちの良いくらいたくさん食べていくセレンフィリティに対して、セレアナは容赦なく、味について語る。
「そうかしら、美味しいと思うけれど」
「すげぇな、おまえ。それだけ食ってよくそのプロポーションを維持できるな」
 薄味だと言われた煮物を食べるセレンフィリティへと、給仕中のアーダルベルトが声を掛けた。
「いい女は常に見えないところで努力してるのよ」
 ふふっと笑って返したセレンフィリティは悦に入る。
「とのことよ」
 呆れたような表情を浮かべ、セレアナはアーダルベルトを見ると、肩を竦めて見せた。
「ははっ、そうかい。まあ、頑張んな」
 皿片付けるぜ、と使い終わった皿を持つと、彼は厨房へと戻っていく。
「楽しんでいないのかい?」
 食堂の片隅で皿に取った料理を突きながら、皆の様子をボンヤリと眺めている正悟へと話しかけてきたのは美緒――ではなく、“黒髭”だ。
 彼もパーティーを楽しみたい、と一時的に入れ替わったようだ。
「……いや。何というか、この一連の事件、俺は本当に何もしていないので……片身が狭い部分もあるんだよ」
 だから、話の輪に加わるでもなく、眺めていた。
「今日初めて来たヤツだって居るだろ? そんなこと言ってないで、もっと内の方来たらどうだ?」
「まあ、ここでいいよ。それより時間があるなら、少し話でも……ああ、何か飲み物を」
 “黒髭”の誘いを軽く横に首を振って答え、正悟は通りかかったエセルバートへと声を掛けた。
「酒とかは……?」
 中身の“黒髭”はもちろん成人しているだろうが、身体の美緒はまだ未成年だ。勧めていいのか分からず、戸惑う。
「一応身体の方を立ててやってくれ」
 からりと笑った“黒髭”にエセルバートはノンアルコールのグラスを渡した。正悟へも同じものを渡す。
「好き勝手するものかと思っていたが……」
「慣れない身体で飲んで、ぶっ倒れられてもな」
 意外とでも言わんばかりの正悟の表情を見て、“黒髭”は答える。
「そうか。ところで……“黒髭”は今後はどうするんだ?」
「今後か? もちろん、このパラミタ内海を統べる海賊になる」
「……、……大きく出るんだね」
 返された言葉の大きさに、正悟は一瞬反応に困り、漸く言葉を返した。
「まずは遠出する際の中継地となる島探しからだろうな。それと同時に、資金集めも兼ねて、目に見えて悪さする者たちは懲らしめてやらねえと」
 楽しみだなぁ……と零す“黒髭”は、活き活きとしている。
「まあ、今後も美緒に何かあったら容赦はしないよ」
 その点気をつけて、と正悟も返すのであった。