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ゾンビ トゥ ダスト

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ゾンビ トゥ ダスト

リアクション

「攻撃こそ、最大の防御! さあゾンビども! かかって来い!」
 勢いをそのまま愛剣に乗せてゾンビの群れをなぎ払うのは猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)。迫り来るゾンビの群れにも臆せず、果敢に戦う。
「ほう、この数。いかな一騎当千の契約者とも言えど、物量相手には劣勢か」
 そう言うのは勇平パートナーであるウルスラグナ・ワルフラーン(うるすらぐな・わるふらーん)だ。
「おいおい、大層な英霊がいきなり弱音か?」
「冷静に場を分析しただけのこと。それにな、これは油断から来る物言いではない。余裕から来るものよ。この程度の物量で弱音を吐いていては赤子にすら劣る」
「なら、どうするんだよ?」
「決まっておろう。我はウルスラグナ! すべての障害を打ち破る者だ!」
 そう言ってウルスラグナも前線で剣を振るう。二人の長剣はちょっとした範囲魔法にも負けず劣らず広範囲攻撃をする。
「こりゃ俺も負けてられないな! 行くぜ! お前らの妄執、ここで灰にしてやる!!」
 スキル【煉獄斬】、【絶零斬】を使い分けながらゾンビの群れをなぎ倒していく勇平。それでもゾンビの数が減ることはなく、増える一方だ。
「ウルスラグナに言った手前言いたくはないが、確かにこれは一騎当千でもきついかもしれないな……」
「今度はお主が弱音か?」
「……一騎当千でだめなら増やせばいい。一騎当万、一騎当億! 無量大数のその先まで!」
 その掛け声とともに走り出し、ゾンビの群れへと突貫する勇平。
「なるほど、でたらめだな。だが、嫌いではない!」
 その声に続き、ウルスラグナも攻撃を再開する。二人は的確にゾンビだけを斬り払う。
「勇平! 相手を倒してばかりではきりがない! 無力化するだけでいいのだ!」
「りょーかい! お前らに恨みはないが、足止めさせてもらうぜ! 喰らえ! 絶零斬っ!!」
 ゾンビの足目掛けて【絶零斬】を再度食らわせる勇平。先ほどよりもゾンビは倒せないものの、行動不能になったゾンビの数は多い。
「その調子だ! 行くぞ、勇平!」
「言われなくても!」
 気合の掛け声とともに更に前線へと向かい、戦い続ける二人だった。

「真琴」
「わかりました!」
 たったそれだけの短いやりとりで阿吽の急で連携をするのは桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)とそのパートナーであり、娘である桐ヶ谷 真琴(きりがや・まこと)だ。
 二人もまた最前線でゾンビたちと戦い続けていたのだ。真琴が後ろからの射撃で隙を作り、そこへ煉がすかさず飛び込み、ゾンビたちを剣術と蹴撃でなぎ倒して進む。
 さらに後ろの真琴もそれに呼応するように炎術で追撃、ある程度穴があいたらそのまま煉の元へと移動。
 息もつかせぬコンビプレーだった。
「無理についてこなくていいからな。前衛は俺一人で十分だ」
「まだまだ平気ですよ」
「そうか、なら囲まれたときはどうする?」
「こうします!」
 【ファイアストーム】を使用してゾンビたちを焼き払う真琴。
「上出来だ」
 それに続いて煉も氷雪比翼で追撃、瞬く間に回りにいたゾンビたちは壊滅した。
「……これだけやってもゾンビたちが減っているようには思えません」
「倒さない限り増える一方だ。だからこそ、この連携を乱すわけにはいかない。できるか? 真琴」
「はいっ!」
「いい返事だ。少し無茶になるが取りこぼしたゾンビは後ろのディフェンダーに任せて、俺たちは増え続けるゾンビたちを減らすぞ」
 真琴の返事を待たずして煉は走り出す。それに動揺することなく銃撃での援護で切り込む隙を作り出す真琴。
 二人の攻撃の前にゾンビたちは触れることすらできずに、次々と倒れていく。
 ダメ押しの二人で交互に【アンボーン・テクニック】を使用することでさらにゾンビの群れを塵へと、土へと還していく二人。
 取りこぼしはあるものの、この数相手を全てを倒しきるのは不可能であり、煉の判断は正しかった。
 二人は駆けて行く。ゾンビで埋まるかと思えてしまう荒れ果てた大地を。

「……哀れなるかな、己の死を悟らぬもの。塵に生まれ塵と還りしわが身に気づかず、未だ蠢いて立ち去らぬもの。炎によって、あらためて塵と化すがよい。そして永遠に、安らかなれ」
 そう呟きながら【火術】を使用してゾンビを浄火するのはロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)だ。ゾンビたち、そして二つの像の思いを感じ、ロレンツォが出した答えは。
 二人の像はこの地が緑豊かになることを欲したものと信じて、ゾンビ達・生への執着に満ちた存在をうちはらい、浄化するために戦う事だった。
 その隣では複雑な顔でゾンビを見るアリアンナ・コッソット(ありあんな・こっそっと)がいた。
「どうしました、というのは野暮でしょうか」
「そんなことないわ。ただ、一度気になってしまうとなかなか抜けてはくれないだけ」
「考えることは一緒でしょうか」
「……どんな思惑や意思があっても、死者が世界を歩くことは許されがたいことよね。なら、安らかな眠りにつかせてあげないとね」
 少しだけ目に力を入れたアリアンナは【バニッシュ】を使用する。抗うことすらできず、ゾンビたちは塵へと還っていく。
 しかし、やはり晴れぬ顔つきは変わらない。それでもロレンツォと共にゾンビたちを安かな眠りにへ誘っていく。
「私たちが正しいとは言いません。それを決めるのは本来できないのですから。だからこそ、私たちは自分たちで正しいと思うことしなてくはなりません」
「ロレンツォは、正しいことだって思ってる?」
「でなければ、ここに立ってはいませんよ」
「そっか、そうだよね……」
 攻撃の手を止めた二人にこれ幸いとばかりに殺到するゾンビたち。しかし、その群れをまたも【バニッシュ】が斬り裂く。
 それに続いてロレンツォの【炎術】もゾンビたちを焼き払っていく。
「答えは見えましたか?」
「ううん、まだ迷ってるよ。もしかしたらーって気持ちがずっとうずまいてる。だけど、迷いながらでもやらなきゃ。それが今のところの答え、どうかな?」
「私は、いいと思います」
 ロレンツォは微笑む。その微笑みに安堵して、いつも通りに近い顔つきに戻るアリアンナ。
「うん、究明は後でもできる。今は、今しなきゃいけないことをしないとね! さあ、幸いあれ! 哀れなる生の為に!」
 迷いながらも、二人は今をもってして戦うのだった。