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リアクション
★ ★ ★
「え、えーっと、隊長。ぜひ、祠までの宇宙パトロールに御同行願います!」
なんだかかちんこちんになって、シャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)くんが金元なななさんに声をかけました。
「宇宙パトロール!?」
金元なななさんの頭のアホ毛がクルクルリンと回転しました。何かを受信したようです。
「よろしい、それならパトロールにむかいましょう。君は、ええっと、そうだね、臨時宇宙巡査に任命するよ」
「はっ。俺のことはゼーさんと呼んでくれ」
敬礼しながら、シャウラ・エピゼシーくんが言いました。
「よし、行くよ、ゼーさん巡査」
そう声をかけ合うと、二人は駆け出していきました。
「ええっと、あんな電波全開で大丈夫なんでしょうか……」
送り出しながらも、ちょっと心配になるスタート係のユーシス・サダルスウドくんです。
「いいんじゃないのかな。本物の変質者が出るわけでもないし。仲良さそうじゃない」
アゾート・ワルプルギスさんは結構あっけらかんとしています。
さて、本当にアゾート・ワルプルギスさんの言う通りなのでしょうか。すでに、あちこちで阿鼻叫喚も起こっていたようではありますが……。
「来たようだな……」
木の上で待ち構えていたイングラハム・カニンガム(いんぐらはむ・かにんがむ)くんが、待っていましたとばかりにシャウラ・エピゼシーくんに木の上から飛びかかりました。
「うおっ、なんじゃ、こりゃあ!」
見るからに白黒映画の火星人みたいなイングラハム・カニンガムさんに絡みつかれて、シャウラ・エピゼシーくんが叫びます。
「まさか、本当に宇宙からの侵略者だよ!」
素早く金元なななさんがレーザーブレードを抜き放ちました。けれども、シャウラ・エピゼシーくんが邪魔で斬りつけることができません。
「ええい、離れろ!!」
シャウラ・エピゼシーくんが、イングラハム・カニンガムさんの目の近くにブリリアントリングを掲げました。閃光が走ります。
「うぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ……」
ふいをつかれたイングラハム・カニンガムさんが、シャウラ・エピゼシーくんに投げ飛ばされます。すかさず、金元なななさんがレーザーブレードを振りかぶりました。
「ななな・ダイナミック!!」
容赦ありません。
間一髪、イングラハム・カニンガムさんが分裂して難を逃れました。たかが肝試しで、本当に成敗されたのではたまったものではありません。
「大丈夫? ゼーさん巡査」
「ええ、まあ」
締められた首筋のあたりを軽くさすりながら、シャウラ・エピゼシーくんが答えました。
「でも、よく敵を投げ飛ばせたよね。おかげで、侵略者を追い払うことができたよ。それにしても、こんな場末のキャンプ地にまで襲ってくるとは……。これは、やっぱり宇宙パトロールを強化しないとね」
「え、ええ、そうですね」
いや、宇宙パトロールは方便だったはずなのですが、嘘から出た真で、結構とんでもない事態になったのでしょうか。ちょっとヤバいかなと思うシャウラ・エピゼシーくんでした。
さすがに今度はちゃんと殺気看破をしながら進んで行くと、何やら前の方から近づいてくる殺気があります。
それは、両手に血塗られた鉈を持ち、片目の部分だけ穴の開いた紙袋を被った、スクール水着姿の葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)さんだったのです。
「しゃぁー!!」
葛城吹雪さんが襲いかかってこようとします。
「ちょっとそこの不審者、身分証を提示しなさい」
「へっ?」
レーザーブレードを突きつけつつ言う金元なななさんに、葛城吹雪さんが一瞬立ち止まりました。なんで身分証明証?
「宇宙職務質問です。だいたい、こんな深夜に女の子一人で何をしているんですか。それも、お料理の途中で抜け出してくるなんて……」
いや、いろいろと突っ込みたいわけではありますが……。
「場合によって、拘束、お料理サボタージュによって、ガイドさんに取り調べを……」
冤罪です。しかし、ガイドさんの一人、シャンバラ教導団の寮監でもあるジェイス・銀霞さん取り調べというのは……。
「もしかして、こんなことをするのは葛……」
紙袋の下の目になんだか見覚えがあって、金元なななさんが言いかけます。
「じゃ、そういうことで」
葛城吹雪さんは、これ以上ややこしいことになる前に分身の術で逃げだしました。
「こらー、待てー。逮捕するー!!」
レーザーブレードをブンブン振り回して、金元なななさんか葛城吹雪さんを追いかけました。でも、分身に惑わされて、浜辺近くで捕り逃がしてしまいます。
「なんだか逃げられたね」
追い疲れて砂浜に大の字に寝転んで、シャウラ・エピゼシーくんが言いました。なんだか、無駄に体力を使ってしまったみたいです。すぐ横では、金元なななさんも疲れ果てて大の字に倒れています。
「宇宙平和の道は、まだ遠いわね」
ちょっと上気させた顔の上で、アホ毛をひょこひょこさせながら金元なななさんが言いました。
空には、満天の星。夜風が心地いいです。
「さて、そろそろ……」
よいしょっと上半身を起こすと、シャウラ・エピゼシーくんが隣に寝ている金元なななさんを見下ろしました。月明かりに照らし出された金元なななさんの姿に、なぜかちょっと見とれます。女友達、あるいは、宇宙刑事の先輩としてしか見ていませんでしたが、あらためて見つめてみると、ちょっと可愛いかもしれません。
「そうだね。遅くならないうちに出発しようよ」
よいしょっと、脚を振り上げた金元なななさんが、ぴょこんと勢いよく起きあがります。
「さあ、行こうよ」
実に楽しそうな屈託のない笑顔が、シャウラ・エピゼシーくんにむけられました。あら、やだ、何これ可愛い……。いけません、シャウラ・エピゼシーくん、何か一歩踏み出してしまったようです。
「お帰りなさい」
その後、洞窟内で数々の職務質問を済ませ、無事祠に桜貝をおいて戻ってきたシャウラ・エピゼシーくんでしたが、ユーシス・サダルスウドくんからみたら何か様子が変です。まあ、細かいことは追求しないでおいてあげましょう。
「あちらにかき氷もあるから、のんびりと休んでよね」
アゾート・ワルプルギスさんが、金元なななさんに言いました。
「へい、いらっしゃい。シャンバラ山羊のミルク味から、ジョロキア味まで、なんでもあるよー」
いつの間にか屋台を作っていたガイドの神戸紗千さんが、戻ってきた人たちを手招きします。
「かき氷? よし、食べに行こうよ、ゼーさん巡査」
そう言って、金元なななさんがシャウラ・エピゼシーくんの腕を引っぱりました。
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