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デスティニーランドの騒がしい一日

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第16章 守ったもの守れなかったもの

 林田 樹の狙撃がマニーに命中した。
「おっと、転んじゃった、ごめーん」
「ぐ……ふっ」
 緒方 章の面打ちもマニーに当たり、たまらず倒れるマニー。
「今度こそ、えぇいっ!」
 小鳥遊 美羽の投げたサイコネットがマッキーの足に絡む。
「うわっ!」
「いまだ!」
 新谷 衛がマッキーに【簡易更衣室】を被せた。
「……くそっ、この着ぐるみ簡単に脱がせられねぇ」
「フハハハハ、俺が開発した着ぐるみがそう簡単に脱がせられる筈がなかろう!」
「うっせ、元凶の癖に偉そうに!」
 高笑いするドクター・ハデスに怒りの言葉を投げつける衛。
「こういう時は、これを使うのだよ。ぽちっとな」
 ハデスが、何かのボタンを押した。
「それは?」
「自爆装置」
「……みんな、逃げてー!?」
 ぼっかぁあああん!
 軽快な音と過剰な煙と共に、犯人マッキーとマニーは爆発した。
 煙が消えた後、残ったのはぼろぼろになった犯人二人。
「……さ、さあ、偽物のマッキーとマニーは消えた! 皆が信じてくれてた通り、ボクが本当のマッキーなんだよ」
「そして私がマニー! 皆、応援ありがとう!」
 汚い物を隠すように、犯人二人の前に立つメルキアデス。
 マルティナはマニーの格好のまま、ショットガンを肩に立てかけサムズアップ!
 子供達の間から、ぱちぱちと、最初静かに、次第に大きく拍手が沸き起こる。
 マルティナ達の影で、美羽が急いで犯人を拘束する。
「……ていうか、自爆装置があるなら最初っからそれを使えば良かったんじゃ?」
「はっはっは!」
 ヴァイスの当然の問いに、ハデスはただ笑うだけだった。

「さあ、犯人は確保できたようだな。抵抗の意志はあるか? 意志があるなら迷わずここで射殺を……」
「……夢の国でなんという事を言うのだこの赤毛男!」
「ぐはあっ!?」
 犯人を前に獲物を構えようとしたアキラ・アキラを殴り飛ばしたのは葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)だった。
 夢の国を汚す者を片っ端から粛清もといお仕置きしてきた彼女の着ぐるみは、既にたくさんの返り血を浴びていた。
 そこに、もうひとつ血痕が増えた。
 殴り飛ばされたアキラはフロートから落ち、ちょうどそこにいたサニーの目の前に落ちる。
「きゃあっ!」
 小さく悲鳴を上げるサニー。
 周囲の観客は、これもショーかと思って微笑ましく見ている。
 しかし、ルカルカとエースから事情を聞いていたサニーには分かっていた。
 これらは、全てショーではなく現実の事件だと言う事を。
 そして、自分の頬にかかった温かい物が、本物の血液だという事を。
 アキラを追ってフロートから降りてきた吹雪は、サニーの目の前でアキラの襟首を掴む。
「今後間違いを起こさぬよう、きっちりと仕置きをしてやろう」
「……って、あなた自身が一番夢の国を汚しているんでしょうが!」
 吹雪の手を止めたのは、コルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)
「全くだ。今のはどう見てもやりすぎだ」
 高円寺 海も吹雪を止めに入る。
「しかし……」
「時と場所を考えなさい!」
「ぐぅう〜、ばうわうわう!」
「え? ……うわっ」
 突如、吹雪に黒い物がとびかかった。
 狼……お掃除バイト中の白銀 昶だ。
「わうわうわう!」
「な、何でありますか!」
 そのまま吹雪にじゃれ付く昶。
「わぁ、もぉ、駄目じゃないか昶ぁ」
 同じくお掃除バイトをしていた清泉 北都が駆けてくる。
「ごめんね、今すぐ連れて帰るね」
 北都は首輪を取り出すと、昶に付けようとして手元を狂わせ、吹雪に装着する。
「あの」
「何か?」
 気づかないフリの北都。
「おっと、お掃除おそーじ」
 落ちた血痕をささっと箒で撫でると、地面に真っ赤なマッキーのイラストが描かれる。
「それじゃ、失礼しましたー」
 間違いに気づかない(フリ)のまま、吹雪を引きずって去る北都。
 昶も狼のままそれに続く。
 きちんと吹雪が落とした獲物を口にくわえて。

「何だったんだ今のは……」
 一部始終を見ていたレインが呟く。
「大丈夫か、姉さん。姉さん……?」
 目の前の騒動が起きている間、サニーは茫然とその場に立ちすくんでいた。
 そして、全てが終わってから、ぱたりとその場に倒れこんだ。
「姉さん!?」
「サニーちゃん!」
 そのままサニーは目を開けなかった。