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ゾンビ トゥ ダスト

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ゾンビ トゥ ダスト

リアクション

「輪廻転生の理から外れた者たちよ、今その流れに戻してやるからな」
 一風の風にたなびかれながら一人静かにゾンビを向かえるは紫月 唯斗(しづき・ゆいと)だ。
向かい来るゾンビ自分のテリトリーに入った瞬間カッと目を見開き走り出す。
「行くぞ、死者よ! 今一度眠りにつくがいい!」
 千里走りの術を使い一気に駆け抜ける。その間に、呪い影を作り出し【分身の術】により自身を増やす。
「ここから先は一歩も通させん!」
 呪い影と唯斗自身でゾンビの群れを散り散りにしていく。また、【分身の術】で出た分身もゾンビを翻弄する。
あれだけ像を目指していたゾンビたちも、たった数秒でその足を止めてしまった。唯斗の思惑通りだった。
「俺は、像の想いを護りたい。それを邪魔するのであれば、斬る」
 いつの間にか先ほどの位置にまで戻っていた唯斗がそう言う。たった一人しかいないのその働きは下手な兵士の十倍以上だ。
 自分の分身に遊ばれているゾンビたちの下へまたも突進する。
「救済されるか、魂ごとなくなるかはわからない。が、お前らはもうそれすら望まないだろう。だからこそ、斬ってやることが最大の救いだろう」
 陰陽魂絶刀【阿修羅王】が一閃。次の瞬間には陰陽魂導刀【迦楼羅王】が一閃。
「だがお前らは結局のところ帰るところは同じ、塵だ」
 多数いたゾンビを物の数分で塵に還した唯斗。しかしその前にはもう次のゾンビの群れが映りこんでいた。
「死者が生者の前を歩くことは許されない、だからお前たちも塵へと還ってくれ。そして見届けてくれ、二つの像の想いを」
 少しだけ悲しそうに言って、再びゾンビへと向かう唯斗だった。

「続々とゾンビたちがオフェンダーを抜き始めたわね」
「まあこの数じゃ抜かれるでしょうね。誰がオフェンダーでも」
「だからこそ、私たちディフェンダーが重要になるってことよね」
 二人で話しながらてきぱきと罠を設置しているのはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)だ。
 いつもは攻めに徹しているセレンフィリティだったが今回は手際よく罠の設置をしたりとバランスよく事を進めていた。
 セレアナと共に落とし穴キット・機晶爆弾・燃える水等の罠を予め用意した荒野一帯の地図とオフェンダーの配置を考えながら、ここからゾンビが抜けてきそうだと考慮した場所に罠を設置していた。
「でもオフェンダーとして参加しなかったのは意外だったわ。どうして?」
 セレアナがそう尋ねるとセレンフィリティはこう答えた。
「オフェンダーになって暴れるのもよかったけど、今回はディフェンダーが重要じゃない? 現にこうしてオフェンダーは抜かれている。結局私がオフェンダーになって像が壊されましたーじゃ後味が悪いじゃない」
「……それを避けるためにディフェンダーとして、罠の設置をしたり、溢れ返ったゾンビの迎撃をしようと思ったのね」
「その通り! だからこそ私たちがしっかりしないと、オフェンダーの頑張りも無駄になっちゃう。今回は攻めるだけじゃいけないの」
「うん、素敵な答えだと思うわ。けど、さっきから罠の設置の仕方、大雑把すぎない?」
 確かに、セレアナが設置した罠と比べてセレンフィリティの設置した罠は少しだけ見えていたりと丁寧な仕事ではなかった。
「平気平気、ゾンビはそんなところまで見ないって」
「そういうものかしら」
「って、噂をすれば主賓さん方のご到着よ! それも数もどっさりとね!」
「こっちのほうは、大当たりってところかしらね」
 セレンフィリティが予想したとおり、無数のゾンビたちが大挙してやってきたのだ。しかし既にそこには二人が設置していた罠が仕掛けられている。
「歓迎委員会が充分なおもてなしができなかったみたいね。そうなるかと思って、素敵な二次会を準備しといてあげたわ! 感謝しなさい」
「天国に行くくらい、楽しませてあげるわ」
 二人は動かない。なぜならば何もしなくてもゾンビたちが罠に引っかかるのがわかっているからだ。こうして、素敵な二次会が開始されるのだった。

「他のディフェンダーの皆さんも、戦い始めているようだな」
「そうみたいだね。思っていたよりも早い段階かな? だからこそディフェンダーの僕らが踏ん張らないとね」
「あまり派手にやってバテないようにな。相手は夜明けが来るまで永遠と出てくるんだ、少数な上これ以上の増員もない。一人の欠員が命取りになる」
 三者三様の意見を交わすのは冴弥 永夜(さえわたり・とおや)アンヴェリュグ・ジオナイトロジェ(あんう゛ぇりゅぐ・じおないとろじぇ)緋宿目 槙子(ひおるめ・てんこ)の三人だった。
「ようやく、日が変わるってところだろう。半分くらいまで来てるとは思いたいな」
「そうだね。オフェンダーさんたち、バテなきゃいいけど」
「自ら率先してオフェンダーになるくらいだ。余程スタミナに自信があるか暴れまわりたいやつらなのよ。どちらにせよ心配することはないだろう」
 三人の前にも目を覆いたくなるほどの量のゾンビが押し寄せてきていた。すでに他のディフェンダーたちもゾンビの迎撃に入っている。
「それじゃ行くぞ、二人とも」
「了解」
「後方支援は任せろ」
 そう言って槙子が【弾幕援護】を発動。ゾンビたちを先制する。その流れそのままに二人もゾンビへと向かっていく。
「さてさて、残念ながらここから先の像へは行かせられないよ。それが永夜君の願いでもあるからさ」
 愛用の武器、六花で【なぎ払い】をするアンヴェリュグ。武器の氷結属性のおかげで倒すまでにいたらなかったゾンビたちも部位的に凍らすことで行動不能、行動を遅くすることに成功する。
「俺はこっちだ。かかってこい」
 【風術】と【クロスファイア】で妨害、攻撃をする永夜。像を目指していたゾンビたちは堪らず永夜へと向かっていく。
「そう、それでいい。夜明けまで俺に流れてくれればそれで」
 ゾンビを塵へと戻しながら注意を引き付ける。万一、像へ向かうゾンビがいれば、
「残念だが、ここは通せないね」
 後ろで待機してる槙子に倒される。ゾンビたちは三人の手のひらで踊らされ続けていた。しかし、それも長くは続かない。
「まだ、数が増えるのか」
「予想以上にもほどがあるよ、これは」
「私のところに来るやつらも取りこぼし、という数ではなくなってきたな」
 善戦する三人に数の暴力で持って襲い掛かるゾンビたち。しかし、三人も引きはしない。なぜならば自分たちが抜かれれば、その分だけ像が破壊される可能性が高くなるからだ。
「俺は、二つの像を守りたい。取り戻したい一心で、力を蓄えたんだ。それを叶えてやりたいんだっ」
 妨害者なれども、その想いは守護者。永夜は決して諦めず、注意を引き続け戦う。