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リアクション
第8章 コレ、自分ノッ…わがままグレムリン Story4
「使い魔のアイデア術か…。守りとしても使えるし、攻撃としても使えるんだね」
拳銃タイプで戦っていたリトルフロイラインの様子を、北都はノートに書き込んだ。
3部門のページに分け、『ゲージ』『章』『使い魔』の各マークをつけてある。
其々の種類に合わせて色ペンで色分けし、ノートを捲った時に見た目で分かり易いようにしてある。
「キレイにまとめてありますね」
「帰ったらリオンにも見せてあげるよ」
「ありがとうございます。そういえば北都、使い魔は元々の能力は同じみたいですが…。性格や姿などはそれぞれ違うみたいですね?」
「最初は召喚者のことを、主って思っているようだけど。友達や仲間になりたいって、使い魔に伝えることも出来るみたいだよ」
「名前をつけてあげている人の声か聞こえましたね」
自分の使い魔を名前をつけた綾瀬の声を聞いていたリオンが言う。
「うん、スーちゃんって呼んでる人の話声も聞こえたよね。それぞれの術にかかる時間は、精神力が不安定だったりしない限り、あまり差はないのかな?」
「映像を見た感じではそうですね。時間がかかるものと言ったら、アイデア術くらいでしょうか。メンバーが揃っていないところもあるでしょうけど、やはり使い魔の効力を維持する人の負担が大きいようですよ」
「通常でも、そんな感じするよね。守りの蔓とかを修復してもらう時って、精神力をたくさん使いそうだし。大きい術ほど手間がかかったり、失敗のリスクが高くなりそうだから注意が必要だね」
「んー…それもそうですが。皆さん哀切の章を使う時に、波や嵐のイメージにしているんですね?」
「うーん…。基礎がそんな感じなのかな?」
固定イメージでなければ何でもよいのだろうか、と考える。
「でも、『剣』と口にした時、一瞬びくっとした気がするんですよね」
「詠唱ワードも…ってこと?たぶんだけどね、もしかしたら斬られちゃうっていうイメージとかは怖いのかも?」
滅しようとしていると勘違いされたのでは?とリオンに言う。
「―…あー、確かにそうですね。剣ってバッサリ斬られそうで怖そうですし。ねぇ…、北都。ずっと見ているだけなんでしょうか」
「うん、見学だからね。んー…と、苺シュークリームを作ってきたけど食べる?」
「はい、いただきます!」
「紅茶を淹れてあげるよ。あまり荷物が多くなると大変だから、紙コップで我慢してね」
魔法瓶に入れてきた紅茶を紙コップに淹れ、リオンの方へ寄せる。
「クリームの中に、生の苺が入っているんですね?」
なめらかなクリームと、果実のつぶつぶ感を同時に楽しめ、ちまちまとゆっくり味わう。
「もしよければ先生方もどうぞ」
「いただきますぅ〜♪ベアトリーチェさんが作ってくれたスープもありますよ」
エリザベートは鍋の蓋を開け、器にスープを入れる。
「はい、どうぞ〜」
「ありがとう。エリザベート校長もシュークリーム食べてみて」
「美味しそうですぅ〜。果実の食感とクリームのなめらかさが最高ですねぇ♪ラスコット先生は食べないんですか〜?」
「オレはタバスコかける派だから、遠慮しておくよ」
「甘いモノにもマイタバスコをかけるんでしたよねぇ〜。その奇妙な食生活、なんとかしたほうがいいですよぉ。ベアトリーチェさんが作ってくれたスープにもかけていましたし〜」
「それヒミツだって言ったじゃないか。おっと、他のチームの様子も見せてあげないとね」
食生活の話題から逃れようとモニターの方へ逃走した。
「さって、注意しねぇとなーどっから出てくるかわかんねぇしな。アイデア術はメンバーや魔道具が足りないと出来ねぇし…」
「アイデア術を使うのですね?テスタメントの手が必要との声あれば颯爽と馳せ参じるのですっ」
テスタメントの協力を求めている言葉が聞こえ、化粧品エリアの方から猛スピードで駆けつける。
「後、2人だけだね。美羽さんたち戻ってこないね?」
ノーンたちはジュエリンを助けに行ったまま戻ってこない2人を生活家電エリアで待っている。
「あ…来た!はやくはやくー」
「ごめん、お待たせ」
「すみません。修理屋の方で魔性祓いのお手伝いをしていました」
「メンバーが揃ったし、ホーリーエクソシズムを使ってみようぜ」
「花嵐を発動させるためには、クローリスを呼び出さなくてはいけませんわ。ノーン、召喚を始めますわよ」
「はーい、おねーちゃん」
2人は授業で覚えた通りにクローリスを召喚する。
「出て来て、クローリスさん!」
呼び出された15歳くらいの少女は、トンッと床に降りる。
「花嵐の術を使いたいの。クローリスさん、お願いできるかな?」
「…承知いたしました」
「私も術に協力するってことね?」
「えぇ、お願いしますわ」
「面倒ねぇ、まとめてやっちゃえばいいのに…って言いたいとこだけど賠償は嫌よね」
修理するのも面倒だし、部品を買わないとけない場合や完全賠償も想定しているため、適当にやっつけるわけにもいかない。
真宵はアークソウルでグレムリンをサーチする。
「探知出来る者がいてくれるとは、心強いですな」
「単位のためよ。仕方ないからついて来てあげてるだけ!」
「そうなんですかい?探知出来る者が他にいないんで、ありがたいですな」
機械に憑いてる者がいたとしても、正体を隠したままいつ襲って来るか分からない。
彼女の態度にガイ・アントゥルース(がい・あんとぅるーす)は気分を害する様子もなく礼を言う。
「すみません、真宵はお礼を言われて照れているだけなのですよ」
「ほう…」
「ち、違う!わたくしがいつ、照れたというのっ」
「お顔が真っ赤ですよ、真宵。やっぱり…」
「わたくしは照れてなんか…」
「真宵、宝石が光っていますよ」
テスタメントは彼女の声を遮り、ペンダントを指差す。
「その辺にグレムリンがいるってことね。テスタメント、まだ術を使わないで。逃がしたらまた別の物に憑くかもしれないし。結構近いわね…」
「真宵、今人の悲鳴が聞こえませんでした?」
「ちょっと、いきなり声をかけないで。サーチに集中出来ないじゃないの。…って、人の声?」
パートナーが聞いたという声の主を探そうと耳を澄ませると…。
大型の洗濯機がガッタンガッタンと音を立てて動いている。
「ドラム式ね。ここの洗濯機って、コンセントを抜いてあるんじゃ…。あっ、宝石の反応が強くなったわ!この辺りに、複数いるってことね」
「勝手に動いている…ということは、あれに魔性が憑いているのでは?」
「どうやらそうみたいね。わたくしたちの存在に気づいていないみたいだから、さっさと祓っちゃいなさいよ、テスタメント」
「今こそアイデア術を試す時ですね!」
「しーっ、声が大きいわ。使う前に気づかれちゃうじゃないの」
「はっ、そうですね」
祓えるチャンスを失わないよう、声のボリュームを下げる。
「同じ章の力を与えるなら、術の発動時間は問題ないんだっけか?」
「えーっと、どうだったかな。クローリスさん、同じ章の力なら吸収しやすい?」
「効力が異なるものでなかれば…、ほとんど問題ありません」
「うん、分かった。同じ章なら、ほぼ同時に吸収しちゃっても大丈夫みたい」
「授業では俺が先だったな」
ラルクとガイは裁きの章のページを捲る。
彼らに合わせ、両手を広げたクローリスたちは、足元に蔓を出現させた。
「悪い子達おねんねの時間だぜ?」
紫色の雨を蔓に吸収させ、彼とガイも続けて同じように唱える。
テスタメントと美羽、ベアトリーチェは互いに目配せし合い、哀切の章の術を詠唱する。
聖なる光の波が染み込むように蔓へ吸い込まれていき、章の力を得たそれは、白い花のつぼみをつけた。
ふわと花開き、一枚一枚の花びらとして舞い散る。
真宵はサーチしたグレムリンの位置をエリシアとノーンに伝える。
勝手にガタガタと動く洗濯機に雨を降らせるよう、クローリスに指示を与えると花吹雪たちは、魔性が潜む物に白き雨を降らせる。
グレムリンたちはたまらず器から離れ逃げようとするが、アークソウルのサーチにより、ホーリーエクソシズムの花嵐に阻まれた。
「テスタメント、やっちゃいないさいよ」
「魔性の者達に哀れみを。この者達に聖霊の導きにより祝福の道を指し示したまえ。大いなる主の愛による安らぎをっ!」
逃走しようとするグレムリンを哀切の章の光の波が襲う。
「どーせその辺でへばってるんでしょ?」
「迷惑かける悪霊滅すべし」
万歩譲って完全浄化し、聖なる聖なる聖なるかな存在になる道以外無しな勢いで迫る。
「言う事聞かないとあの子容赦なく滅殺する気よ?」
「悪霊じゃなイッ。だから滅されなイッ」
「わたくしの手下になりなさい、そしたら助けて上げる」
「イーーーヤダッ」
「なんて生意気な…っ」
苛立ち紛れにテスタメントのおやつのパンの袋を勝手に開けて食べる。
「こんな事しても意味ねぇだろ?」
グレムリンがまた暴れ出してしまいそうな空気に、ラルクが説得しようと声をかけた。
「いたずら、いけなイ?」
「誰かを困らせて遊んだりすることは悪いことだからな」
「悪いこト…。菓子パン…」
「なによ、これが欲しいの?」
「真宵、テスタメントのおやつを勝手に食べないでください!」
「へぇー、なかなか美味しいじゃないのコレ」
文句を言うテスタメントをムシし、無遠慮に別のパンにも手をつける。
「それを別けてやれば大人しくなるんじゃないか?」
「ふむ…お菓子が大好物なんですな?」
「別けてあげたいけど、これテスタメントのなのよね」
「お菓子が欲しいの?悪いことしないなら別けてあげるよ」
「しなーいしなーイ。ちょーだイ」
「約束だよ」
もういたずらしないことを約束させ、ノーンがおやつを別けてやる。
「へぇー…グレムリンってお菓子好きなの?(美味しそうな物を見つけたからもらおうとしたのね)」
ラルクの説得だけでもよい子になってくれたのだろうが、美味しそうな菓子パンを見つけ、何か美味しいお菓子がもらえないか考えていたようだ。
魔性がお菓子をもらうために、いたずらをやめることに躊躇うフリをしていたことを美羽は黙っておく。
グレムリンが去った後、ガタガタと動いていた洗濯機の蓋をラルクが開けると…。
その中に、客が閉じ込められていた。
「大丈夫か?ここは危険だからな。出口まで案内するか?」
「あっちこっち痛いのじゃぁ…」
手を引いて中から出してやると、被害者は90歳くらいのおじいさんのようだ。
「大丈夫ですかい?入口まで案内いたしやすぜ」
「すまんのぅ…。いきなり洗濯機の中へ引き込まれてびっくりしたわい」
「(こっちもご老人!?)」
「どっちも怪我しているみたいだな」
「外で救護チームに手当てしもらったほうがよさそうですな」
「もう外に出るの?はぁー…ご老人の救出なら、他の人に任せてもいいんじゃない?」
「テスタメントたちには、ホーリーエクソシズムという術があるのですよ。何かあれば、テスタメントに任せるのです」
「怪我をして歩きづらいみたいですから、他の方と合流するまでに、怪我が酷くなしまうかもしれませんよ」
「うぅ…仕方ないわねっ」
真宵は不満げに言いながらも、外までついていってやる。
「あ…。ノートが落ちましたよ。たくさん書き込んでありますね」
「み、見ないでっ」
ベアトリーチェの手から奪い取り、腕の中に抱える。
「それだとノートの中が、モニターに映されてしまいますよ?」
「はっ…。見ないでっ」
慌てて閉じるが、彼女のノートがモニターに映された。
サーチ中にノートへ書き込みながら考えていた質問も、当然エリザベートたちに見られてしまっている。
「いい成績出せたら年齢ぐらい答えてくださーいって書かれてしますよ、ラスコット先生」
「ぅーん…どうして気になるんだろうね?」
おじさんの年を知ってどうするのだろう、と首を傾げる。
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