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リアクション
第五章 ゴーレム退治
浜辺。
「……何やってんだ」
水着の上にパーカーを羽織った斑目 カンナ(まだらめ・かんな)が双子を見ながら言った。
「よし、泳ぐ前の準備運動にゴーレム退治をするよ。カンナ、学人」
水着姿の九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)はゴーレム退治に乗り気。
「……いいけど」
と、あっさり。本日のカンナは、暇だったため付いて来たという普段より付き合いが良い。
「え、僕も? 調薬友愛会に興味があったんだけど」
目的の所に行こうとしていた冬月 学人(ふゆつき・がくと)はローズの言葉に足を止めた。
「ぱぱっと終わらせば、大丈夫」
ローズはいとも簡単に言ってのけ、学人を引き込む。
「……ぱぱっとね」
学人は巨大過ぎるゴーレムを見て溜息。どこをどう見ても簡単に終わりそうには見えない。
「あれが動く砂の城だったら面白かったのにね」
ローズは楽しそうに余計な事を口走った。
「あの二人に聞かれたら作ろうとするから黙っておいてよ」
と学人はツッコミを入れた。
「だね。さて熱中症にならない程度に頑張る予定だけど。学人、水着に着替えた方がいいよ。絶対に汗だくになるから、カンナも」
ローズは医学の心得がある者として二人の格好が気になったらしい。
「……それは絶対に嫌だ」
いつものインバネスコートに長袖シャツにスラックスの学人は即答した。なぜなら二人に比べて筋肉がついておらず情けないから。
「あたしも脱ぐつもりはない」
カンナも断固拒否。こちらは胸のサイズが悲しいから。
「そこまで言うなら仕方無いか。それじゃ、行こう!」
ローズは諦め、二人のお供を連れてゴーレム退治へ。
「どうやら、バカンス終了だな。こりゃ」
シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は見慣れた光景に慌てる様子は微塵も無かった。
「本当に懲りませんわね。まるで誰かさんを見ているようですわ」
リーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)は視線を双子からシリウスに移動させ、意味ありげな事をつぶやく。
「おいおい。今回は教師らしい事をするぞ」
リーブラの言外の意を知ったシリウスはツッコミを入れた。
「……少し不良ですけどね」
リーブラはまたまた悪戯な笑みで余計な一言。
「リーブラ、一言多いぞ。とにかく、オレは終わるまで見守ろうと思う。失敗から経験を積んで貰いたいからな。今回は正しい意味での教育をする」
シリウスはまたまたツッコミを入れてから打ち合わせを始める。
「それでは説教はシリウスにお任せして、わたくしは周囲に迷惑がかかりそうな時の手助けをしますわ。出番がなければいいのですけど」
リーブラはどんどん立派になっていく砂の城を見ながら言った後、現場に移動した。
リーブラと別れた後。
「……これだけ人がいりゃすぐに片付きそうだな」
シリウスはのんびりと双子とゴーレムと戦う猛者達を見守りつつ出番を待った。
「夏だ! 海だ! 遊ぶよ!」
鷹野 栗(たかの・まろん)は白い砂浜と青い海に大はしゃぎ。
「……と、勉強もしないとね」
ふと栗は素材収集に来た事を思い出し、落ち着きを取りも出した。
「あれは……噂でよく耳にする双子だよ、羽入」
栗はゴーレムに追いかけられている双子を発見し、指をさしながら隣の羽入 綾香(はにゅう・あやか)に話しかけた。
「そうじゃな。しかも、ついに……ついにこの時がきたのじゃよ……」
綾香はすでに発見し、テンションが高くなっていた。
「羽入?」
「イルミンスールに居ながら、何だかんだと剣術に励んでおったが、とうとう魔術の研究をする最適な場が、いま此処にあるのじゃ!」
様子を窺う栗に綾香は感極まる様子。普段は大人びいた言動だが、魔法が絡むと羽目を外す事があるのだ。
「研究なら普段でもしてると思うけど」
栗がツッコミを入れた。何せ栗達は双子と同じ学校所属なので魔法系の研究は好きなだけ出来る環境にあるのだ。
「いやまあ、そうじゃが、こう、周囲を巻き込んで大々的という意味でじゃ」
綾香は栗の言葉に少しテンションを落ち着かせた。
「つまり、あれの退治をするんだね」
栗は綾香の発言からゴーレム退治に加わる事を察した。
「そうじゃ、薬の効果を無効化にするのじゃ」
「私は砂の城に近付かないようにゴーレムの注意でも引くよ。まぁ、周囲の行動を色々調べつつだけど。お城崩しちゃいましたじゃ校長先生の雷が落ちるからね。多分、文字通りに」
二人はゴーレム退治の打ち合わせをした。
打ち合わせ終了後。
「……どうやら私と同じ目的の者がおるようじゃ。行って来る」
綾香は近くで自分達と同じ目的を持った者を発見した。
「分かった。それじゃ、また後で」
栗は砂の城に行くためにここで綾香と別れた。
浜辺。
「遊びに来たはずなのですが、なんだか、大変な事になってるですよー!」
エリザベートと共に遊びに来たオルフェリア・アリス(おるふぇりあ・ありす)は双子達に気付き、声を上げた。
「判りやすい絵づらで何よりですね」
ミリオン・アインカノック(みりおん・あいんかのっく)は皮肉りながら双子を眺めていた。
「ミリオン、オルフェと一緒に助けに行くですよ! 困っている人が居たら助けてあげるのが世の常なのですよー」
優しいオルフェリアは可哀想な双子を助けに行かねばと武器として『光条器』であるお玉を取り出した。
「オルフェリア様、それは」
対ゴーレムに使用する武器だと分かりながら念のため訊ねるミリオン。
「ふっふっふ、このオルフェのお玉でゴーレムさんなんてぼこぼこにしてやるですよー」
意気揚々とオルフェリアは意味が判っていないまま無茶な事を言い出す。
「……オルフェリア様、別の方法はありませんか?」
ミリオンは冷静に対処。さすがにお玉では危険だと思うので。
「別の方法……えっと、じゃあ、オルフェは空からゴーレムさんの相手するです。ミリオンはどうするですか?」
一生懸命考えたオルフェリアはお玉から空飛ぶ箒ファルケに取り替えた。
「的当て程度には頑張ってみます。撃っても再生して無駄な気もしますが」
ミリオンは覚醒型念動銃を構えた。
それぞれ空と陸に別れてゴーレムの相手をするべく向かった。
「あの二人またやってる。懲り無さはやっぱり噂通りだね」
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は未来体験騒ぎで知り合った双子の様子に笑いをこぼしていた。
「暑いのに元気だなぁ」
美羽は妙な事に感心していた。何せ双子の頑丈さは噂で知っているので慌てない。
「このまま放っておくのも可哀想だし助けに行こう。終わったらお礼にたっぷりと御馳走して貰わなきゃね」
美羽は見学をやめて憐れな双子を助けるべく急いだ。
「アーデルさんが面倒事を引き受けているのに遊ぶというのは何だか気が引けますね」
ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)は意中の人が今も学校で忙しくしていると思うと落ち着かない。
「……というか遊べそうにないですね。注意をしに行かないと……ってあれは」
ザカコは巨大なゴーレムを発見し、しっかり監督しようと現場に向かおうとして足を止めた。なぜなら相手が見知った双子だったから。
「……はぁ、多少羽目を外す程度なら大目に見ようと思っていましたが、さっそくアレですか……どこまでも大人しくできないんですね」
ザカコは溜息をつき、どっと疲れを感じつつも現場に向かった。
「いつも通りだから驚きはしないが、本当にさらっと凄い事しているな」
酒杜 陽一(さかもり・よういち)は遠目に巨大なゴーレムに追われている双子を眺めていた。
「……今までの事から今回もどうせへこたれないんだし、いっそのこと行き着くところまで放っとけばと思うけど」
双子をよく知る陽一は双子が泣き叫ぶような事をさらりとつぶやいた。
しかし、問題は双子ではなく巨大過ぎるゴーレムが周囲の迷惑になっている事。それがなければ本当に放置でも構わないのだが。
「……さすがにダメだよなぁ」
双子ではなくゴーレムの被害者が出てはいけないと陽一はゴーレム退治に向かう事に。
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