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第1章.現場 対ゴブリン

 
 迫りつつ有るゴブリンの集団――。
 その集団の中の一団を率いているのは――。
 
 テラー・ダイノサウラス(てらー・だいのさうらす)のパートナーで英霊のチンギス・ハン(ちんぎす・はん)であった。
 蹂躙・侵略を目的としたチンギス・ハンによって率いられるゴブリンは少数ながらも――事前に手に入れいていた武器を武装させていた。
 其れは、前衛は剣と斧で武装させ、後衛を弓で武装させた形となっていた。
 切り株に立ち、一人頭がでた状態で演説をするチンギス・ハン。
 
 生物の喜びとは!
 
 敵を滅ぼし!
 
 その財産を奪い!
 
 敵の身内が泣くのを眺め!
 
 敵の馬を奪いまたがり!
 
 敵の恋人や妻達を奪って抱くことだ!
 
 貴様等も生物であるならば!
 
 壊せ!壊されたら壊し返せ!
 
 殺せ!殺されたら殺し返せ!
 
 奪え!奪われたら奪い返せ!
 
 蹂躙の限りを尽くせ!
 
 「うおおおおおおおおおおおおお!!」
 
 雄叫びを上げるチンギス・ハンの率いるゴブリン達。
 獲物で地面を叩き、そのリズミカルな音が興奮し得ている様を表していた。
 三人が争っている現場へ、士気高く意気揚々と行軍をすすめていく中で、先頭に立つチンギス・ハンとは対照的にテラーは距離を置きながらついてきた。
 そして――。
 現場に到着しゴブリン達が攻勢を掛ける!
 
 一方、時間を遡る――。
 現地に到着して警戒を始める生徒たち。
「山田君――」
 御凪 真人(みなぎ・まこと)は山田に語りかける。
「思うに来栖 亜里沙さんの精神状態が不安定なのをなぜ他の2人に話さなかったのです? それだけでも十分に今回の事態を回避できたと思いますよ。完全に君の失敗です」
 御凪は山田に事の原因であろう事について問いただした。
「……わかってくれると、思ったから」
 彼女達なら――きっとわかってくれると信じていたと答える山田。
「君の考えをパートナーが察してくれると思うのは甘えですよ。人とは言葉にしなければ通じない事の方が多いんですよ」
「わかってくれていたような気がしたから――」
 それでも尚、彼女たちを信じたかった山田。
「無論自分の思いや気持ちなどは特にです。むしろ最も近くに居るパートナーだからこそ言葉と言う意思の伝達は必要なんですよ」
「……」
 しかし――御凪の話を聞き、疎通ができていな事にうなだれる山田。
 そして、そう言うと警戒に向かう御凪。
 其れに続けて山田の前に現われたのは、憤っていたセルファ・オルドリン(せるふぁ・おるどりん)だった。
 「山田、あなたが3人止めなさいよ。怖いから助けてくれ? なに言ってるんだか」
 呆れたように山田に言い放つセルファ。
「あなたが対処出来なかった事押し付けるんじゃないわよ。ちゃんと3人の気持ち考えてたの? 鈍感とか言い訳にはならないわよ!」
 捲し立てるように言うとセルファは御凪を追いかけていった。
 
 一方――少し離れた所では。
「ふむふむ、『食料を求め、大移動中のゴブリン』 ……ナルホド、工場勤務が終わったゴブリンさん達が仕事の疲れを癒す店を探してるってわけね」
 立川 るる(たちかわ・るる)は何やら考えているようだ。
「るるの『行動予測』がそう告げてるわ。ゴブリンさん達も、お仕事お疲れ様だね!」
 どうやらそう言う結論らしい。
「そうだ! このゴブリンさん相手に、修羅場シーンの観戦チケットを販売すれば……! 昼ドラ人気を考えても、こういう修羅場は気になって見ちゃうのよ皆」
 と、何やらいそいそと準備をし始める、るる――一体、ナニを企んでいるのか――。
 
「ミア、あの人達、止めなくていいの?」
 レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)はパートナーであるミア・マハ(みあ・まは)に問いかけた。
「『夫婦喧嘩は犬も食わない』『人の恋路を邪魔する者は馬に蹴られる』と言うじゃろ? 当人達の問題は当人達で解決すべきじゃ」
 と、ミアはレキに答え、警戒に向かうように薦めた。
 
 警戒していた生徒たちの耳に低く轟く音が入ってきた。
 其れは――手に入れた情報によりゴブリンのものであると判断し、警戒を厳かにする生徒達。
 そして、警戒していた生徒たちの前に現れるゴブリンの一団――チンギス・ハンの率いた一団であった。
 
 それに対して――志方 綾乃(しかた・あやの)は下忍の密偵によって事前に情報を手に入る事に成功し、その情報を他の仲間へと連携することができた。
「いっけーっ!」
 「20メートルのロープ」を「手刀」の要領でまるで西部のガンマンの様に振り回し、さらに「霞斬り」をのせてゴブリンたちへ攻撃を行おうとした。
 が――。
 事前には数が解っていたものの前衛のゴブリンの肉壁によって厄介な後衛の弓部隊への攻撃が中々、通らない。
「てやぁ!」
 ロープでの攻撃を諦めて格闘戦へと移行することとした。
 拳によって崩れれ、蹴りによって吹き飛ばされるゴブリン。
 ――だが、多勢に無勢。
 その様子を見た御凪とセルファが救援に乗り出した。
 セルファは「ゴッドスピード」と「歴戦の武術」を使い「断魂刀【阿修羅】」で攻撃をかけ、御凪はセルファを「サンダーブラスト」、「天のいかずち」で援護をした。
 ソレに応じるように志方は御凪・セルファと共に前衛を排しながら、後衛にも攻撃を加えていく。
 そうして、戦況が生徒達に傾こうとした所――。
 チンギス・ハンによって設置された10基の侵攻スル龍撃槍砲【蒼炎槍】の攻撃がゴブリン達を、御凪・セルファ・志方を襲う。
「踏み込みが足りないッ!」
 打ち出された砲弾をロープで素早く払い落とす志方。
 志方達はそれにより回避することが出来、ゴブリン達の方へ向かった砲弾が炸裂する。
 しかし、回避できたもののフィールドは激しく凹凸ができ、ただでさえ劣勢だったチンギス・ハンのゴブリン部隊は砲撃により甚大な被害を受けて後退していった。
 ソレに合わせて後退し、密かに撤退するチンギス・ハンとテラー。
 甚大な被害の為、士気が下がりバラバラと逃げ、潰走していった。
 
 これでゴブリンの一団を倒し終わったかと思った。
 しかし――。
 次々と現れるゴブリンの集団。
 チンギス・ハンが率いていたが、潰走したことで一部を撤退させることに成功しつつも、まだまだ残存しているゴブリン部隊。
 そして、その中には――ゴブリンを率いる南鮪がいた。
「ヒャッハァ〜!今日は飯奢ってやるぜェ〜」
 と、従者のゴブリン二体も含めてスパイクバイクに乗って火炎放射器を振り回しながらヒャッハーと掛け声と共にゴブリンの群れを率いて向かってきた南 鮪(みなみ・まぐろ)
「うし、そんじゃあー 頑張るかねっと!」
 ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)は攻めてくるゴブリンに対して歴戦の武術をメインに範囲攻撃を意識しながら格闘戦を行おうとしていた。
 開幕早々、「雷霆の拳」で素早く構えて攻撃し、辺りの敵に対してダメージを与えた。
「早速だが粗方片させてもらうなー」
 回し蹴りを繰り広げ、その蹴りによって軽々と吹き飛ばされるゴブリン。
 また、不意に近づいてきたゴブリンを他の溜まっている場所へ投げ飛ばしたりし、ただ、殴るだけではなく敵で敵をぶつけるといったこともした。
「ひっさびさの蹂躙だなーこれ、中々こういう遊びの戦いっていうのはしねぇしなー」
 そんな、ラルクの様子は至って余裕綽々の様子でタバコを吸いながら殴り、蹴飛ばし、掴んで投げていた。
 乱戦につぐ、乱戦の様子にゴブリン「以外」からの攻撃も警戒しながら戦闘を進めていく。
 そう――誤射もあり得るし、敵側に生徒がいないとは限らないのだ。
「むーん……やっぱ蹴り技はそれ程慣れてねぇなー 今度から蹴りもちょくちょく使ってみっかなー 蹴りの方が強いっていうしな」
「丁度、いい練習相手もいるしな!」
 殴ることに対して蹴りがイマイチだと感じたラルクは今回が練習のチャンスとばかり蹴り技を繰り出してゴブリンをなぎ払っていく。
「そこ、危ないですぜ?」
 一方、ラルクのパートナーであるガイ・アントゥルース(がい・あんとぅるーす)は事前に仕掛けてあった簡易的な罠に引っ掛ったゴブリンに対して機晶爆弾を投げて対抗していた。
 単純が故に――草同士を結んだ罠はそれ自体が保護色となり、わかりづらいため良く引っ掛った。
 一匹のゴブリンが転倒し、それにつられて後ろのゴブリンも転倒する。その所にガイが機晶爆弾を投げるといった様子だった。
 因みに、機晶爆弾によるダメージは倒れた一番上のゴブリンが受けており、それより下は転倒による圧迫でのダメージだ。
 その後、「フューチャー・アーティファクト」による銃撃戦へ移行し、ゴブリンの四肢に向けて攻撃を加えて無力化を図っていった。
 
 そんな激しい戦闘のさなか、るるは比較的、穏健派と思われるゴブリンにチケットを売りつけようと考えていた。
 そう――迫り来ていたゴブリンの中にも訳もわからず付いて来た比較的、大人しい集団もいたのだった。
「ねー。 この騒動見ていかない? ここなら一番いいシーンが見られるって、るるの「行動予測」がそう言ってるよ!」
 しましまビニールシートを敷いて客席としセッティングされた場所を指させてゴブリン達を勧誘する。
「今なら! 観戦のお供にビールにあんパンはいかがですかー?」
 観戦しないと売れないよっ!と付け加えてチケットを売りさばいていく。
 さながら、その場所だけを見ればまるで古代ローマのコロッセオ(現場)で戦う剣闘士(生徒達)と観客(ゴブリン)であった。
 
「ヤァッ!」
 混沌としたさなか、レキは「イナンナの加護」で自身を守りつつ、敵を見つけると「財天去私」で多数に対してダメージを与えていた。
 時折、同士討ちを警戒しながら攻撃を与えていく。
「ギャアアアアアアアアアアア」
 打撃攻撃だけでなく、「その身を蝕む妄執」で精神攻撃を行ったことにより恐怖で混乱したり、逃走したりするゴブリンもいた。
 どうやら、攻撃は有効のようである。
 一方で、パートナーのミアは空中からの攻撃をさせないために「天のいかづち」で飛行解除を試みることにした。
 幸い、空中から攻撃する敵がいなかったため、杞憂に終わった。
 その後、レキと連携しながらブリザードで攻撃を加えていく。
 そして、レキによる「その身を蝕む妄執」で戦意のある、もしくは恐怖で危害を与えようとしているゴブリンに「ブリザード」を使用して攻撃を加え、ゴブリンを倒して行く。
 と、ゴブリンの集団が減りつつ有るその時――。
「ヒャッハァ〜バトルごっこはそれぐらいでいいだろう? 明日の仕事に影響がでちまうぜ」
 と南鮪が皆に言い出して停戦を求めるが――。
「おっとっとォ〜 これぐらいにして貰うぜ、勘違いして貰っちゃあ困るなァ〜お前らと違って真面目に安時給で日銭を稼いでる労働者様だぜェー」
 まだ戦闘を続ける気がある生徒もいてゴブリンを倒していく。
 因みに、好戦的なゴブリン以外はるるの用意した席で宴会をしながら修羅場を観戦している。
「まとめて、えーい」
 頃合いを見計らって、レキはゴブリンと好戦的な生徒、何やらあっちで山田を殺そうとしている生徒をまとめて「ヒプノシス」で眠らせて大人しくさせた。
 因みに、南鮪はと言うと――。
「おー、やれー」
 ちゃっかりと穏健派のゴブリンに混じって修羅場を観戦していた。
 こうして、ゴブリンの攻勢は無事、止まった。