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「ねぇねぇ、このマスク何処で買ったの?私も欲しいなー」
「残念ながら非売品なんですよ、これ」
 伝道師が言うと、「えー」と残念そうに天苗 結奈(あまなえ・ゆいな)が言う。質問したはずだがどうも興味はこっちに行っているようで、じっとマスクばかりを結奈は見ていた。
「ふっふっふ、愛を問いますか」
 笑みを浮かべながらリィル・アズワルド(りぃる・あずわるど)が並ぶ。
「あれ、私が質問されてたんじゃないの?」
「結奈ちゃん、答える気無いじゃないですか」
フィアリス・ネスター(ふぃありす・ねすたー)が呆れ顔で言う。その後ろではアイギール・ヘンドリクス(あいぎーる・へんどりくす)が隠れている。
「どうかしました?」
「ひっ!?」
 伝道師が話しかけると、アイギールが声を上げて更にフィアリスの後ろに隠れてしまった。
「……ちょっとショックですねぇ」
「まぁまぁ・・・所で愛の話でしたわね・・・ワタシの愛、それは幼女ですわ!」
 突如背後に回るとおもむろにリィルが結奈の胸を揉み出す。
「ひゃん!?」
「この幼い体! 膨らみを感じさせない胸! ぽっこりと出たお腹に薄い尻! 起伏に乏しい体からまだ残るミルクのような甘い臭い! 最高……ッ!」
「りぃちゃんいきなりびっくりするよ〜」
「ワタシの夢は第二次性徴という概念を消し去り幼女の楽園を作ることですわ! 愛の国……想像しただけで涎が……じゅるり」
 その愛の国が実現したら業深き者は大歓喜だろうが、間違いなく破滅するだろう。
「ちょ、くすぐったいよ〜」
 体中をまさぐられ、結奈が身をよじる。
「ほらほら……ここがいいんじゃないかしら? さあ恥ずかしがらずにその可愛らしい口dがふっ!」
 突如、リィルの身体が崩れ落ちた。
「……身内がお騒がせしました」
 そう言うとフィアリスがリィルを引き摺るようにして去って行く。フィアリスの手には、【対神銃】があった。
「待ってよふぃーちゃん」
「ま、待ってください」
 その後を結奈、アイギールが急いで追いかける。
「あれ? ねえ、りぃちゃん動かないよ?」
「安心しなさい、特に問題はないから」
「……で、キミの判定は?」
 結奈達の後姿を見送り、アゾートが問いかける。
「え?いいじゃないですか。ほのぼのしてて」
「ほのぼのの意味がわからなくなってきたよ」
「考えるな、感じろ、ですよ」



「ふむ、愛ね……悪いが俺はよくわからん」
 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)が悩んだ後、溜息を吐いて答える。
「ベルテハイト、わかるか?」
 グラキエスに話を振られると、ベルテハイト・ブルートシュタイン(べるてはいと・ぶるーとしゅたいん)は優しく微笑み、彼の髪を撫でる。
「ああ、愛というのは素晴らしい物であるが、恐ろしくもあるよ」
 そう言うと、ベルテハイトはグラキエスに頬擦りするように顔を寄せる。
「私がお前を大切に思う気持ち、それが愛と呼ぶものだと私は思う」
「ならば、私がエンドを思う気持ちも愛と言うのでしょう」
 ロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)が、グラキエスを抱き寄せる。
「おい、人前だぞ……あまりべたつくなと」
「エンド、私は自我を持ったことに悩みましが、君と契約しその意義について理解しました。これからもずっと、君のために存在して君を守ります」
 グラキエスが窘めようとするが、ロアの真っ直ぐな目で見られ、溜息を吐く。
「ああ解ってるよ……なら、俺もベルテハイトやキースが好きだ」
「ええ」
 グラキエスの言葉に、ロアは満足そうに頷き、
「おお……遂に私の時代が来たというのか……!」
ベルテハイトは壊れた。
「もう我慢ならぬ……お前が悪いのだぞ、私をそんな風に誘惑などするから……」
 ベルテハイトはロアから奪う様にグラキエスを抱き寄せると、その顔を寄せる。
「おい、だから人前ではべたつくなと……」
「人前だからと構う物か。何時ぞやは留守番ばかりで蚊帳の外だったのだぞ! この好機、見過ごすわけにはいかぬ! ああ……グラキエずぶぉっ!?」
 ベルテハイトがグラキエスに口づけようとした時、乾いた音が響いた。そしてそのまま、ベルテハイトが崩れ落ちた。
「あ、すいません。そろそろ殺った方がいいかな、と思いまして」
 伝道師の手には硝煙立ち上る拳銃が握られていた。
「うん、いいと思うよ。そろそろ暴走が過ぎてきてたから、何とかしないととは思ってたし」
 アゾートがぐっ、と親指を立てた。
「……おいベルテハイト、生きてるのか?」
「返事がありませんね。ただの屍のようです」
 そうか、とグラキエスが頷くと、ロアと一緒に手を合わせた。
「ま、まだ死んでなどおらぬわ! 見ておれ……こ、このままでは終わらんぞ!」
 あ、今回はここで終わりなんで諦めてください。



「愛、ねぇ……そうだね、僕は『謎』を愛しているかな。謎めいた物は魅力だし、そのベールを少しずつ剥ぐのは楽しいよ」
 黒崎 天音(くろさき・あまね)がそう言うと伝道師ににじり寄る。
「その覆面と衣装を脱がせて君の正体を明かしたり、楽しいと思うんだよね」
 だが伝道師はそっと天音と距離を取る。
「残念ですが現段階では私の正体は明かせませんね」
「またメタな事を……」
 呆れたようにアゾートが言う。
「おや、残念」
 口では残念、と言いつつ天音は愉快そうに笑みを浮かべる。
「それだけではどうやらおまえは満足せんのだろう……おい天音、他に何かないのか?」
 ブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)が天音に話題を振る。自分の名前が出ないか、という少しの期待を籠めての発言であったが、
「そうだね……僕の場合はちょっと一般とは違うんだけど……愛の行為について語ってみようかな」
天音の発想は斜め上をいっていた。
「愛の行為、ですか?」
「おい待て、お前まさか……」
 ブルーズが止めようとしたが、天音が語りだす。


※お詫び
 いつも『蒼空のフロンティア』をお楽しみ頂き誠にありがとうございます。
 大変申し訳ございませんが、現在語られている内容は過激な内容(主にウホッ……な内容)となってしまっている為、『全年齢対象』である『蒼空のフロンティア』では描写する事ができません。
 少しの間、過激な発言に顔を真っ赤にしてあわあわしているアゾートとブルーズか、美しい薔薇園の中に設置されているベンチに座る青いツナギのいい男を想像してお楽しみください。



「こぉの大馬鹿者ぉぉぉぉぉッ!」
 ブルーズが天音の後頭部をひっぱたく。
「ちょっとこっち来い! 公衆の面前で放送禁止用語連発しおって! しかも特殊な方向の!」
「えー、僕にとっては愛の行為でしかないのに」
 全くもって反省の色など見せず、天音が不服そうに言う。
「ふむ、男性でもあのような愛があるのですか。伝道師覚えた」
「何言ってんのキミ」
 熱くなった頭に少しくらくらしながらアゾートが言う。
「興味深い話でしたよ。感謝します」
 伝道師の言葉にブルーズに連れられた天音がひらひらと手を振る。
「……ところでキミ、あっちの趣味?」
「いえ、残念ながら私はヘテロです」
「ネタが古いね……」

「全くお前という奴は……どうかしたのか?」
 考える仕草を見せる天音にブルーズが問う。
「いやね、あの伝道師だっけ? ちょっと気になってね。さっき『男性でも』って言ってたけど……」
「……どういうことだ?」
「ま、今となっては確かめようは無いけどね」
 そう言うと天音は興味を失ったかのように、鼻歌を歌い出した。