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理不尽世界のキリングタイム ―デブリーフィング―

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理不尽世界のキリングタイム ―デブリーフィング―

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第十一章 擦り付け合いという名の本編、やっと開始

「ふーむ、色々と意見が集まりましたね」
 ななながホワイトボードを見て満足げに頷く。
 ホワイトボードに書かれていたのは『失敗した原因は一体なんだったのか。後契約者はいたのか』というタイトル。その下には箇条書きで色々と書いてあった。
 以下、その箇条書きである。

・ZAPZAPって言って殺し回る奴がいたから(多数)
・コミーがいたから
・悪の秘密結社がいたから
・武器使えるって怪しくね?
・後兵士とかから武器奪ってた奴怪しくね?
・我以外契約者
・【協力し愛】とか愛が足りない
・ハデス

「じゃあざっくりとまず名指しされてるので容疑者ハデスから始めましょう」
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス(どくたー・はです)!」
 なななに指名されたハデスが高笑いを上げる。
「ご、ご主人様……じゃなかったハデス博士! そんな笑ってる場合じゃありませんよぉ!」
 ヘスティア・ウルカヌス(へすてぃあ・うるかぬす)が慌てて縋りつくが、ハデスの顔からは余裕は消えていない。
「慌てるなヘスティア……さぁて、この天才科学者である俺を疑った愚か者は一体何処のどいつだ!?」
「あーそれあたし」
 ラブが挙手する。
「今も言ってたけどさ、世界征服企むとか悪の秘密結社とかいっつも言ってるじゃん。何で捕まらなかったのか不思議でならないのよ」
「そ、そうじゃそうじゃ! それに秘密結社の奴は毎回事あるごとに邪魔をしているのじゃ!」
 カスケード・チェルノボグ(かすけーど・ちぇるのぼぐ)もハデスを指さした。
「フハハハ! 言いたい事はそれだけか!?」
 そこまで言われて尚、ハデスの顔から余裕は消えていない。
「良かろう、ならば俺達が契約者ではない事を証明してみせようではないか! なななよ、再度VTRを頼む!」
「許可しましょう。具体的にはどの場面を?」
「そうだな……」
 ハデスは少し考える仕草を見せ、再現場面を指示する。
 指示した場所は入り口、研究室、所長室入り口、所長室でのシーンである。
「よく観るがいい。俺達は何処だろうと研究所を守ろうとしているではないか。研究所を守ろうとしていたのは我らオリュンポスだけ! つまり、我がオリュンポスは反逆者に非ず! 立ち向かってきたこの者達こそが反逆者なのだ!」
 確かに、VTRではハデスは研究所員の味方に立っている場面が多い。
「あんた思いっきり研究員をテロリストって呼んでるじゃない」
 じとっとした目でラブがハデスを睨む。
「それに警備員に後ろから撃たれたりしとるんじゃが、味方とは思えんがのぉ」
 同じようにカスケードもハデスを見る。
「気にするな、些細な事よ!」
 些細な事とは思えないが胸を張るハデス。
「凄いですご主人様!」
 パチパチと手を叩くヘスティアに、「そう褒めるでない」と胸を張るハデス。
「成程……ところで容疑者ハデス。一つ聞きましょうか」
「うむ、何だ?」
 なななに胸を張ったままハデスが頷く。
「貴方は研究所を守ろうとした、と言いましたが……何時私が『研究所を守れ』と言いましたか?」
「……え?」
 ハデスの顔が凍りつく。
「何も言っていないのに研究所を守るというのは『任務に非協力的な態度』と見て問題ありませんね? 与えたチャンスを棒に振るとは、契約者と判断しますが」
「は、ハデス博士?」
 ヘスティアが不安そうにハデスを見る。
 凍り付いた表情のハデスは、やがて一つ笑みを浮かべてこう言った。
「……その件については頭からすっぽ抜けていた」
「というわけで契約者ハデスは処刑です」
 直後、ハデスが「ぬわーっ!」という悲鳴とともに爆発した。残機が無い為復活は出来ず、ガメオベラとなった。
「は、博士ぇーッ!?」
 ヘスティアが駆け寄るが、残ったのは塵芥。最早ハデスの影も形も無い。
「ふっふっふ、反逆者は滅びる運命なのよ〜♪」
 散ったハデスを見て、ラブが勝ち誇った表情になる。
「ああ、ところで容疑者ラブ。貴方にも反逆者の容疑がかけられているのですが」
「……え?」
 勝ち誇った表情は、一転して凍り付いた物となる。
「いえ、先程イラッとしてうっかり爆破した貴方のパートナーですが、休憩室で自分の事を契約者と名乗っていたではないですか」
「……ちっ、あのポンコツ余計な事を……!」
 ラブが露骨に顔を顰めて舌打ちする。
「け、けどあたし自身が言ったわけじゃないわよ! それにあたしが反逆者なわけないじゃん! あたし、アイドルなんだよ!?」
「容疑者ラブ、貴方が口走っていた【恐れの歌】とは一体なんでしょうか?」
 ラブが言葉に詰まる。流石にスキルまで口にしていたとなるとアウトだ。
「何か言いたい事があるならどうぞ」
「うっかり言っちゃた♪ てへぺろ☆」
 直後、ラブが爆発した。流石にこれは擁護できなかった。勿論残機は無い為、復活する事も無かった。