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粛正の魔女と封じられた遺跡

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粛正の魔女と封じられた遺跡

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予防薬

「本当にいいんでしょうか? 父には部屋でじっとしているように言われているんですが……」
 困惑した様子でそう言うのはこの村の村長であるミナホだ。
「ゴメンだけど人手が足りないの。手伝ってくれるだけでいいから」
 そう言ってミナホの手を引っ張るのはルカルカ・ルー(るかるか・るー)だ。ルカルカはミナホを連れて現在遺跡病の予防薬を作っている所に向かっていた。
「ま、前村長も手伝うくらいなら許してくれんだろ」
 ルカルカのパートナーもカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)もそう言ってミナホを促す。
「……そういうことなら」
 そうこう言っているうちに調合部屋につく。
「あ、ミナホさん。ちょうどよかった。一応レシピ通りにやって後は煮込んでるだけだなんだけど」
 調合部屋に待っていたのは清泉 北都(いずみ・ほくと)だ。入ってきたミナホを見つけて調合の是非について聞く。
「どうやって作ったんですか?」
「―――こんな感じだよ」
「私が確認する限りでも問題ないですね。北都さんがやったのであれば心配もありません」
 熟練の契約者であり薬学の特技を持っている北都だ。このレベルの調合であれば失敗するほうが難しい。
「……って、私がすることないんじゃないですか?」
 既に煮込み終わるのを待つだけだ。ミナホが出る幕はない。
「出来上がった薬を瓶に詰める作業がちょっと大変そうなのよ」
 そう言ってルカルカが指差すのはだいたい100mlほどの大きさの瓶だ。それが50本ほど置いてある。
「なるほど。……それで、あとどれくらい煮込めば出来上がるんですか?」
「この量だと……あと12時間くらいかな」
「……………………長いですね」
 北都の解答にミナホはそう言う。
「……そういうことなら遺跡病の抑制薬を作りませんか?」
「抑制薬? 予防薬とは違うのか?」
 ミナホの言葉にカルキノスは首を傾げる。
「そうですね。ちょうどいいので今現在ある遺跡病関連の薬を確認しましょうか」
 そう置いてミナホは続ける。
「まず、瑛菜さんが倒れた時皆さんに作ってもらった霊薬『ミナスの涙』。効果は遺跡病を治すこと。レシピは父から渡されました」
 材料は陽光の当たっていない水晶と薬草。それをユニコーンの力を借りて調合する。
「次に今作っているのが遺跡病の予防薬。効果は1時間から2時間ほどの間遺跡病にかからなくなる。効果の方は父が確認済みです。村に住む契約者の方がレシピを作ってくれました」
 作成にはゴブリンキングが渡したというマジックアイテムが必要であり、もろもろの工程の後にこれを煮こむことで完成する。
「最後に遺跡病の抑制薬。効果は遺跡病発生後の症状の抑制。治す効果はありませんが症状が和らぎます。こちらは瑛菜さんが倒れた時に来てくださった契約者の方にレシピを作って頂きました」
 材料は村近辺で集められるものであり、調合もミナスの涙に比べて容易。
「こんな所でしょうか」
「いつの間にかいろいろできてるんだねぇ。それで抑制薬のレシピはある?」
 北都の言葉にミナホは部屋にある机からレシピを取り出して渡す。
「えーと……これなら、うん。すぐに集められそうだ。昶、頼める?」
 レシピを確認した北都はパートナーである白銀 昶(しろがね・あきら)にそう聞く。
「任せとけ」
「これとこれは雑貨屋で……後は森で集まるかな」
 調達の方法をイノベーションで的確に昶に指示していく北都。
「おっし、行ってくるぜ」
 そう言って昶は部屋を出ていった。


「嫌な匂いすると思ったら……」
 森の中。材料を集め終わった昶は妙な気配を感じてその方向へ向かう。
(あれが、襲撃者か)
 20人ほどの武装した人間が集まりあたりを警戒していた。
(……こっちから攻撃するのは無理そうだな)
 昶の超感覚がそう警告している。おそらくあたりに罠が仕掛けられまくっているんだろう。仮に罠を突破してもその間に逃げられる可能性が高い。
(けど……格好といい動きといい軍隊みたいだな)
 そう襲撃者に感想を持ち昶は神速で北都たちの元へと帰っていった。

「おかえり昶。少し遅かったね?」
 帰ってきた昶を北都はそう言って迎える。
「ああ、ちょっと襲撃者たちを覗いてきた」
「……大丈夫だったの?」
「気づかれてはないはずだ」
「それで? 襲撃者たちの戦力はどんなもの?」
「数は20人ほどだったな。動きは正直想像以上に良かった」
「少し大変そうだね」
「ま、魔法とか使えば数来ても対処できるだろうし大丈夫だろう」
 ただ粛正の魔女がどんな形で関わってくるか分からないからそれだけが不安要素だが、と昶を言った。
「それと、遺跡の方には同時に10人向かうそうだ」
 話を盗み聞きしたと昶。
「その辺りを遺跡に向かう人とユニコーン護衛に付く人に伝えようか」
 
 そうして昶にもたらされた情報の元、契約者の戦力分配が行われた。