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ジャウ家の秘宝

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ジャウ家の秘宝

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第11章 ジャウ家の秘宝

「ジャウ家の秘宝は……存在しません」
 ムシミスの言葉に、居並ぶ面々から驚きとも感嘆ともつかない声が漏れる。
 彼の隣に立っている兄のムティルは、既に事情を聞いたのだろう。弟の言葉をただ静かに聞いている。
「元々、ジャウ家に秘宝はありませんでした。ただ、存在すると、封印されていると言い伝えることで周囲からの耳目を集め、一目置かれる存在として成り立っていたんです」
「それで、庭にあんな仕組みを置いて誰でも探索できるようにしてたって事か」
 エースが軽く肩を竦める。
 庭の植物たちは、代々の当主から『存在しない秘宝』を守るよう、守っているふりをするよう、ずっと命令されていたのだろう。
「しかし、良いのであろうか。我らのような者にまでそのような話をして」
「なのですよー」
 黎の言葉に、じゃわも同意する。
「構わない。当主の俺が、許可した」
 ムティルが静かに口を開く。
「元々これは、俺達……俺の不信が発端だったんだ。あの時の俺がそんな話をされても、弟が秘宝を隠していると思って耳を貸さなかっただろう」
「そんな僕達を導き、間を取り持ってくださったのは皆さんです。これは、お礼と……信頼の証です」
「そう言われちゃうと、僕達も秘密を守らなきゃいけないって気持ちになるねぇ」
 北都がゆっくり頭を掻く。
「それは、各々の判断に任せる。たとえ漏れたとして、ジャウ家はそれくらいでは揺らがない」
 ムティルの口調には、当主としての自信に満ちていた。
「先代の当主は、こうなる事を見越してムシミス様だけに秘宝の話を伝えたのかもしれませんね」
 秘宝の真実をほぼ推測していた翔が、二人を見て言った。
「秘宝の存在よりも、一族がこうして団結することこそが大きな力になる――『信じ合う者たちの秘宝』の話を聞いたとき、私はそう思いました」
「翔のように考えられれば、俺ももっと早く秘宝のことを気づくことができたのかもな」
 苦笑するムティスに、翔は首を振る。
「いいえ、ムティス様。秘宝を巡る今までの過程を経て、やっとお二人はお二人だけの宝を手に入れることができたのですから。――相思相愛という秘宝を、ね」
 翔の言葉に、ムシミスはムティスに微笑みかける。
 ムティスはそんなムシミスから急いで目を逸らす。しかしその顔が赤いのは、誰の目にも明らかだった。

担当マスターより

▼担当マスター

こみか

▼マスターコメント

 初めての方ははじめまして、もしくはこんにちは。
 「ジャウ家の秘宝」を執筆させていただきました、もうどこまでがOKなのかの線引きもよく分からなくなってきました、こみか、と申します。
 秘宝とジャウ家にまつわるあれこれに絡んでいただきまして、どうもありがとうございました。
 本っ当に濃いいアクションばかりでっ。秘宝組も、ジャウ家組も。
 自分のやりたい事をオリジナリティ溢れる行動で表現しつつも、きちんとガイドから推測した内容を押え、その上で効果的なアクションに組上げる方がほんとに多く、ただただ感服するばかりでした。
 まさかムティスがあんな子(ある意味できる子)になるとは。ムシミスもまたしかり。
 予想だにしなかった展開に、しかし皆さまのアクションを見ているとこれしかないという結末に、心底脱帽です。
 このシナリオやってよかったです……!

 リアクションを少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。
 そして、機会がありましたら、また次のジャウ家にまつわるお話、もしくはその他の薔薇学シナリオ、またはそれ以外のノーマルシナリオ。
 どこかでまた、お会いできることがありましたらとても嬉しいです。