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第9章 あなたとわたしとエロキノコ

「ククククク……まだだ、まだ足りぬ! ここからはいよいよエロOKの時間の始まりだ!」
「ふしゅふしゅふしゅしゅーっ!!」

   ※※※

「ん〜、美味しいっ! これも、これも美味しい。やっぱり採りたてのキノコは最高ねえー」
「そうね」
「クリご飯もいいわねー。セレアナったらなかなかお料理上手じゃない! たまには任せてみるもんね!」
「そうね」
「でも『セレンの料理は私だけが味わっていたい』だなんて……もう、セレアナったら我儘さん。今度、じ〜っくりセレアナのためだけに料理を作ってあげるわね」
「そ、そうね……(多数の犠牲者を出すのを回避しただけでも……GJ私っ!)」
 なんとかかんとかセレンフィリティが料理をするのを阻止し、自分が料理を担当することになったセレアナ。
 今後の懸念はあるものの、ひとまず惨劇は避けられた幸せを噛みしめていた。
 セレンフィリティはといえば、バーベキューを食べ、クレープを貰い、クリご飯もほおばり秋の味覚三昧。
 そろそろ満足したかと思いきや、彼女の様子がどこか変。
「セレアナ……」
「どうしたの、セレン。気持ちでも悪いの?」
 食べ過ぎたかと思って近づいたセレアナの手が、ぐっと引かれた。
「我慢できない……」
「大変! どこかで横になって……」
「そう、一緒に横になって。そこの、岩陰で」
「は?」
「秋の味覚フルコースのデザートはセレアナね!」
「ちょ、ちょっとセレン……きゃぁあああっ!」
 セレアナの手を引くと一直線に物陰へと走り出すセレンフィリティ。
 セレアナの料理の最後の一品は、彼女自身となった。

   ※※※

「ううううう……」
「つぐむ様、つぐむ様……どうか気になさらないで」
「けどな……あああああ」
「つぐむ様……」
 顔に手を当てしゃがみこむ十田島 つぐむ(とだじま・つぐむ)を、ミゼ・モセダロァ(みぜ・もせだろぁ)は必死で慰めていた。

 数分前。
「おらおらおら……もっと哭いてみせろよ」
「はっ、あぁあああっ」
「声が小せぇ! 今度は痛い方がいいのか? それとも熱い方か?」
「はう、んっ」
「あぁ、それともこれはご褒美なのか? こんなんで喜んでんじゃねぇ、ド変態が!」
「あぁんっ、ひゃ、す、すいません……っ」
 様々な特殊プレイに使われる道具が散乱する中。
 ミゼはつぐむによって縛られ、吊られ、そしてそれらの道具の恩恵を受けていた。
 元はといえば、キノコ料理。
 竹野夜 真珠(たけのや・しんじゅ)が作った素朴なキノコご飯やホイル焼き。
 アトーバ・トリリオン(あとーば・とりりおん)の手によって生み出されたキノコを使った中華料理やイタリアン。
 どの料理も全て美味しくて、つぐむ達は料理を囲んで幸せな一時を過ごした。
 事件が起きたのは、その直後。
 つぐむは見つけてしまった。
 地面に散乱した、特殊性癖玩具の数々を。
 そしてそれを見た途端抑えの利かなくなった彼は、近くにいたミゼにその欲望の全てをぶつけたのだった。
 当然、その後それは後悔に変わるわけで……

「あああああー、俺が、俺があんな事やこんな事を……」
「構わないではありませんか」
 唸るつぐむの背中を、ミゼが優しく撫でる。
「けどな……」
「つぐむ様の性癖は、欲望は、ワタシが全力で受け止めて差し上げます」
「ミゼ……」
 慈母のような微笑みを浮かべるミゼに、つぐむはゆっくりと顔を上げる。
 が。
「ところであの道具は一体どうしたんだ?」
「それはワタシがこんな事もあろうかと持ってきた……あっ」
「……やっぱりお前の仕業だったのかぁあ!」
「はぁああああああんっ!」
 再び始まったつぐむの調教に、ミゼは至福の声を上げる。

「あの……」
「なあに」
「何か、起きてますよね」
「そうね」
「その、今確認したのですが、どうやら私たちが料理したものはパラミタクヤシイタケというものらしく……」
「そうね」
 つぐむとミゼの痴態を傍目に、料理の後片付け中のアトーバと真珠。
 アトーバの説明にも、真珠はどこか上の空。
 よくよく見ると。
「あの、その手に持っているのは」
「鉈よ。お料理に使った」
「そんなの使いましたっけ」
「今から使うのよ……」
「あ、真珠さん!」
 ゆらあり。
 鉈を手に、ミゼを鞭打つつぐむに歩み寄る。

「ははははは……ん、何だよ?」
 調教モードに入っちゃっているつぐむは、目の前に現れた真珠とアトーバにふと我に返る。
「つぐむちゃん……つぐむちゃんは、真珠の事をどう思ってるの?」
「どうって……」
「その、わたくしのことは……?」
「アトーバまで!?」
 鉈を手に迫る真珠と、いつもと違った様子で瞳を潤ませ迫るアトーバ。
 これはもう覚悟を決めねばならぬとつぐむは目を瞑る。
 その瞳が開いた時、彼は宣言した。
「ええい、お前らは全員俺のモノだ!」
 半ばヤケクソ気味に、しかし偽らざらぬ本心で。
「全員、平等に愛してやる!」
(ああ、つぐむくん……嬉しいっ)
(思う存分、甘えさせてもらいますわ)
 つぐむの男らしい宣言に、うっとりと瞳を閉じる真珠とアトーバ。

 ピンク色の煙は流れてきていたが、彼らにはほとんど関係がなく……

   ※※※

「私達は、とんでもない怪物を生み出してしまったのかもしれません……」
 プラチナム・アイゼンシルト(ぷらちなむ・あいぜんしると)の呟きに、息も絶え絶えになりながらエクス・シュペルティア(えくす・しゅぺるてぃあ)リーズ・クオルヴェル(りーず・くおるう゛ぇる)は頷くのだった。

「おー、皆今日は気が利きますね〜」
 その日は、紫月 唯斗(しづき・ゆいと)にとって幸せな一日になる、筈だった。
 仲間と一緒にキノコ狩り。
 リーズもエクスもプラチナも、いつになく熱心にキノコを採ってあっという間に籠は一杯に。
 リーズたちが料理し、勧められるままに唯斗はどんどんキノコを口に運ぶ。
(うふふふふ……せっかく面白いモノを見つけたのですし、マスターにはよーく味わっていただかなくてはいけませんね)
(プラチナめ、良いモノを見つけたな。たまには唯斗で遊んでやらんとな)
(くふふ、唯斗ってばどーなっちゃうのかしら)
 それが、女三人組の罠とも知らず!
 しかし、彼女たちは甘く見ていた。
 抑圧されまくった唯斗の欲望を。
 それが解き放たれた時の、とんでもないパワーを……!

 ゴゴゴゴゴ……
「唯斗? どうしちゃったの?」
 突然、俯いて動かなくなった唯斗を心配して近づいたリーズが、最初の犠牲者だった。
「きゃっ!」
 唇を奪われた。
「んんんんん……」
 抵抗しようとするが、真新しい傷跡に指先が這う。
「んんっ!」
 首筋に、背中に。
 強引なキスとは裏腹に、唯斗の指は優しく全身を弄ぶ。
「ん……ふ……ぅ」
 次第に、抵抗する気力も力も失せていき……
 リーズ、撃沈。

「ぷ、プラチナ……もしかしてこれって、ピンチという奴では……」
「はいっ!」
「なっ!?」
 リーズを倒し、エクスとプラチナムに向かって歩いてくる唯斗。
 プラチナムは迷わずエクスを差し出した。
「ゆ、唯斗、ちょっと落ち着こう、な……」
「………」
 唯斗は無言のまま、差し出されたエクスの衣服に迷わず手をかける。
 ぶちぶちぶちっ!
「ひっ!?」
 エクスの服のボタンが飛んだ。
「は、あ、あああああっ!」
 半裸のエクスに情け容赦なく襲い掛かる。
「あっ、あんっ、や、あああんっ!」
 いつもの唯斗とは全く違う情け容赦ない愛撫に、息をつく間もなく。
 エクス、撃沈。

「ま、マスター……」
 エクスを生贄に時間を稼ごうとしたプラチナムだが、唯斗の気迫に負け、思わず正座待機を余儀なくされていた。
 リーズとエクスを沈めた唯斗が、プラチナムの前に立つ。
「は、早い……」
 がしっ。
「えっ!?」
 二つの大きな果実を鷲塚む。
 もにもにもにもに!
「えええええっ、そんな、二人よりずっと、激しい……っ!?」
 多分それはサイズの差。
 もにもにもにもにぺろもにもにもにもに!
「あ、ひゃ、やああああああ……っ!」
 プラチナム、撃沈。

 三人を倒した唯斗は、ゆらりゆらり林の中へと進む。
 新たなる犠牲者を求めて……

「おぉおおおお……」
「いやーっ、翡翠ちゃんとのデートのお邪魔ーっ!」
「不審人物は去りなさい!」
 ばきっ!
 どごーん!
 途中、花梨に襲い掛かろうとして翡翠に吹っ飛ばされながらも、唯斗は止まらなかった。
 ピンク色の煙が流れていたが、今の唯斗に効果があったかどうかは定かではない。

「フハハハハハハ……って、効果なし!? えろきだけ胞子の効果は??」
「ふしゅー? もしゅー??」
※結論。真のエロスにブースト不要。