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リアクション
「ふむ……、ようやく汚い水が抜けたでありますか。今までのところ特に問題もなく作業は進んでいるようでありますね」
デッキブラシを手に、水の抜かれたプールの底を一心に磨き始めた男がいました。海パンにTシャツ一枚というラフな格好なのは、天御柱学院からやってきた即応予備自衛官の大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)です。彼は割り当てられた区画をデッキブラシで磨き、ひたすら底のヌメヌメした変な物を除去する作業に真面目に取り組んでおりました。
「……」
俯き気味に、視線だけで女の子の水着姿を眺めながら。
床がむき出しになったプールでは、参加者たちが思い思いに掃除を始めています。水着姿の女の子たちの玉のお肌も露わになっています。彼女らの美脚が躍り胸の果実もたわわに実っています。伸ばされたホースからは汚れを洗い落とすために水道水が撒き散らされ、女の子達が水と戯れ始めます。
陸自の誇る精強な兵士として鍛え上げられた彼の鋭い瞳はそれを見逃しません。
「……」
すぐ傍では、共にやってきたパートナーの大洞 藤右衛門(おおほら・とうえもん)が剛太郎と同様、デッキブラシでプールの底をゴシゴシ磨いています。
俯き気味に、視線だけで女の子の水着姿を眺めながら。
褌にTシャツという格好が微妙にマッチングした藤右衛門は、剛太郎の先祖の英霊なのです。ここに来る前は、薄着の若い娘を見られると、年甲斐もなく多少テンションを高くしていた藤右衛門でありますが、そこは年の功。作業中はそうそう簡単に内に秘めた情熱を他の人に察せられることはありません。元農民らしく、腰を労うようにしながら、可愛らしい女の子たちの姿に目を細めます。
と……、その剛太郎と藤右衛門の視線が、同時に一点に釘付けになります。
「……!」
少し離れた所で掃除に取り組んでいる、美少女二人組を見つけたのです。茶色い髪の毛をポニーテイルにした娘と緑のショートの娘で、茶髪の方は胸大きいです。
掃除をしにきたと見せかけて、新作の水着を披露しに来たその二人組みは、蒼空学園のレティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)とミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)なんです。このレティシアが着ている水着が変で、うにうにとゼリーのようにうごめいているかと思いきや、時折一部分が透明になり、肌が透けて見えます。
これはいけません。年端も行かない若い女の子が男子もいる前でそんな格好ではいけません。注意すべきでしょうか。いやいや、そんなことをしたらさっきからじっと見つめていたのがバレバレです。いやしかし……。
「?」
二人の視線に気づいたのか、レティシアが剛太郎たちを見つめ返してきます。さっと視線をそらせる剛太郎と藤右衛門。
「……」
レティシアがこちらに気づかなかったので(?)、剛太郎と藤右衛門はまたそちらに視線をさ迷わせ始めます。じっと見ていると、ようやくレティシアたちに突っ込んでくれる子が現れました。
「その水着、変わってますわね。どこで買ったのですか……?」
目ざとく見つけて彼女らに近寄って行ったのは、剛太郎のパートナーのソフィア・クレメント(そふぃあ・くれめんと)です。彼女は、ワンピース水着にTシャツ姿の機晶姫で銀髪ポニーテイルに赤い瞳という、普段なら結構目立つ風貌なのに、レティシアの前に出ると平凡な娘に思えます。何しろ、相手はあの巨乳に透明になる水着ですから。
「あちきの水着は特注の特製水着でしてねぇ。スライム工学の粋を尽くした物でして名前はそのままスライムビキニと言いますよぅ」
気になる水着を説明してくれるレティシア。
「スライム工学、ですか……?」
聞いたこと無いですわ、とソフィアは首を傾げます。
「スライム工学はスライム工学ですよぅ。身体にジャストフィットしますから動きやすいですしねぇ、おまけに温度調整もしてくれますから良いですよぅ」
微笑みながら話してくれるレティシアに、興味があるのかじっと耳を傾けるソフィア。
「弱点と言えばうにうに動く事とたまに一部分が透明になる事くらいですからねぇ」
そのレティシアの言葉通り、水着はプニプニ動いている上に、時折透明になったりしています。ソフィアはちょっと考えて……。
「それってもしかして……スライムをそのまま身体に貼り付けているだけじゃないんですの……?」
「さあ、どうでしょうかねぇ……」
ニンマリと笑みを浮かべるレティシア。
「ほんと、恥ずかしいにも程があるわ。レティが持ってきた水着だけは絶対に着ませんからね。ウニウニ動いて気持ち悪いし時々透明になるしあれは水着じゃないですよ、絶対!」
透明になったらいつでも隠せるようにバスタオルを構え持ちながら、ミスティは怒ったように言います。
「……ちょっとそこのお兄さん」
ソフィアはすぐ近くにいた真面目そうな少年に声をかけます。水着はボクサー型のスクール水着の上から腕まくりしたYシャツを羽織った、眼鏡のイケメンです。
「……え、えっ……、ぼ、僕のこと……?」
ビクリと振り返ったのはシャンバラ教導団からやってきた三島 公貴(みしま・きみたか)です。彼はレティシアとソフィアを見ると、すぐに下を向いてさっと視線を逸らせます。ソフィアは気にせずにレティシアを指差しながら言います。
「ねえ、彼女の水着なんだけど、これ水着っていうよりも、スライムが直接身体にくっついているだけですわよねぇ。あなたはどう思いますの……?」
「い、いえ僕はそんなこと、し知らないし、関係ないよ……。あ、足腰の鍛錬のためと、他人様との交流のためって聞いただけだから……」
真っ赤になって俯きつつそそくさと逃げようとする公貴に、レティシアが回り込みます。
「ちょっとだけなら触ってみてもいいですよぅ。本当に、ちゃんとした水着なんですからぁ……」
「い、いいいいいえいえいえ……さ、触るとかそんなとんでもないい!」
挙動不審になる公貴。そんな彼を救おうとミスティは相手の顔を覗き込むように言います。
「ごめんなさいね。この人、変なんです。気にせずに無視して行ってください」
「い、いえいえいえ……こ、こちらこそごめんなさいごめんなさい。僕、忙しいから……じゃっ、そ、そういうことで……」
「いやぁ、悪いね。せっかく呼び止めてもらったのに、役に立てなくて」
隣で掃除をしていた公貴のパートナーの森下 信嘉(もりした・のぶよし)が頼りないマスターのために優雅に微笑みながらフォローを入れてくれます。
「相棒は、修行中なんだ。不慣れなところもあるが、怒らないでやって欲しいな」
「構いませんよぅ、褌のお兄さん。こっちがかってに捕まえただけですからぁ。……では、ごきげんよう」
「……ああ、ごきげんよう、お嬢さんたち」
それだけ言うと、褌姿の信嘉は公貴を連れて向こうへ行ってしまいます。さっそく掃除をテキパキと始める二人。
「……ほら、しゃんとしろ! 気を抜いているから、女性の質問にも答えられないんだぞ」
「そんな無茶な。だってアレは……」
キビキビといい動きの信嘉を眺めながら、レティシアはソフィアに聞きます。
「……ところで、どうしてアチキの水着が気になったのですかぁ?」
「だって、あの二人に聞いて来いって言われたんですもの」
「!?」
ソフィアに指差された剛太郎と藤右衛門が慌てて目を逸らします。ですが、時すでに遅し、バレバレです。
レティシアは知っていたと言う表情でニンマリと笑います。
「いいですよぅ、こっちにきたら教えてあげます。実はこのスライムビキニはですねぇ……」
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