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サクラ前線異状アリ?

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サクラ前線異状アリ?

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「タシガンは、風変わりな貴族が多いからなあ」
 鬼院 尋人(きいん・ひろと)はそう呟いて、深いため息をついた。
「寂しい孤島が多いから……あまり楽しみがないのかもしれないけど」
 薔薇の学舍の元校長ジェイダスのパートナーのラドゥとかもツンデレな貴族だし。
 というか、薔薇の学舍にも同じようなタイプの子が多いし……。
 タシガンを守る騎士として犯罪を見過ごせないという気持ちと、どうにも彼らを「わかってしまう」薔薇の学舎の生徒としての気持ちが、微妙に鬩ぎあう。
「正式な命令は出ていないんだよね」
「ええ」
 西条 霧神(さいじょう・きりがみ)が頷いた。
「独自の判断に任せるという、非公式の通達です。上も態度を決めかねてるんじゃないでしょうか」
 犯罪を見過ごす訳には行かない。しかし、悪ふざけに振り回されたとあっては、やはり外聞が悪いということだろう。
 これが正式な出動命令なら、ささやかな感傷などで尋人は迷いはしないのだが。
「とはいえ、悪ふざけにしても見過ごせることではないな」
「……既に何チームか、調査に動いています。どうなさいますか?」
 霧神の質問の形を取った確認に、尋人は当然のように頷いた。
「すぐに情報の共有と協力の申し出を。僕らは「脅迫状」の指定場所の調査に回る。……ああ、それから」
 この上なく真面目な顔で、つけ加えた。
「ご招待の失礼にならないよう、礼装の用意も頼んだよ」

+ + + + +

「なんだかなあ……」
 水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)は、読み終えた招待状をひらひらさせてつぶやいた。
「何で、お花見するのに誘拐とかするのかなあ……普通に招待してくれればいいのに」
 洒落や冗談にしても、悪ふざけが過ぎると思う。
 ゆかりも、マリエッタが浚われたらしいと知って、ずいぶん心配したのだ。
 本人から連絡があったから、まあ大丈夫だろうとは思っているが、彼女が得体の知れない連中の人質になっていることに違いはない。
 人質を取られて要求されてるんだから、マリエッタの無事の為にも、協力はするけど。
「銃を突きつけて「楽しめ」って言われてるようなものよね」
 やっぱり、不愉快な気持ちが拭えない。
 ……いっそ、いろいろ履き違えてる犯人に、ちゃんとしたお花見を見せてあげるべきかしら。
 正装して、緋毛氈を敷いて、茶席を設けて。
 ちゃんとしたもてなしを見せることで、招待の仕方にも礼儀があることを理解してもらえるかもしれない。
 もちろん、お茶を楽しんでもらった上で。
「……悪くないかも」
 我ながらいい思いつきだと、気分が少し和らぐ。
「そうと決まったら、準備をしないと。あと……」
 携帯を取り出して、ため息をついた。
「マリエッタにもよく言っておかないとね」