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1章 死に満ちた世界

「……それにしても居心地の悪い世界ね」
「ええ、身体がムズムズするわね」
自由と引き換えに争いの無い世界を探索するのはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)の2名である。
彼女たちの目の前に広がるのは完全な管理社会であった。
四方と空が鉄の壁で囲まれた街で人は一日のはじめに通達される命令通りに業務をこなす
世界。
それには大人も子供も老人も関係ない。
命令通りにしか動けない、自分の意思で動く事の無い人間しか存在しない世界、これが争いの無い世界である。
セレン達は街を探索し、とある子供に遭遇した。
「あの子供、なにをしているのかしら?」
そう言うとセレンは子供に駆け寄って行った。
「ねぇ、君はなにをしているのかしら?」
なにやら小型デバイスをいじっている少年はこの管理社会でのイレギュラーに警戒を示したが、再びデバイスに目を戻し答えた。
「命令に関係の無い会話はできません」
子供の発言とまるで機械かのような表情に二人は驚きを隠せなかった。
「……驚いた。なるほど、居心地の悪さはこれが原因ね」
「この世界では私達は異端って所かしら」
セレアナはふと自分の武装を見て、大きく溜息をついた。
「私達が必死に戦って、その先にあるのが生きながら死んでいるこの世界、なんて御免よ」
「私だって嫌よ。いくら自由が人間に過ぎた物でも、こんな結末なんて認めないわ」
二人は空を見上げていた。
「そういえば、この町ってドーム状になってるのね」
「空も見えないなんて、悲しいわね」
そうセレアナが呟くとセレンは何かを思いついたようで不敵な笑みを浮かべていた。
「ちょっとセレアナ、付き合いなさい」
「何をするつもりかしら?」
「内緒」
二人は外壁がある街の外周部まで歩いてきた。
「壁の近くまで来たけど、ずいぶん大きな壁ね」
「そうね。まぁ……」
そう言うとセレンは武装を手にし壁を破壊し始めた。
「セレン! 貴女いったい何を……」
「まぁ、見てなさい! 壊し屋の名前は伊達じゃないわ!」
街の住民は起きたことの無い事象にただ眺めていることしかできなかった。
きっと彼らの命令には彼女たちを止める、という内容がないからであろう。
「私には難しいことはわからないけど……! 自由とか責任とか、難しく考えたら堂々巡りなんだから、気楽に考えたらいいの!」
セレンがそう叫ぶと大きな音をたてて外壁が崩れ、
破壊した壁の先には雲一つない青空と自然に溢れた大地があった。
「……綺麗なものね。もしかしてセレン、これを見せたくて……」
「そういうこと。貴方達が自由という不自由を手にした先にはこんなに綺麗な物が待っているって教えてあげたくてね」
「そうね。自由とは生きる事だもの。生きるという責任を放棄した人間はこの空には、この大地には出会えないわね」
空を眺めていた二人は街の住人に振り向き、宣誓をした。
「生きるという責任を、自由が欲しい人は前へ進みなさい。そうすれば、いつか本物の苦しみと幸せに出会えるわ」
セレンは胸を張って言い、
「困ったら私達人間が、貴方達を助けてあげる。それも自由だもの」
セレアナは笑顔で語りかけた。
すると先ほどまで無機質な表情だった住民が少しずつ表情を変え、街の外へと歩み始めたのである。
命令にはない、彼らの意思で前へと。
「ふぅ……。こんなところかしら? あとは……」
「ええ。あとは世界の創造主とやらにお説教かしら」
自由の無い世界に生きるという本当の意味を知るために住人は前に進み始めるのであった。
ファーストミッション、ファーストフェイズ完了。