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 砂の城周辺。

「ゴーレムが接近した場合はお任せ下さい。絶対に破壊はさせませんわ」
 リーブラは城作製者達に声をかけた。
「お願いね。すごく素敵な飾りを刻む事が出来たから」
 詩穂は作業の手を止めずに言った。
「まぁ、破壊されたらあの二人に造らせたらいいわ。物作りが好きだから喜んでするわよ」
 セレンフィリティは破壊される事も気にしていない。そうなったらなったで処理をすればいいので。
「そうだろうけど、させたらさらなる大惨事が起きるわよ」
 セレアナは作業をしながらセレンフィリティにツッコミを入れた。
「そちらはどうですか?」
 リーブラは自分よりもずっと前衛で守護している栗に訊ねた。
「大丈夫です。もし接近したら出来るだけ遠ざけるようにしますから」
 栗は一言リーブラに答えてからじっと双子の騒ぎを眺めていた。
 そして、
「相手が相手だけに凄いですね。巨大化したり凍らせたり賑やかで……百聞は一見にしかずです。眺めているだけで楽しくなります。あのゴーレムに何か法則でもあるのでしょうか」
 栗は楽しそうに感想を洩らした。同学ながら双子を生で見るのは今回が初めてで当然騒ぎに巻き込まれるのも初めてのため楽しくてたまらないのだ。
「法則は分かりませんが、どんなに粉砕されて邪魔されても明らかに双子を狙っていますわね」
 リーブラはずっと観察した中で気付いた事を話した。
「作製の過程で何かしたのかもしれませんね。やり過ぎか何かの影響など」
 栗はリーブラの答えから原因について推測する。ちなみに正解だったりする。
 それなりに平和に過ごしていた時、危機はやって来た。

「ちょ、まずいぞ、キスミ。この先って」
「校長の城が!!」
 双子がゴーレムと共に突っ込んで来たのだ。

「やはり来ましたわね」
「注意を引きますから、その間に避難して下さい」
 栗は双子に言うなりレッサーワイバーンやミニキメラと共にゴーレムの周囲を動き回りつつ『チェインスマイト』で続けざまに両足を攻撃する。双子はこの隙に逃げる。
 攻撃するのは栗だけでなく
「転倒させて大人しくさせるでありますよ!」
 吹雪の『五月雨撃ち』も加わり、両足が崩れて前方に倒れようとする。
「まずいですわね」
 砂の城の守護をするリーブラがゴーレムに駆け寄り、『金剛力』で全力で突き飛ばし、城を守った。
「吹雪!」
「む、やったか」
 追い付いたコルセアとイングラハムが登場。
「城が破壊されるところでありました」
 吹雪は半分ほど粉砕したゴーレムを指し示しながら言った。
「そうね。もし破壊されたら双子の仕業にしとけばいいんじゃない」
「それで皆納得するに違いないであります」
 とんでもない事を言うコルセアに迷い無く賛同する吹雪。
「何だよ、それ」
「ねつ造だぞ!」
 吹雪達の発言に怒る双子。
「……ねつ造というか。我の屋台を破壊した原因はどちらにあるか」
 被害者であるイングラハムがドスの聞いた声で双子の背後から現れた。
「うっ」
 慌てて振り向くなり後ずさった。
「間違い無くあなた達よね」
 とどめにコルセアが厳しい言葉を突き刺す。

 その時、
「再生しますよ」
 栗が騒ぎがまた動き始めた事を皆に伝えた。
「やはり、薬の効果を無効にした方が解決が早いかもしれませんわね」
 とリーブラ。
「完全に再生する前にここを離れた方がいいと思いますよ」
 栗が城の方を見ながら言った。
「そうでありますよ! ほら、向こうに向かって走るでありますよ!」
 吹雪は機晶スナイパーライフルの先で双子を突きながら走るように指示する。
「ちょ、突くなよ! いつ中和剤が出来るんだよ」
「いつまでオレ達こんな事すりゃいんだよ」
 自業自得というのにもう弱音を吐く双子。
「……文句を言う元気が無くなるまで走るしかないわね」
 コルセアは呆れながら言った。堪らないのは双子ではなく巻き込まれた方だ。
 吹雪達は双子と共にゴーレムを連れてこの場から離れた。
「……頑張って下さいませ」
 リーブラは無事を願いながら見送った。

 城から離れた場所。

「それじゃ、俺達はここにゴーレムをおびき寄せて来るから。準備は頼むよ」
 竜斗は離れた先に城から出発した双子を発見し、お迎えに行く事にして後の事をザカコと陽一に任せる事にした。
「任せて下さい。来るまでには何とか整えて起きますから」
 ザカコは氷の足場作製を始めた。
「俺はここで待機をしておくよ」
 陽一はこの場に留まる事にした。
「マスター、武器持ってないから私が武器になる。相手は大き過ぎるから切れるか分からないけど」
「いや、頼りになるよ、ロゼ」
 ロザリエッタの控え目な申し出に竜斗は笑顔で返した。
「……頑張る」
 ロザリエッタは鉤爪付きのガントレットに変形し、竜斗はしっかりとどんな武器よりも心強いロザリエッタを装備した。
「行きましょう、これ以上他の皆さんに迷惑がかからないうちに」
 ユリナも急いで竜斗に続き、
「頑張って連れて来るですよ」
 史織は元気にザカコと陽一に言ってから竜斗達に付いて行った。

 ゴーレムと対峙。
「燃やしてみましょうか」
「私は雷を落とすですぅ」
 ユリナが『パイロキネシス』で右腕を焼き、史織が『雷術』で左腕に雷を落とし、腕の機能を奪った。
「私も加わろうかの」
 綾香が『絶零斬』で足元を凍らせた。
 ゴーレムが少し動きを止めている間に
「二人共、悪いけどこのまま囮としてあちらまでゴーレムを呼び寄せてくれ」
 竜斗は双子の元に行き、作戦内容を手早く伝えた。
「海にか?」
「何か攻撃とか喰らってもあいつオレ達ばっかり狙うし」
 少々疲れ気味に双子が竜斗に訊ねた。
「中和剤の完成と効果を切らせるための時間稼ぎのために頼むよ」
 竜斗はゴーレムの様子を確認しながら言った。
「分かった。行くか、キスミ」
「おう」
 早く休みたい双子は竜斗の指示通り動く事にした。
「ゴーレムは俺達が何とかするから気にせず誘導してくれ」
 竜斗は、武器化したロザリエッタを構えながら言った。
「おう」
「あっちだな」
 双子は走り始めた。

 浜辺。

「もう少ししたら来るが、出来は?」
 陽一は双子の動向を監視しつつ作業をするザカコに訊ねた。
「あと少しです。そう言えば、あの二人をどこか安全な場所に避難させないといけませんが」
 ザカコは『アプソリュート・ゼロ』で浜辺から海上に続く足場を作製しつつ双子の安全確保について訊ねた。
「それは俺がするから任せてくれ」
 考えがある陽一はあっさりと引き受けた。
「分かりました。完了です」
「丁度、来たみたいだ」
 ザカコの作業が完了すると共に陽一はこちらに来るゴーレムを迎え撃つ準備を始めた。

「氷?」
「あそこを通るのか?」
 双子は前方に見える氷の足場に驚き、背後で自分達を守る竜斗達に訊ねた。
「そう、そのまま真っ直ぐ行くんだ。安全の方は心配しなくてもいい。俺達が必ず守るから」
 竜斗はゴーレムを警戒しながら双子に指示を出しつつ不安を払拭する。
「……分かった」
「行くぞ、ヒスミ」
 双子は竜斗の言葉を信じて氷の足場へ踏み込んだ。ゴーレムは双子に続く。竜斗は浜辺で待機。
「よし」
 ゴーレムが目的の場所に来たところで陽一が動き始める。まずは双子を避難させる事。
 陽一は巨大化カプセルで巨大化し、
「ちょ、おいぃぃぃ」
「な、何だよぉぉぉ」
 双子は慌て声を上げる。
 なぜなら巨大化した陽一が双子をつまみ上げ、陸の方に放り投げたから。
 双子をキャッチしたのは密かに待機させておいたビキニパンツ一丁の特戦隊。
「そのまま安全な場所まで避難させてくれ。向こうにでも」
 陽一は何かを発見するも何も言わず、特戦隊に避難場所を指示した。
「ちょっ、降ろせって」
「……何かとてつもなく嫌な予感がするぞ」
 双子は特戦隊に背負られ、周囲を警戒されつつ安全な場所へと導かれた。

「……相変わらず勘はいいな」
 陽一は双子が洩らした言葉に意味有りげにつぶやいた後、浜辺から行動を開始する。
「粉々にするか」
 陽一は漆黒の翼を刃に変形させ、ゴーレムを粉々にしてから氷の足場を崩した。
「念のために奥の手を使うですぅ」
 史織が落下するゴーレムに対して『氷術』を使い凍らせた。
 巨大化が解けると同時に漆黒の翼で飛翔し、海面に終焉剣アプソリュートを突き立て凍らせて自分の仕事を終わらせ、陸に帰還。

 しばらくゴーレムは凍った海中で大人しくしていたが季節が夏だけにゆっくりと海面は解け、ほんの隙間から泥状態のゴーレムが陸に上がって来る。
 効果を切らせる事は出来なかったが、随分時間稼ぎが出来たため、中和剤は完成し届けられた。
「あ、あの薬が完成しました」
「ゴーレムの姿が様変わりしているな」
 中和剤を持ったリースとカシスが駆けつけた。
 陸に上がった泥は形を整え、動き始める。完全に体が乾いていないのか動きは鈍い。
「あぁ。早く薬の方を頼むよ」
 陽一は薬散布を急かした。
「リース、中和剤を貰うわよ」
 とマーガレット。
「オルフェも手伝うですぅ」
「あたしも手伝うよ!」
 オルフェリアと梢も手伝いに名乗り出た。
「あ、はいお願いします」
 リースは大量にある中和剤を三分割して散布を任せた。
「……どうなるのか見学だ」
 カシスは静かにゴーレムの観察を始める。このために様子を見に来たのだ。
「散布のために注意をこちらに向けますよ」
 ミリオンは銃撃でオルフェリアの援護をする。
「少しでも動きを止める事が出来れば何とかなるでしょう」
 これと言った弱点が分からないためミリオンは『銃舞』で回避し、手足や胸を撃ち抜き、動きを鈍らせるが、再生は絶えずし続ける。
「さっさとリースが作った薬を飲むのよ」
 ルゥルゥは下僕にゴーレムを攻撃させ散布役のために頑張る。