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花屋の一念発起

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花屋の一念発起

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 散歩する花が通って騒ぎになった所を辿りながら宣伝活動をする三人組。

「……このお花、ガヤックさんが育てたお花です。お散歩はしませんけど……とてもとてもステキなお花があるので……花屋シャビーをよろしくお願いします!」
 白雪 椿(しらゆき・つばき)はガヤックから許可を得て持って来た花を一輪ずつ配っていた。言葉だけの宣伝よりも実際にガヤックの花を見て貰った方がずっと効果があると思ったので。

「あ、ありがとう。行ってみるわ」
 花を受け取った女性は、椿の『説得』を使った心を込めた一生懸命の宣伝と綺麗な花に心を打たれ、花屋に興味を持った。

「……お花をどうぞ。あの、ガヤックさんのお花屋さんをよろしくお願いします」
 小さな女の子に可愛らしい花をあげる。
「ありがとー、お兄ちゃんと一緒にお店に行くね」
 女の子はにっこりと椿に笑顔で答え、行ってしまった。

「……あの、可愛らしく踊るお花や楽しくお喋りをするお花に花畑になるお花も販売しています。きっと皆さんの心を癒してくれるので……よろしくお願いします!」
 椿は、成功した種の宣伝も一緒にして花を渡す。
「それは楽しそうだな。うちの子が喜びそうだ」
 男性はそう言いながら花を受け取った。

「なぁ、あの花みたいな面白そうなのは無いのか? 匂いには困るけど」
 散歩する花に興味を抱いた強者が現れた。

「ありますよ! 勿論、短所はすっかり改善されています。あんな風に散歩したりやたらと大きくなっては困りますからね」
 花を欲しがる男の対応をするのはリゼネリ・べルザァート(りぜねり・べるざぁーと)。彼は、現状回復のため仕方無く魔法を頼った報いとはいえ店のあまりの被害の大きさに少し可哀想に思い、友人の椿に手助けを求められて二つ返事で快諾して今ここにいるのだ。

「本当に改善されてるのか」
「それはもちろんですよ。ほど良い癒しの香りが部屋を包み、疲れた体と心を和やかにしてくれます。他には、愚痴を優しく聞いてくれる花や部屋中を花溢れる癒し空間にする花もありますよ。どうですか、買って損はしませんよ!!」

 不審そうな目で見る男にリゼネリは、『説得』を使い、癒し効果を強調して説明する。
 そのおかげか男の不審の目は和らぐも、不安は残るのか先頭を歩く花に目が向く。

「本当か? それじゃ、あの花は何だ?」
「あちらはいわゆる宣伝用という奴ですよ」
 リゼネリは、男の不安に問題無いと即答した。その返事の速さに男はすっかりこの騒ぎは賑やかな宣伝活動だろと信じた。

「……それじゃ、三種類貰おうか」
「ありがとうございます」
 リゼネリの話に納得した男は、成功した種を買って行った。

「……売れましたか」
 椿が花を渡しながら成功した種を男性に話している間に八雲 虎臣(やくも・とらおみ)が挨拶がてらにリゼネリに声をかけてきた。虎臣は椿と同じように花の配布を担当している。
「あぁ、何とか。もう少し、注目を集めた方がいいかもしれない」
 リゼネリは、たっぷりとある種と周囲の状況を確認しながら答えた。

「そうですか。それより、主君がいつもお世話になってるようで」
 リゼネリとは初対面だが、椿からよく世話になっていることは聞いていたので今回が良い機会だと思い、挨拶をした。
「いや、そんなことはないよ。今日もそうだけどいつも頑張ってるよ」
 リゼネリは、花を配りながら一生懸命宣伝している椿を眺めながら答えた。

「……あの、虎臣さん、お花が欲しいんですけど」
 成功した種に興味を持った男性と話し終えた椿が荷物持ちとして花を大量に持つ虎臣を呼んだ。

「ありがとうござます。とにかく、店が閉店しないように宣伝活動に精を出しましょう」
「まぁ、出来る限りのことをぼちぼちと」
 虎臣はリゼネリに礼を言い、急いで椿の所に花を渡しに行った。
 リゼネリも虎臣に答えてから仕事に戻った。

「癒しの花が自宅で楽しめるのは素敵じゃないですか? それほど手間はかかりませんよ。興味を持たれた方はぜひどうぞ」
 種の完売を目指してリゼネリは『演説』を使い、周囲の注目を集めることにした。

「花屋シャビーの花をどうぞ。よろしかったら是非来店して下さい」
 椿の所に戻った虎臣は再び宣伝活動に戻っていた。

 そして時には、
「……大丈夫ですか。手を貸します」
 立てないでいる人に手を貸したり匂いで腑抜けになった際に軽く足を捻った被害者の介抱や何かと椿のサポートをしっかりとこなした。

 ひとしきり宣伝をし、最後の花、最後の種を配り販売し終えた時、