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リアクション
第7章 2時間目:試作品作りタイム Story2
「宝石のほうのアイデアはだいぶ集まっているようじゃな。甚五郎、その他の魔道具を提案してみてはどうじゃ?」
「その他だと?」
草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)に丸投げをされ、夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)は腕組しながら考え込む。
「―…もっと持ちやすい魔道具を考えてみはどうか?」
「祓魔の護符のように、誰もが持ちやすいものというわけかのぅ」
「宝石キラキラしてきれーだなー。羽純おねーちゃん、魔道具貸してー」
ルルゥ・メルクリウス(るるぅ・めるくりうす)は背伸びして草薙羽純のペンダントに触ろうとする。
「今は使わぬからよいが」
「わぁーい」
「だが、他の者から借りたものは使えぬぞ」
「えぇ、ざんねーん。でも、頑張って覚えるからね!1時間目の授業で、ちゃんとノートもとってあるしっ」
自慢げにノートを開いて見せる。
「ほう…綺麗にとってあるのぅ」
ルルゥの頭を撫でて褒めてやる。
「おなかすいたなー…」
はしゃぎすぎてお腹が減ってしまったらしく、こっそりクッキーの袋を開ける。
「あー、床にこぼしまくりだね」
ぽろぽろとかけらをこびしているルルゥを佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)が目撃してしまった。
「え〜と脳の糖分補給なんだよ!キミも食べる?」
「じゃあもらおうかな」
「いっぱいあるよー!」
「たまにはこういうお菓子もいいもんだね」
「のんきなこと言ってるけど、ほぼ逃避してない?」
彼の傍らで賈思キョウ著 『斉民要術』は農業専門書が現実に戻るように言葉を投げる。
「そ、そんなことないよ…」
宝石のアイデアが次々と出る中、弥十郎も考えてきた宝石について言おうとすると、斉民に止められた。
「粘るのはアークソウルだけにしときなよ」
まだ黄色と言われたことを気にしてるのかさらに撃沈させる。
「夜刀神は札の魔道具を作りたいのか?」
「出来ればな」
「俺とかが扱える物を考える予定だ。もし、希望に合えば作ってもらえないか?」
「あぁ、防御ものながら歓迎だ」
「分かった。少し離れてアイデアを練ってくるとしよう。そこで待っていてくれ」
アニス・パラス(あにす・ぱらす)のために甚五郎たちと離れて考えることにした。
「護符単体でこの能力は難しいから、複数使用したり特定の配置による発動とかにすれば可能か?」
「和輝、強化したエアロソウルの力を使えば可能だ。アニスの能力が上がれば問題なかろう」
「リオン!一時的でも普通の道具に祓いの力を付加とか出来ないかな?付加された道具を普通の人に持たせて、一時的に護符のような防御としても使えるかもしれないし……おお?意外といけるかも?」
「いや、アニスのエターナルソウルは他者に付与出来る効果があるはず。もっと他のものを考えねばな」
「むー…」
「新たな宝石を考えている者が試作品として作るかもしれぬ」
「そっかー!同じのがいっぱいあっても、持ちきれないもんね」
佐野 和輝(さの・かずき)も使えるものがよいだろうと頷く。
知識だけあればいいと言っていたが、魔性に狙われてしまったことを考えると、彼も使えるものが欲しい。
「札を透過して首から下げることで、所有者以外は見えないというのはどうだ?」
「和輝が憑かないように、1回だけとか護ってくれる感じ?」
「うむ。それも相手に使える物にしてな。本来の所有者しか見ることが出来ないのだから、回収もしやすいだろう」
「すぐに誰のか分かるね!あれれ?他の人にも付与できる感じだよね」
「俺たち以外の者も守ること考えれば、それもいいんじゃないか。手荷物が大変だろうから、俺が用意すれば問題ない」
まとめたアイデアを甚五郎に伝えるべく、和輝たちは彼らが待つテーブルへ戻る。
「透過の札か。ふむ、よさそうだな」
自分の希望にも近いし作ってみるかと言う。
「ダリルも何か提案したいと言ってまーす♪」
「ちょうどいいや。弥十郎、作ってみたら?」
「え、ええ?」
「粘るもんよりも、こっちのほうがいいんじゃない?」
「いやだってワタシは宝石使いだし…」
「ううん、全然問題ないところだけよ」
章を使える中級ランクの者はすでに、別の試作品を作り始めているため確保出来なかったのだ。
「お願いね♪」
「ルカルカさんの頼みじゃ断りきれないねぇ」
「まずは校長に聞いてみるとしよう。…校長。護符の弾丸版、照魔弾、各スペルブックの章の威力を込めた弾を撃てる祓魔銃を考えているのだが」
「章の威力を込めた弾は綾瀬さんのリトルフロイラインが、アイデア術で使えるじゃないですかぁ。次の自習時間で、試してみてはどうでしょう?章の威力と銃が同じ力なら、荷物が多くなってしまうだけのような…」
「人に持たせてもか?」
「はい〜。祓う力が上がりにくいですし、始めから章を使ったほうがよいかと。例えば、中級ランクの人が力を他人が持つ銃に込めても、同様の能力は持たせられません〜」
だけ銃では本のように祓う能力を持たせるのは難しいと説明する。
「綾瀬さんの場合は、リトルフロイラインの魔性の力としての適応能力があるからですよぉ?」
「あら、リトルフロイラインのことですの?確かに、私のリトルフロイライに効力を与えても、同様の能力がすぐ身につくわけではありませんわ」
「綾瀬様の言うとおり、もっと経験を積まなくてはいけません!」
「そりゃ、今からだとかなり茨の道だよな」
カルキノスも厳しいなと言う。
「こんだけ章使えるやつがいるんだ。むしろ小型の護身用でいいんじゃねぇ?」
「それもそうか。護符の弾丸版だろうだろうか」
「ホントに銃弾って感じだと痛そうよね。撃ったらミストっぽいものが出るとかにしてない?」
「あぁ、ルカ。必要以上に恐怖心を与えてはならないんだったな。弥十郎、照魔弾も頼む」
攻撃能力はないが発煙筒代わりにはなうだろうと付け加える。
「ん…小型なら持ちやすそうだし。作ってみるよ♪」
“あ、何か元気になった”と斉民の呟きを無視し、機材を借りにいく。
その頃、甚五郎たちは札の試作品作成にとりかかっていた。
「身代わりに憑依した札を器にされてはな…」
「それは憑いているうちは何も出来ないが、離れるのは自由程度にしておけばよい。あぁ、それと憑かれた札が人から離れるようにな」
「ふむ…」
禁書 『ダンタリオンの書』(きしょ・だんたりおんのしょ)の注文をノートにメモしておく。
「魔術式に文字でも書いておいたらどうじゃ?」
「この筆を使わせてもらおうか」
緑色の液体をつけ、護符の素材に似た紙に書いてみる。
「おー、文字が透明になっていくのぅ」
魔法の液が紙に染み込み、まったく見えなくなっていく。
「身につけるものとして、首から下げておくタイプにしておこう」
銀糸のような糸を紐状に編んで札につける。
「完成したのですねぇ!使い方のレポートと魔道具をこちらへ♪」
「実用化出来ればよいのだが。…使用方法を書かねばな」
「私が書いておいたぞ」
使用方法をまとめた用紙をエリザベートにリオンが渡す。
「ありがとうございますぅ〜」
甚五郎が札を完成させた頃、弥十郎は銃作りに没頭していた。
「ええっと。斉民に炉で溶かしてもらって、パーツを作ったから。組み立てなきゃなんだけど…」
「銃、一から組み立てたことあったけ?」
「ナイね♪」
「うん、知ってる。しかも精神力が尽きない限り、使えるものがいいんでしょ?」
「―…うぅ」
誰でも使えるものといったら、メンテがいらず弾丸は自らの精神力で作り出すものにする必要がある。
エリザベートに聞こうとしたのだが…。
説明を書いた紙を貸してもらったのはいいが、その後は放置同然でジャンドゥーヤだけ持っていかれた感がした。
「あれだよね。執事が使ってるような小さいやつ」
「そこまで小さいのは逆に大変だからイヤ♪ふぅー、やっと組み立て終わったよ」
「弥十郎、持ってみたい」
「やだ」
「ふーん。そういうこと言うわけ?」
「冗談だよ、怖いなぁ」
試作品を斉民にしぶしぶ貸してやる。
「ハンドガンみたいね?」
「ルカにも貸して!」
「どうぞ」
「普通の銃よりすごく軽いね」
ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は白に近い銀色の銃を構えてみる。
「手首が痛くなったりしないように、軽めの魔法金属を選んでみたよ」
「章使いでもいけるかしら?」
「本を使わない状態ならかな」
「その時はカルキに持ってもらおう♪」
にっこり微笑むルカルカにカルキノスが“その間、俺も本使えねぇけど?”とツッコミを入れた。
「試作品作り、順調ですかぁ?」
「今、完成させてもらったところよ」
「…例えば、護符とペンダント使ってる人はどうしたらいいんだろうね」
「護符をポケットとかにしまっておいて、銃を使えばいいんですぅ!」
「あーそっか♪手荷物が軽い分、それでもいけそうだね」
なるほどと思い、にんまりと微笑む。
「ルカ、そろそろいいか?」
「あ、ごめん」
「試作品についてのレポートだ。それとこれもな」
「ありがとうございますぅ〜」
エリザベートはダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)からレポートと試作品を受け取った。
「今までのノートを入れたノパソを進呈するので役立ててくれ」
実技や実戦の記録をまとめたノートパソコンを淵がオメガに渡す。
「……これは、どのように使うものですの?」
「このようなものに、あまり触れたことがなかったのだったな。使い方を教えてあげよう。…オメガ殿、どこの辺が分からないのだろうか」
「いえ、まったく…」
まさかの電源から教えるパターンに、淵は唖然としてしまう。
「これがスイッチだ」
「押していいんですの?…何か絵のようなものが見えますわ」
「起動中ということなのだが」
ずっと館に閉じ込められ、外の情報を与えないようにされていたのだから、当然といえば当然か。
淵は1から丁寧に教える。
「やべぇな。インターネットも分からんってことだろ」
「いんたーねっととは、どのようなネットでしょうか…」
「マジか…。淵、頑張れ」
「う、うむ…。あ、設定を少し修正しておこう」
間違って有害サイトを開かないように操作する。
「おーい、淵。教えているうちに授業終わるんじゃねぇ?」
「む…そのようだな。オメガ殿がよければ…、今度また教えたいのだが」
「ぜひお願いしますわ」
「それで、話は授業のほうに戻るが。オメガ殿はどの魔道具に惹かれた?」
「…そうですわね。いろいろな効果があって迷いましたが、使い魔を扱ってみようかと…」
章は加減が難しそうだと判断したのか、人を守る力を身につけることを選んだ。
「そ、そうか」
「淵〜。何想像してんだ?」
オメガが使い魔を扱ってる様を想像し、真っ赤な顔をしている淵をカルキノスがからかう。
「う、うるさいぞカルキ」
「おーこぇー♪」
分かりやすい淵の反応にケラケラと笑った。
「魔道具の設計図を引くためダリルが作る暇がなかったので、ルカが作ってきたよ♪」
「個性的な味だな。かなり香ばしいぞ」
さっそくカルキノスが手をつける。
「チョコ味の生キャラメルだよ。電子レンジと材料さえあればできるのだ。…ねぇ、今なんか空耳が聞こえた気がするんだけど?」
「いや、レンジでどうしてこういう味がな」
「そっちはちょっとだけ失敗しちゃったの!えっへん、こっちのはキレイに出来たからね」
「あ、そっちをくれ」
「やー!そっち食べてよ」
“なんの罰ゲームだ”と言いかけたが、口にしたら食べきってももらえなくなる。
「エリザベートとオメガさんの分はこっちね♪カルキはメッ!」
「おいしーですぅ!!」
「初めて食べる味ですわ」
「こういうのは食べたことないのね?じゃあ、ルカのが最初かな♪」
「それはそれは…。ダリルが作ったものじゃなくって残念…」
「あーーーっ。カルキにはもうあげないっ。いーーーだっ」
冗談でも許してあげないもんっと、美味しいほうに手を伸ばすカルキノスから、生キャラメルを取り上げた。
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