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【祓魔師】災厄をもたらす魂の開放・序章

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【祓魔師】災厄をもたらす魂の開放・序章

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第5章 無策で特攻は危ないのですよぉ!作戦会議 Story5

 予想として取り込まれている可能性のある魔性について、知っておいたほうがよいだろうと、エリザベートはシャーペンでカリカリと用紙に詳細を書き込む。
「エリドゥ近辺で発見してもらった砂嵐は、大気の魔性の力を利用したものかもしれません〜」
「下級だけど他の相手より、術の命中力が高いね」
「そこが問題なんですぅ!かまいたちみたいな、鋭利な風を飛ばしたりするんですよぉ」
 触れたらただでは済まない鋭い風を放ってくると言う。
「回復効果をダメージに変える呪いや、命中させやすくするターゲッティングをしてきたりもね」
「各自、ちゃーんと能力のこと覚えておいてくださいねぇ!」
 きちんと覚えておくようにと言い、大気の魔性の能力の説明を終えた。



「ざっと外見は分かりましたけど。ディアボロスの呪術の詳細を、知っておく必要がありますわ」
 知らないまま向かうのは自滅も同然。
 チームの壊滅を招きかねないと想定したミリィが言う。
「嘘で惑わす虚構の魔性だね。偽りの宣告をして、その呪いを数分後かに…現実化させることがあるんだよ」
「宣告には、どんなものがありますか?」
「ディアボロスに気分次第だからどうだかね。生命を奪うほどのものじゃないけど、重傷に陥るような宣告はあるかな…」
「今までの相手が使う呪いは、1つのみですが。…他にあったりは?」
「敵味方が分からなくなる呪術があるね」
 無差別に襲いかかる混乱の呪いも使ってくると教える。
「ボコールに黒魔術を教えたなら、ディアボロスも使えるのかな」
 教えることができ、しかも強い力を持った魔性ならありえるのでは…と、涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)が呟く。
「そりゃ使えるだろうね。興味を持ったものに限るだろうけど」
 知っているということと、使えるというのはイコールではない。
 ゆえに、全てではないだろうと言う。
「ラスコット先生、呪いについては分かったが。それ以外の面での能力などを、教えてもらいたい」
 ミリィとの会話で術の一部は知ることができた。
 ―…が、黒魔術などについてはまだ知らされていない。
 このままでは対応も難しいだろうと、夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)が聞く。
「ディスペル以外にも…、黒い月を召喚して闇黒系の攻撃魔法もあってね。怒りの感情に支配させれた者は、敵に物理攻撃しかできなくなってしまうんだ」
 普段使うスキルの強制解除の他、狂戦士化させるような黒魔術も使うようだと教える。
「これも厄介なんだけど。アンデット化させて、回復効果をダメージに変える術もだね…。どっちも呪いじゃないから、時間が経てば自然に解除されるよ」
「ううむ、確実にかかるものなのか?」
「いや、そうでもないけどね。宣告と合わせて使うこともあるからさ。必ずそれが現実化するわけでもないからね、パニックにならないように気をつけて」
「言葉ばかりに惑わされて、慌てるなということだな」
「そういうことになるね。可視・不可視化、どっちも物理攻撃は効かないかな。後、通常のスキルもね」
「自己治癒能力はあるのだろうか」
 今まで遭遇した魔性の治療などのことは言われていなかったため、自然治癒能力でもあるだろうと思えた。
 ならば当然、ディアボロスにもあるのではと聞く。
「たぶん対処してもらった魔性よりも、かなり早いスピードの回復力はあるね」
「他のスキルで気配を探るなどは可能だろうか」
「ううん、それも無理だね。ディアボロスばかり気をとられて、無理に倒そうとしないほうがいいよ。目的は“ベース”に、生贄の心臓を与えることだと思うからさ」
 ディアボロスも自ら戦うだろうが、それはあくまでも生贄を与えるまでの時間稼ぎに過ぎない。
 救出を優先したほうがよいと言う。
「やつには中級以上の力があるというのか。うぅむ、さらに過酷さが増しそうだ」
 おそらく目的の1つであることが、実行されては次の段階に進むだろうと考え、倒すことを優先するのは得策ではないと頷いた。
「固まって行動するのは危険かもしれないわ。ここまでしといて壁の向こうがザルなワケがないでしょ。複数に分かれ、互いにフォローし合って進んだほうがいいと思う。纏めて潰される事態だけは避けないと」
 何人かのチームで別れたほうがよいとグラルダが提案する。
「あと、砂嵐に関しては牢屋に入れてる奴を締め上げてみるのもアリだと思う。そもそも情報を持っているか、口を割るか分からないけど」
「―…えっと。最初に牢屋へ閉じ込めた者たちの内、何人かはもう…」
「もう…って?」
 表情をとんたんに暗くしてしまったエリザベートを見て首を傾げる。
「ぁ…なんでもないですぅ…。連れてきますね」
「俺も行こうか?」
 投獄されたとはいえ、魔法学校へ連れてくる途中で暴れて逃走される可能性もある。
 樹月 刀真(きづき・とうま)は同行したほうがよいかとエリザベートに言う。
「あ、はい〜。お願いしますぅ〜」
 エリザベートは投獄した者を連れてくるべく刀真と席を外した。



 時刻は正午近くになり、ようやくエリザベートと刀真が校長室へ戻った。
 連れてこられたボコールは、ワイヤークローで拘束されているようだ。
「1人だけ?」
「何にも連れてくるのは大変だからな」
 腕組をして眉を寄せるグラルダに、そう何人も連れてくるのは難しい告げた。
 不審行動をしていないか管理しなければならないし、逃走されては困るからだった。
「それもそうね、ありがとう。…さてと、尋問開始ね」
 グラルダはそう告げるとボコールに近づいていく。
「ガキの話し相手する趣味はないんだがな」
「あっそう。アタシも、雑談のために呼んだんじゃない。ある場所で、突然…砂嵐が起こったようだけど」
 刀真に膝をつかされている相手を冷ややかに見下ろす。
「ふぅ〜ん…それが?」
「知ってることがあるなら言いなさい」
「シラネッ♪」
 何も知らないという態度を取ってみせるが、“知っているが答えねぇよ”と言ったように思えた。
「言え。アンタらは、あれに何を隠した?」
 口を割らせてやろうと相手の髪を鷲掴んだ。
「興味あるのかぁ?」
「知る必要があるから」
「…災厄のタネ。消せねぇぞ、おめぇみたいなガキにはな」
「なら、芽吹く前に摘み取ればいい」
 そう言い放つと髪から手を離し、ティッシュでキレイに拭きゴミ箱へ投げ捨てた。
「アンタが言うタネとは、心臓。災厄はそれを待つベース、…違う?……フンッ、答えないか」
 返事を返さず、フードの奥から向けられる殺意の眼差しを感じ、だいたい当たりだろうと確信した。
 生贄の心臓を取られなければ、ベースは災厄として芽吹かないのだろう。
「最後に1つ。アタシでも黒魔術を扱えるか?」
「“今”を全て捨てて、堕ちればなぁ〜♪」
「捨てるですって?」
 せっかく手にしたものを手放さすことに躊躇いの色を見せる。
「じゃねぇと無理だな、無理ッ」
 黒魔術は祓魔術と真逆の精神を要求される。
 マイナスの力を得るには、プラスの力を捨てなければならいと告げた。
「だから?」
「くくく…っその顔、こっち向きなんじゃねぇ♪」
「こいつ!」
 黙らせようと刀真がワイヤークローを引き、締めつけようとした時。
 パァンッと黒フードの頬が鳴った。
「私の生徒を侮辱することは許さないですぅう!!」
 邪道の道へ誘おうとする者に、エリザベートが激怒して叩いたのだった。
 誰よりも真っ先に手を出した様子にグラルダは、驚いたように目を丸くする。
「グラルダ、あなたはこれを予想できましたか?―…でしょうね」
「いえ…」
 シィシャ・グリムへイル(しぃしゃ・ぐりむへいる)に聞き取りづらい小さな声音で言い、かぶりを振った。
「怒ってくれる人がいるうちは花です。よかったですね」
 パートナーがなぜ聞いたのか、彼女にはその理由が分かっていた。
「貴女が考えている程、その力は容易に御せるものではありませんよ」
 悲しみや憎しみしか生まないその術。
 手にしてすぐに扱いきれるものではない。
 むしろ支払う対価のほうが大きいと告げる。
「言うべきことはまだありますが。今は、やめておきます」
 ここでグラルダに告げられることはないと言う。
 思い悩むように彼女は、顔を俯かせて黙ってしまった。
 捕縛したボコールへの尋問が終わり、エリザベートは刀真と共に再び投獄すべく魔法学校を出た。