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第二章 護衛を行う者達

「う、卜部さん、臨時カメラマンをやらせてもらえませんか?」
 風馬 弾(ふうま・だん)がデジタルビデオカメラを片手に卜部 泪(うらべ・るい)の元にやって来た。
「いいですけど、何を取るつもりですか?」
「村の人とモンスターが共存してるって、とても素敵なことだなあと思います。なので、今回の護衛の記録を通じて、村と森の共存のことを、ニュースなどに流せないでしょうか」
 泪の質問に弾が答え、後ろにいたノエル・ニムラヴス(のえる・にむらゔす)が、
「共存の関係を世間に広く知ってもらえれば、村の維持にも繋がると思います」
 更に答えた。
「いい事ですね。村長さん、宜しいでしょうか?」
「ええ、村が今の状態で維持されるのであれば、わしからもお願いします」
 泪が村長に振ると尊重も快く了承した。
「じゃあ、弾君もノエルさんもよろしくお願いしますね」
「「は、はい!」」
 弾とノエルは元気よく返事をした。

「水を差すようで申し訳ないが……」
 歩きながら撮影に取り掛かろうとしている弾とノエル、泪、村長に超感覚で黒い狼の耳を生やした白砂 司(しらすな・つかさ)が声をかけた。
「今までの話を聞いていると、開拓する事を完全な悪だと捉えている印象がある」
「そうじゃないですか、共存していた動物達の土地を開拓するなんて行けないじゃないですか」
 司の言葉に弾が反論した。
「確かに……しかし、共に生きるというのは、こちら側だけが思っていても決して成し得ないものだ。もし、ドラゴンがこれからも村と生きていきたいと思うならばそれは尊重するべきだ」
 司は前を向き、歩きながら言葉を続ける。
「しかし、愛想を尽かしているというならば、屠り血路を開くことを認めるよりない。野生とはそういうものだ。」
 司は立ち止まると、弾達の方を向いた。
「獣人の村の開発に深く携わった一人として、 開拓そのものを悪と断ずることはできないし、それへの反発もまた悪と言い切れない。開拓から始まる事もあるだろう。」
「それなら、あなたはどうするのがいいと思いますか?」
 司の言葉を聞いてノエルが質問した。
「開発をしようとそれは勝手だ。あのとき森に住んでいた竜を倒した身として、ドラゴンを説得しようなどと言うこともできん。ただ、過去は大事にしておけと、俺はサクラコから教わった。」
 司は一緒に付いて来ていたサクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)を見た。
「あのとき私が獣人の村に獣人文化歴史資料館を建てた目的は、“人々が受け継いできた物語を、失わない”ことです」
 サクラコが話を続けた。
「新しい村ができたからって、過去を切り捨てたら寂しいだけですからね。それに、ドラゴンさんなら私たちよりずいぶん長生きですし、年長者は敬うというのは基本中の基本ってやつですねっ」
 明るい感じにサクラコが更に
「獣人の村を見習ってくれるというのはとても嬉しいのですけど、それがまた別な問題を生んだとなると切ないですねー。 でも、きっと解決の糸口はあります。諦めるにはまだまだ早いっ!」
 そう言って締めた。
「そうですね。でしたら、村の共存関係についてと開発派の意見、開拓を行った人、様々な意見を取材しましょう。サクラコさんもお願いできますか?」
「私の意見でよろしければ」
 泪がまとめ、取材についてサクラコも了承した。
「サクラコの言う通り、ドラゴンとしっかりと話し悔いのないようにするんだな」
「ああ、そうしますじゃ」
 司が村長に言うと、前に歩き出した。

「村の開発を巡っての抗争か……平和的に解決されればいいだけど、争い、戦いが始まらなければいいけど……」
 灯真 京介(とうま・きょうすけ)が護衛をしながら司達の話しを聞いて呟いた。
「そうですね。戦いが始まれば、私達みたいな別れ離れになるような悲しい出来事が増えてしまうかもしれませんね」
 灯真 楓(とうま・かえで)が京介の呟きに続いた。
「その様な事が起こらないように私達がいます。無事に村長をドラゴンの元に届け、平和的解決に繋げて貰いたいです」
 リル・ファティス(りる・ふぁてぃす)が話を締めて三人は頷きあった。
「ドラゴンは長い年を生きているはずだ、もしかしたら、いろんな話が聞けるかもしれない。楽しみだね!」
「そうだな」
 別の方向で護衛していた仁科 姫月(にしな・ひめき)はドラゴンに会える事を会える事を楽しみにしており、成田 樹彦(なりた・たつひこ)が頷いた。
「ん?」
 司は、遠くで何かが走り抜ける音を聞き、そちらを見た。
「どうした?」
 サクラコが尋ね、
「いや、何でもない」
 司は、遠くで黒い翼が目立つ二つの影を目撃するもそう返した。