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無人島物語

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第四章:俺の雅羅がこんなに裸なわけがない


「やあ、無人島だね。まあ、雅羅があの船に乗っていた時点で、こうなることは予想していたけど」
 この島にやってきていた城 紅月(じょう・こうげつ)は、海を眺めながらのんびりしていた。
 姉の城 観月季(じょう・みつき)に誘われてあの船に乗ったのだが、甲板であの災厄少女雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)と出会ったとき、すでに泳ぐ準備が出来ていたくらいだった。どんなことが起こっても全く問題はなかった。
「紅月、暇ですわ」
 その観月季が、早くも飽きた口調で不満を言う。日差しが強い。
 難破で服が破れ、観月季のメロンサイズの胸が少しはみ出していた。台風一過の直射日光は観月季の真っ白な肌にはよくないかもしれなかった。
「いやですわ。お肌が小麦色になったらどうしましょうか」
「それはそれで魅力的だとは思うよ」
 紅月は苦笑しながら答える。
「ネタは探せばあるよ。そう、雅羅ちゃんの傍にはネタがいっぱい」
 いつも楽しい出来事を運んできてくれる雅羅なら、ここでも紅月たちを飽きさせてくれないはずだった。
 思い出したように観月季は尋ねる。
「そういえば、雅羅はどこへ行ったのでしょうか?」
「気になる?」
「もちろんですわ」
「なら探しに行くしかないね」
「他にやることありませんものね」
 観月季は、愛読書の『魔乳狩人・愛憎判』を遭難中になくしてしまっていた。もちろん、家には保存版がまだ数冊あるが、暇なのは暇だった。
「じゃあ、行こうか」
 紅月はさっそく捜索に動き出す。
「ちょっと怖いですわ。何がいるかわかりませんもの」
「俺を誰だと思ってるんだい? 大丈夫だよ」
 紅月は力強く微笑んだ。武器がなくても無問題だった。彼自身が凶器なのだ。向かってくる敵は全て倒せばいいし、その力もあった。
「そうですわね。頼りにしてますわよ、紅月」
 観月季は微笑みながらついていく。
 雅羅の捜索が始まった。
 さて、彼女はどこに……?

 一旦、場面を移そう。



 
 波間にピンクの海草が漂っていた。
 いや、それはよく見ると海草ではなくモヒカンだった。
「リア充が襲撃されたらしい。奴等は本気ってわけか。やばいな、俺様、襲撃されたらどうしよう? 何しろ、これから雅羅とリア充になるわけだからな」
 ちゃぽん、と海面から顔を出したのは、パラミタ実業からやってきたピンクモヒカンゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)だった。ピンク髪の美少女はヒロインだが、ピンクモヒカンは悪党だった。島の様子を伺いながらそろりと接近していく。
 先ほどから、海面から島をぐるりと一回りして見回ったところ、漂着してきたメンバーは、まだ雅羅を発見できていないらしい。それはわかっていた。いつでもすぐに突撃するあのゲブーがここまで慎重なのは、今日はとても大切な日だからだ。
 彼が脳内嫁認定する雅羅と子作りをするのだ。モヒカン軍団ぐらい子供が作りたいので、誰にも邪魔されたくなかった。
「ふふ……、俺様、案外デリケートだな。そんなことじゃ、雅羅に嫌われちまうぜ」
<……>
 言葉のない返事が返ってきた。
 波間に漂うゲブーに、頑張れと肩をぽんと叩いたのは、この海で捕まえた巨大タコのタコリマだった。天御柱学院校長のコリマ・ユカギールにハゲ頭が似てたので命名したのだが、そのおかげで愛着が沸いていた。喋らないところもコリマそっくりだ。彼ならきっとやってくれるはずだった。
 そのタコリマのタコセンサー(?)と、ゲブーのモヒカンレーダーが同時に反応した。
 なんということか、誰も見つけられなかった雅羅を、彼が見つけたのだ。
「おお〜、浜辺にいるじゃないか。新妻気分で俺様をお出迎えかよ。……ちょっとテレやがるぜ」
 ゲブーは、なるべく夫らしく威厳を込めてがははは……! と笑った。
 これまでとは違い、猛烈な速さで浜辺へと接近していく。
「俺様が波にさらわれ海モンスターと戦い苦労している間におっぱい磨いて待ってやがったか!」
<……>
 タコリマも賛同してくれた。死なばもろともと、ゲブーの後をついてくる。
 ゲブーが誤解をするのも無理はなかった。
 ようやく浜辺で見つけた雅羅は。
 全裸だったのだ。