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第10章 まだまだキノコ

「女ーっ!!」
「はい?」
「えー?」
「きゃー!」
 ウェザー主催のバーベキュー会場。
 後片付けをしていた参加者たちの前に現れたのは、エロ魔神と化した唯斗だった。
 唯斗は手近な女性に襲い掛かる!
「ひゃぅう……」
 不運な少女は、アニスだった。
 恐怖でへたり込むアニスに唯斗の魔の手が!
「アニスぅうううっ!」
 ごぼっ!
 止めたのは、和輝。
 投げたのは、柿。
 デザート用に一口サイズに切った柿や、青柿を次々と唯斗に投げつける。
「酔っ払いめ、これでも食べて大人しくしてろ!」
 べちゃ、がつっ、こきーん!
 柔らかい柿、固い柿が次々と唯斗に決まる。
 そして最後に。
 ずぼおっ!
「ぐふ……っ」
 柿が、唯斗の口に入った。
 ぐらりと倒れる唯斗。
「あぅう、和輝ぃ……」
「柿には、酔い覚ましの効果があるのさ」
「今のはそういう効果だったのかしら……」
 決める和輝に縋りつくアニスと首を傾げるスノー。
 更に。
「なるほど、パラミタクヤシイタケの効果を中和するのは柿なのか……素晴らしい機転だ」
「そうですね。ボクは和輝さんが……欲しいです!」
「何を言う。彼は俺が貰う」
 騒動を聞いて駆けつけてきたダリルと輝が、和輝を勧誘? する。
「あぅ……あうう、和輝、行っちゃやだ……」
「いや、なんだか知らないけど行かないよ!?」
 ますます強くくっついてくるアニスを抱え、よく分からないまま和輝はお断りするのだった。

「ともあれあのキノコは良くない成分が入っているらしい。口にしないよう参加者への告知と、回収を希望する」
「え? えーとあの、もう……みんな、食べちゃった」
「食べちゃった?」
 ダリルの忠告に、正気に戻ったサニーが赤くなって答える。
 ふと見れば、周囲はどこか上気したり息が荒い人物が多い。
「研究に使いたかったんだが……仕方ないな」
「そっか、あれはキノコのせいだったのね。でも……」
 サニーは顔を赤らめたまま友人たちを見る。
 詩穂はもう許してくれたけど、散々謝った。
 三月には……
「あの、サニーさん……」
「ご、ごめんなさいいぃっ!」
 じゅうううう〜。
 顔から蒸気をあげ三月に謝罪しつつ、サニーは走り去って行った。

「ご、ごめんなさいなのぉおおおっ!」
 こちらの謝罪の声は、美笑。
 キノコの誘惑に耐え切れず、思う様エメリヤンをもふってしまった。
 なんてひどい事しちゃったんだろう。
 半泣きになりながら、素直に思いを告げる。
「ごめんなさい、ごめんなさいぃ……あのね、お、おともだちに、なりたかったの……」
 とん。
 泣いている美笑の頭に、冷たい感触。
 エメリヤンの手だった。
「よ……ろしく、ね」
「……エメ君!」
 美笑の顔に、笑みが戻った。

「さあ、それじゃあ仕切り直してデザートにしようか」
「クリに、柿もありますよ」
 弾とノエルの声に、参加者から歓声があがる。
 キノコ狩りから、秋の味覚パーティーに。
 お楽しみはまだまだ続く。

 更にそこに、ピンク色の煙がもくもくと……
「ククククク、良い所に実験体が集ってくれたわ…………ぐふっ!」
「もしゅもしゅー……ごぼっ!」

 インテグラルポーンが命令通り採ってきた「キノコ」を見て、美羽とコハクは顔を見合わせた。
 それは、逃げ出さないように縛られた怪人キノコ仮面と、その付属物と認識され拘束されたハデスだった。
 インテグラルポーンには正確な「キノコ」の知識が不足していたらしい。
「これ……」
「うん、キノコだけどキノコじゃないよ」
 明らかに怪しげな存在に、美羽とコハクは困惑を隠せない。
「も、もしゅー。一行の戦闘描写もなくやられるとは……くやしいっ」
「く、クク……これで終わると思うなよ……」
 彼らの不穏な台詞に、ひとまず縛られたまま放置しておこうという結論になった。

 最も危険なキノコはそうとは知られぬまま無事駆除され、キノコ狩りは無事終了した。
 パラミタクヤシイタケ等、採取されてキノコは全て、その場にいた人間の腹に納まった。

   ※※※

 その日の夜。
「ふんふんふんふんふ〜ん♪」
 ミュリエルは上機嫌で今日のお出かけの片付けをしていた。
 キノコ狩りでの一件を思い出し、幸せの鼻歌なんかが零れる。
(お兄ちゃんがロリコンとか呼ばれて怒るのは嫌なんですが……でも、またあんな風に抱きしめて欲しいです)
 くすくす笑いながら今日着ていた服をたたもうとして、違和感に気付いた。
「あっ」
 ポケットを探ると、中にはキノコ。
 パラミタクヤシイタケだった。
 いつの間にか紛れ込んでしまったのだろう。
「……うふふ」
 キノコを握りしめ、ミュリエルはほくそ笑んだ。

担当マスターより

▼担当マスター

こみか

▼マスターコメント

 初めての方ははじめまして、もしくはこんにちは。
 「くやしい……っ!」を執筆させていただきました、でもきのこよりたけのこ派の、こみか、と申します。
 秋のイベント、キノコ狩り、楽しんでいただけましたでしょうか?
 なんだか執筆していてやたらとお腹の空くリアクションでした。
 美味しそうなお料理の数々、楽しそうなアクション、はじけたアクションどうもありがとうございました。
 トラブル?もあったものの、秋の一日、楽しんでいただけましたら幸いです。
 また、ウェザーの今後のイベント案についても色々ご提案ありがとうございました。
 とても楽しそうなので、またイベントを開催できればと思います。
 まずは、冬の間に雪イベントを……

■エロ描写について。
 アクションがそういう系統のものだったとしても、「エロOK」と明記されてない限りあまりつっこんだ描写はしません。
 また逆に、「エロOK」と書かれていてもアクションがそうでなかった場合、特にキャラクターの意図に反してエロい展開になることは、基本ありません。こちらは、他の人のアクションや状況によってどうなるか分かりませんが……
 「エロOK」や「NG」は、こだわる方は忘れないようにお願します。

 それでは、実りの秋のひとときを皆さまとご一緒できたことに感謝いたします。
 またどこかでお会いする機会がありましたら、よろしくお願いいたします。