リアクション
終章.終わって 狂乱から憑物が落ちたように落ち着きを取り戻した亜里沙達三人と修羅場で恐怖し、さらに暗殺で恐怖した山田も生徒達のお陰で今は平静を取り戻していた。 そんな山田と亜里沙達とやり取りする生徒達。 湯島 茜(ゆしま・あかね)は亜里沙達に語っていた。 「山田がこの三人から一人しか受け止められないのなら、あとの二人は山田を諦めるしかない……でもそれが山田の望みなら、あえて身を引くのも愛じゃないかな」 互いの顔を見合わせる三人。 「残る二人が誰になるかはわからないけど、よく考えてみようよ。みんなは山田のパートナーとして、互いのことをよく知っているはず。たとえそれが殺したいほど嫌な点だとしても、そこまでよく知っている人って他にいないんじゃないかな?」 何を三人は思っているのだろうか、沈黙が続く。 「そうつまり……残った二人で付きあえばいいんだよ!」 「!?」 さすがに、湯島の発言に驚く三人。 「あたしは……それは考えれないかな」 「あり得ない」 「そんなのだったら死ぬわ!」 カナメ、エリザ、亜里沙と拒否していく。 「えっ、どうしてもダメ? そういうことなら、あたしが付き合ってあげても……いいよ……」 頬を紅潮させながら言う湯島。 「お断わります」 「断ります」 「お断りです」 即座にお断りされた湯島だった。 「これからどうしていきたいの?」 セレンフィリティに何事も無く警戒態勢を解除していたセレアナは湯島の後、三人と話をしていた。 「……」 考える三人。 「昔みたいにご主人様と一緒にいたい」 「共にいる、と言う答えしか出てこない」 「いつまでも、いつでも、どこでも一緒にいたい」 ぽつりぽつりと語りだすカナメ、エリザ、亜里沙の三人。 共通していたのは――程度の差はあれど「山田と共に居たい」といったことだった。 「でしたら――」 此のままだと、また同じ事になってしまって山田を悲しませることになると言う事で。 「カナメさんはカウンセリングを、エリザさんは一度、精密メンテンナンスを、亜里沙さんも一度、調整を受けられたほうがいいですね」 彼女達にある原因を取り除くなり癒していく必要性があると語った。 三人は山田のためで有るとと言う事で悩みながらも承諾した。 (一人の男性をめぐって女の子3人の争いかぁ どうせ、あの人みたいに、いろんな女の子にいい顔しようととにかくその場その場で優しい言葉をかけるように接してたから、女の子が誤解しちゃったんだろうな) (まぁ向こうがそういうその場の空気に流されてしまう人間ってわかってるのに、誤解する方も悪いっていうのは自分の時に学んだけど……でもさ、やっぱり男性の方に、はっきりしてほしいんだよね乙女としては!) 木本 和輝(きもと・ともき)のパートナーである水引 立夏(みずひき・りっか)は今回の件について思うところがあった。 山田の前に立つ水引が口を開き――。 「さて、今回の原因はなんでしょう? あたしは山田さんのこれまでの行動だと思うんだよね。あたしも彼女たちみたいに誑かされた経験があるから、私怨も入っちゃうけど……」 「君は3人ともに『大切にする』とか『そばにいる』とか深く考えずに、言ってきたんじゃない? 君にとっては軽い気持ちで発せられた言葉でも、異性と接する機会が少ない子だとそういうのでも誤解しちゃうんだよね」 「彼女たちはどう? 君以外の男性とも接触するような子なのかな?」 山田を問い詰める水引。 「彼女たちの他の誰かといったことは見たことがなかった」 山田は思い出す――彼女たちの様子を。 「で、彼女達が恋愛感情のようなものを抱いていることに今まで気づいてなかったのかな? 本当は気づいてたのに言えなかったんじゃない?」 「相手を傷つけないように、目の前にいるその人にやさしい言葉をかけ続けるのが優しさなんだと信じ込んでさ。本当は、自分を好いてくれた人を傷つけたという事実に自分が傷つくのが嫌で、そうなることを避けてるだけなのに……」 「……」 山田にとって水引の話は図星だった。そう――皆が傷つくのを恐れたのだった。 「山田さん、あなたはどうしたいのかな? このまま3人とも失う? それとも、自分の気持ちをはっきりさせて、彼女達を説得する? 他の人がけんかを止めても何の解決にもならないよ。あなたが動かないと同じことの繰り返しだよ……」 「……一度、話してみます」 そう、現実と立ち向かなくてはならないのだ。 「山田さん。この女殺し」 水引との会話を終え、三人へ向かう所へ――。 大洞がお疲れであります。と近づいてきて冗談っぽく話しかけてきた。 「本当に自分も死にそうだったけどね。ありがとう」 吹っ切れたのか冗談っぽく返す山田。 そんな――鎮圧後の様子を見ていたマイトであった。 こうしてマイトの事件簿の一ページに新たな出来事として加わったのであった。 それから。 カナメはカウンセリングを受けることになり、エリザと亜里沙はそれぞれの施設で再調整を受けることとなった。 もちろん彼女たちの人格を損なわない程度のものではあるが、根本治癒することとなった。 山田は――今回のことで他の生徒から見聞きしたことを思い出し、考え、どう亜里沙達と向き合っていくか真剣に考える事となった。 こうして、この騒動は収まり、その原因も取り除かれることとなって成功した。 Fin 担当マスターより▼担当マスター 後醍醐 ▼マスターコメント
後醍醐です。 |
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