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年忘れ恋活祭2022 ~絆~

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年忘れ恋活祭2022 ~絆~
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リアクション

 展望台。

「ゼーさん、凄く綺麗だよ!」
 なななはシャウラを呼びつつ嬉しそうに雪降る夜景を眺めている。
「ななな、寒くない? 寒かったらジャケ貸すぜ」
 シャウラは雪が降って日中より随分冷え込み始めたのでなななが風邪を引かないようにと着ていたジャケットを脱いで差し出した。
「ありがとう。でもゼーさん、大丈夫?」
 なななは受け取っても着る事はせず、シャウラを心配した。
「俺は鍛えてるから平気だ」
 シャウラは胸を張り、語調を強めて言うも大きなクシャミを一発。お約束の展開。
「って、クシャミしてるよ」
 なななは笑いながら言い、ジャケットを返そうとした。
「いや、本当、平気だから。着とけって」
 シャウラはジャケットをなななの手から取るなりなななの肩に掛けた。
「う、うん。ありがとう」
 なななは素直にシャウラの思いやりを受け取る事にした。
「せっかくだから夜景をバックに写真を撮っておくか。ほら、ななな、ポーズ」
 シャウラはデジカメを取り出して被写体となるなななを急かした。
「うん」
 なななは急いで撮影定番のポーズであるピースをした。
「ありがとー、せっかくだから一緒に撮ろうよ」
 撮影が終わるとなななは次は祭りに参加したシャウラと一緒に撮りたいと誘い始めた。
「……ななながいいなら」
 シャウラは嬉しく思いながらも相手は自分を友達と思っているんだと言い聞かせ冷静を保ち、近くの人にデジカメを渡して程良い距離を保ちつつなななの隣に立った。ポーズを変えて数枚撮った。

「良い感じに撮れてるねー。ゼーさん、今日はありがとう!!」
 撮ったツーショットを確認しながらなななは祭りに誘ってくれたシャウラに礼を言った。
「いや、なななが喜んでくれたらそれでいい」
 とシャウラ。今はなななの笑顔だけで十分だと心底感じた。

 展望台。

「……保名様、【白面九尾】の封印が解けそうなんですね?」
 葛葉は露店巡りの時に保名が言おうとした事を言葉にした。
「そうじゃ、疼くのじゃ……幸せな者共を食らいつくせと」
「それを先ほどおっしゃりたかったんですよね。でも言葉にしなくても知っていますよ。何年、貴方に仕えてきたと思っているんですか」
 葛葉は保名の必死な言葉をさらりと流してしまう。
「ならば、わしが何を考えているのか分かるじゃろう……わしはお主とこのような時間を過ごしてはならぬと……既に白狐の里は無く……地祇としての寿命も近いわしと居てもろくな事にならん……【白面九尾】に戻る前にお願いだから……離れてくれ……」
 理解しているとは思えぬ葛葉の態度に保名は少し声を荒げるも逆に葛葉が傍に寄る。
「それだけですか。次は僕の話を聞いて下さい。僕は巫女として貴方に仕えてから、今までずっとお慕いしてきました。例え貴方がどんな化け物になろうと同じ存在に成り果てでも僕は貴方の傍に居ますよ……永遠に」
 葛葉は露店で買った小箱を保名に差し出した。告白の後の小箱に入っている物は決まっている。
「……だから離れてくれと……怖くて……お主に居て欲しくなってしまう……でもそれは
大切な……おぬしを傷付けてしまう……おぬしが良くてもわしは…… 地祇として幸せだったからこそ……前の邪悪故に孤独だったわしに戻りたくない……避けられないなら……せめて……おぬしだけは……守りたい」
 保名は葛葉の言葉が苦しくて言葉が途切れ途切れになってしまう。今の保名は右目に狂気を抑えるために疲労困憊していていつ【白面九尾】に戻ってもおかしくないのだ。
「……しかし、それは今ではありませんよね。こうして僕と話しをしています。言いましたよね、僕は永遠に貴方の傍に居ると」
 葛葉は小箱を差し出したまま。保名が受け取るまで一歩も引かない。ちょうどこの時、時計台の鐘の音が鳴り響き出すも葛葉と保名は互いの事しか見えていないし聞こえていなかった。
「……葛葉、本当にわしとずっと一緒に居てくれるのか? わしは……お主に甘えてもいいのか?」
 じっと保名は縋る目で葛葉を見た。
「もちろんです。僕と夫婦になって下さい、保名様」
 葛葉の答えに迷いは無い。
「……こんなわしでよいというのなら」
 そう言いつつ小箱を受け取り、中に入っている指輪を身に付けた。
「それは間違っていますよ。貴方だからですよ」
 保名の言葉を訂正し、葛葉はそっとキスをした。

 展望台、草むら。葛葉と保名が結ばれる少し前。

「……飽きたの」
 葛葉達のお喋りに飽きたハツネは周囲から聞こえるカップル達の熱い声に興味を向け、動き始めた。
「お、お姉ちゃん、どこに行くんですか?」
 清明も慌ててハツネの後を追う。
「近くから声が聞こえるの」
 訊ねる清明に答えながら草をかき分け、声がする場所を確認する。ハツネの性知識はキスまでという幼い子供並みなので何があるのか想像していない。
「えと、行っては駄目ですよ」
 何があるのか知っている清明は顔を真っ赤にして止めようとするが、遅かった。

 目前には大人の楽しみを満喫している一組の男女。夢中のためハツネには気付いていない。
「……何か変な事してるの……爆発させるの」
 何も分からないハツネは壊したい衝動のままハツネ特製リア充チョコ片手に草の上に寝ている男性の所へ行き、口に突っ込んでしまった。
 当然、派手な爆発発生。ちょうど鐘の音が鳴った時だったので葛葉と保名には聞こえなかったのが幸い。
「あぁ、お姉ちゃん!! ご、ごめんなさい。逃げますよ!」
 清明はカップルに謝り、ハツネを連れて草むらを離れた。葛葉と保名の告白を最後まで見届ける事は出来なかったが帰宅後に葛葉達が夫婦になった事を知った。もちろんハツネはクレープを奢って貰った。ハツネの犠牲者となった男は何とか無事だったらしい。

 展望台。

 綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)は寒さが苦手なアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)を連れて祭りを楽しんでいた。露店巡りをしたりクレープを食べたり催し物を楽しんだりお揃いのアクセサリーを買って付け合ったりと日中存分に楽しんだ。
 その後、夜景を楽しもうと雪降る展望台に来ていたのだ。

「……とても綺麗だね」
「えぇ」
 美しい夜景に二人は思わず口付けを交わしていた。
 この後も適当な会話をしては何度かキスをして過ごした。

 何度目かのキスの後、
「せっかくだからこれからお店で一緒にお酒でも飲まない?」
 さゆみはそっとアデリーヌから唇を離した。寒そうに体を小さくしているアデリーヌのためにどこかの店に入ろうと考えていた。
「もう少し楽しんでもいいのよ。私に気を遣わなくても」
 さゆみの気遣いにアデリーヌは申し訳なさそうに言った。もう少し夜景や雪を楽しみたかったのを自分のために変更したと思ったから。さゆみがいれば寒くても気にならないから。
「ううん、そうじゃないよ。20歳になって初めて飲むお酒を一緒に楽しみたいから」
 さゆみは寒さで冷たくなっているアデリーヌの手を握り笑顔を向けた。
「それなら付き合うわ」
 アデリーヌはこくりとうなずいた。右手に感じるさゆみの手の温かさが嬉しくて離したくなくてぎゅっとアデリーヌは力を込めた。
 二人は手を繋いだまま歓楽街に向かった。