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第7章

「オ、オロチの化け物さんがいなくなって、風船屋のお客様が降りられる様になったから、女将さんに、蛍が見れる川原の対岸で、花火を打ち上げる事を伝えたくて……」
 リースが、隆元に、一生懸命、説明している。
「は、花火といっても、火薬を使う花火を打ち上げてしまうと、蛍さんが住めるくらい綺麗な川を汚してしまうかも知れないですから、蛍が見られる川原の対岸や、川原に降りて来ているお客様が見える場所に、【凍てつく炎】や【光術】で再現した花火の光を打ち上げようと思うんです……」
「ガーランドが、近隣の住民や、自治体に連絡して、案内のチラシも配ったのであろう。何も、問題はないぞ」
「で、でも、まだ、女将さんに話してなくて、私、忘れてて……」
「桐条さんが、言ってあげてよ。リースとあたしは、先に川原に行って、用意してるから」
 と、マーガレットが言い足す。
「小娘共は、わしに面倒ごとばかり押しつける。まだまだ教育が足らんようだ。まあ、到着早々忙しくて、挨拶もしていていなかったからな。仕方ない、わしが話をしてきてやろう」
 ブツブツ言いながらも、軽い足取りで、隆元は、音々の元に向かった。
「まあまあ、隆元さん、お疲れ様です。いつもいつも、助けていただいて……」
 露天風呂の修繕が終わって、ほっとしていた音々は、隆元の姿を見ると、さっと立ち上がって、何度も頭を下げた。
「べ、別に、音々が過労で倒れたと勘違いして、心配した訳ではないぞ!」
 つい、ツンデレな態度をとってしまう隆元だったが、音々の方は、ただただ、喜んでいる。
「ありがとうございます、隆元来てくれはって、こうしてお会いできただけでも、胸が軽くなったような気ィしますわ」
「わしの旅館の従業員を2人連れてきたゆえ、明日も、好きに使え。それから……」
 花火のことを話すと、音々は、子供のような笑顔を見せた。
「花火! お母はんが生きとったときは、よう見に行きました。懐かしいわあ」
「……一緒に、見るか?」
「あの……ウチで、ええの?」
「構わん、と言っておる」
 先にさっさと歩き出した隆元の後を、音々は、嬉しそうについていった。

「手伝うよ。リースひとりで花火の光を作ってたら、SP切れで倒れちゃうかもしんないもん」
「あ、ありがとう……」
 リースの【凍てつく炎】や【光術】の花火に続いて、マーガレットの【火術】の花火が打ち上がる。
「仲間に入れてね」
 リースが【火術】で蛍の光を再現した緑色の小さな火の玉が、アシハラ蛍のほのかな光に色を添えて、見物客たちから、また、拍手が送られた。
 川原には、恭也が作る蒲焼きの香ばしい匂いも漂って、オロチ退治に加わった者たちや、旅館から歩いてきた者たちを集めている。

「一杯どぉ?」
 露天風呂の件を、なんとかおとがめなしで切り抜けた泰輔と顕仁は、川原に用意された席に座り、差し向かいで、ちびちびと酒を酌み交わしていた。
「なあ、『蛍雪の功』って知っとる?」
 ふと思いついて、薄いガーゼの日本手ぬぐいでつくった虫籠にアシハラ蛍を入れてみると、柔らかな点滅を繰り返す光の玉が出来あがった。
「ふーん、真っ暗な中では、そこそこに明るいねぇ。けど、ちらちらとまではいかんけど、ふーっ、ふーっ、と明滅する明かりででは、目が悪くなりそうやな」

「蛍のライトか……」
「作ってあげようか?」
 ルカルカに尋ねられ、理子は、首を振った。
「あたしは、飛んでる蛍を眺めてる方が、いいな」
 ようやく酔いも醒めた。美羽とももっと話したいし、夜はまだまだこれからだ。
 音々と隆元が並んで花火を眺めている横を、手を繋いだ清盛と義仲が通る。
雅羅とアルセーネは露天風呂を楽しみ、彼方とテティスは夢の中。
 蛍の輝きと花火に彩られた夏の夜は、ゆったりと更けていった。

担当マスターより

▼担当マスター

ミシマナオミ

▼マスターコメント

ミシマナオミです。
参加してくださった皆様のおかげで、またもや風船屋は救われました。
素敵なアクションをありがとうございました。
暑い日が続いていますが、少しでも涼んでいただけましたでしょうか……?
ひどい目に遭ってしまった方、ごめんなさい。
怪談お宿ならではの趣向と楽しんでいただけたら幸いです。
では、またお会いしましょう!