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Dearフェイ

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Dearフェイ

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 エピローグ
 
 
 あの日からヴァイシャリーの街での幽霊騒動はピタリと止み、以前のように平和で落ち着いた街が今日も朝を迎えた。
 幽霊騒動から一ヶ月が過ぎ、あっという間に二ヶ月が経とうとしていた。
 あの日と同じようにカツカツとブーツの音を軽快に鳴らしながらイングリットはツェツィの屋敷を訪れていた。

「ツェツィーリア様、イングリット様がいらっしゃってますよ」

 キィと小さく音を立てて開いた部屋の先にツェツィの姿はない。
 開かれた窓と、テーブルの上の手紙の『ちょっとお散歩してきます』の文字。
 慌てる新人メイドを他所に、ハンナはいつも通りにイングリットにお茶の用意を始めていた。
 いつもと変わらないもの。しかし、変化するものもある。
 彼女が祖母から、そしてディアから受け継いだメッセージ。
 選択するという、大事なこと。

 街を歩くツェツィの腕の中には、以前と変わらず静かに寄り添うフェイの姿がある。
 買ったばかりの新しいリボンをフェイにつけてあげると、どこか嬉しそうにも見える。

「今日はどこに行こうかしらね、フェイ?」


『――どれだけ辛いことがあっても、誰か一人でもいればあなたに幸せをくれる。たった一本の波が、辛さを幸せに変えてくれる――リフィーネ・オーウェン』

 開いたままのページが窓からの風にふわりと揺れる。
 ツェツィの部屋から見える花壇には、あの日赤と白が一つになったように薄桃色に染まったバラが凛と立っていた。
 ハンナの淹れたお茶を飲みながら、元気になったツェツィと今度は一緒に旅行に行こうと考えを巡らせるイングリットだった。

 
 
 

担当マスターより

▼担当マスター

宇角尚顕

▼マスターコメント

 最後まで読んでいただきありがとうございます。参加してくださった皆様方、本当にありがとうございました。
 ミステリというにはまだまだ遠いストーリーでしたが楽しんでいただけていれば幸いです。
 それではまたどこかでお会いしましょう。

 宇角尚顕