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ア・マ・エ・タ・イ

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ア・マ・エ・タ・イ

リアクション

「花見に付き合うのは別に構わないが、この紫桜の花粉には変な効用があるって噂が……」
「……」
「おいトゥーナ」
「んふ」
「トゥーナ?」
「んふふふふふふ」
「……手遅れか」
 くすくす笑いながら腕に縋ってくるユベール トゥーナ(ゆべーる・とぅーな)の様子を見て、夜月 鴉(やづき・からす)は軽く頭を抱えた。
「カラスー」
「何だ?」
「あーそーぼ」
「嫌だよ」
「むー」
(何なんだこれは……)
 縋りついてきたり、手を引っ張るかと思えば突然膨れたり。
 いつもとは違うトゥーナの様子に、鴉は戸惑いを隠せない。
「んじゃあ……だっこ」
「はぁ?」
 鴉に向かって、両手をぱっと広げる。
 それはもう満面の笑みで。
「だっこー、してよぅ」
「嫌だって」
「……ぁう」
 それほど強く拒否したわけでもない。
 しかし、鴉の言葉に息を飲むトゥーナ。
 やがて。
「……ぅああ、カラス、あたしのことキライなんだ……」
「はぁ?」
 すんすんと、トゥーナの鼻のすする音が聞こえる。
「ヤダ! 嫌われるのやだやだやだ……っ!」
「ちょ、おいトゥーナ?」
 いつの間にかトゥーナは本格的に泣き出した。
 それを前に、鴉はどう手を出していいものか分からずひたすら困惑する。
「ぅああああああーん。やだぉう……っぐ、ひっく」
「落ち着け、落ち着けよトゥーナ。誰もそんな事言ってないから」
「ああああーん……っく、ほ、ほんと?」
「ああ、本当だ」
 子供の様においおい泣いているトゥーナの背をゆっくりと撫でる鴉。
 その手と、言葉に安心したのかトゥーナはそっと頭を鴉の胸につける。
「おい、トゥーナ?」
 いつもよりわずかに高い体温。
 鴉がその手をトゥーナの背に伸ばそうとしたその時。
「……すぅー」
 寝息が聞こえた。
「……何だったんだ……」
 泣き疲れたのか、トゥーナはあっとゆう間に眠ってしまっていた。
「……放っておくわけにもいかないよな」
 鴉はそっとトゥーナを抱えたまま腰を下ろすと、自分の膝にトゥーナの頭を乗せる。
「んふ……カラスぅ……」
 眠っているトゥーナの唇から、小さな声が漏れる。
 ん? と顔を近づける鴉。
 僅かにトゥーナの唇が動いたようだが、何を言っているのかは聞き取れなかった。
「……ったく、いつもこんだけ……とは言わないが、もっと素直になれば良いもんを……」
 寝顔を見ながら、ぼそりつ呟く鴉。
「……んふ」
「ん?」
「……んふふふふ」
 膝に伝わる、振動。
 トゥーナの肩が、揺れている。
「……おい、トゥーナ。お前もしかして起きてる……?」
「んふふふふふふ」