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【第三話】始動! 迅竜

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【第三話】始動! 迅竜

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同時刻 迅竜 格納庫

「何でマルコキアスじゃ駄目なんですの! わたくし、ちゃんと整備(単なるお掃除)しましたの! カレーくさくなったりしてませんから、こっちで良いのですわ……?」
 禽竜に乗ると言いだした鉄心とティー。
 二人が危険な機体に乗ると言いだしたことで、イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)はいやいやしていた。
「きっとまた今回もあの機体――“フリューゲル”が出てくるんだ。だから、この機体が必要なんだよ」
「大丈夫。ちゃんと二人揃って無事に戻ってくるから」
 諭すようにしてイコナに言い聞かせる鉄心とティー。
 そうこうしているうちに迅竜が戦場に近付いたことを報せる艦内アナウンスが入る。
 いやいやするイコナを宥め、二人は禽竜のコクピットに入った。
 シートに座り込み、各種計器を起動する鉄心とティー。
 次々にバックライトが灯っていく中、二人はハッチを閉めた。
「……良い勝負をするパイロットも居るようだが。機体性能の差からか決定的な局面には至っていない。突破には、お前(禽竜)の力が必要になるだろう……頼むぞ」
 機体に語りかけると、鉄心はエンジンを始動させた。
 それと同時に機体を固定していた器具のロックを解除し、動ける状態にする。
「ロックボルト、オフ。周囲の整備員は退避してください」
 機外スピーカーで告げ、それに応じて整備員が安全な位置まで下がっていく。
「イコナはこっちな。ほら、危ねえからとっとと行くぞ」
 淵の補佐として格納庫に詰めていたカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)が気を利かせ、近くで禽竜を見ていたイコナをひょいと担ぎ上げる。そのままイコナを肩に乗せたカルキノスは安全件まで退避する。
 全員が退避完了したのをモニターで確認したティーはそのまま機体を歩かせる。
 しばらく歩くと、禽竜はカタパルトブロックへと辿り着いた。
 歩いている間に見えた格納庫の風景は、まだ閑散としている。
 迅竜の格納庫にはまだ艦載機も少なく、ところどころ空いているスペースも目立つ。
 良く言えば余裕のあるこの状況。
 きっと、これからの戦いの中で、いずれこの格納庫は艦載機で満たされるのだろう。
 その時のことに一瞬思いを馳せたティーは、すぐに頭を切り替えて操縦桿を繰る。
 上手い具合にカタパルト上に禽竜を立たせた直後、鉄心とティーのいるコクピットのモニターにウィンドウがポップアップした。
 ウィンドウにはダリルの映像が表示されている。
 ブリッジのダリルから通信が入ったのだ。
『準備はいいか?』
 その問いかけに、二人は即答する。
「ああ。万全だ」
「ええ。いつでもいけます」
 すると発進シークエンスを示すカタパルト上のシグナルが赤から緑に変わる。
 そして、カタパルトのハッチが開き、どこまでも済んだ蒼空が現れた。
『進路クリア。発進どうぞ』
 モニターに映る映像の中でダリルが告げると、ティーは応えた。
「源鉄心、ティー・ティー。禽竜、出撃します!」
 カタパルトから勢い良く射出された禽竜は蒼空へと飛び出す。
 飛び出した直後、禽竜はフルブーストで蒼空の彼方へと飛び去っていった。