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影を生む妖刀

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影を生む妖刀

リアクション

 エピローグ

「さあ、て。これで当分は破れまい。ふふふ、イルミンスールの威信を賭けた多重結界じゃ。ちょっとやそっとじゃ揺らぎもせんわ」
 実喰がその力を収めた時、消えなかったすべての影は実体を取り戻し、あるべき姿に戻った。だが影と化した変異種や、野生動物の一部は溶け落ち、戻ることなく実喰の養分となったようだった。
 契約者達は村の者らに礼を言われ、今度は転送陣を使わずに地道に帰ることとなった。封印が再び成った今、イルミンスールとをつなぐ回廊は断たれたのだ。今はその準備と、後始末を行っている最中だ。再び倉庫に安置された実喰はアーデルハイトの手によって厳重に封印され、今はアクリトやエイラ、リィの目の前で静かに横たわっていた。
「ありがとうございます。皆様に本当に、なんとお礼を言っていいか……」
「なあに、私に関しては礼は要らぬよ。お前達のためだけではないからの。さて」
 アーデルハイトの眼がすっと細められる。
「この結界、外部からの干渉がなくば恐らくはお前たちが子を成すまでもつじゃろう。だが、雨垂れは石を穿つものよ。やがては封印が解け、命を賭けなければならぬ時が来るやもしれん。そのためにお前たちがいるのだからのう」
 そこで一度アーデルハイトは言葉を切った。二人の瞳の輝きに揺らぎがないのを見て取り、再び続ける。
「お前達が望むなら、この封印を壊すと良い」
「え……?」
「決着をつけるなら、そうせよ、という事じゃ。下らない血筋に縛られ、いつか来る命を賭した戦いに怯えながら暮らすことに飽いたのなら。そしてそれをまた子へ伝える事に耐えがたくなったのなら、言うがよい。なあに、お前達にその気さえあるなら、戦えるじゃろうて」
 目を瞬かせる二人に、アーデルハイトは笑いかけた。
「では、行くかの。達者でな。また会うことになろうと、二度と会わぬことになろうと、後悔のない選択をな」
「あ、ありがとうございました!」
 アーデルハイトは手を振り、二人に背を向ける。アクリトもそれに続こうとして、ふと足を止めた。訝るエイラの胸元に埋め込まれた、淡い緑の結晶を一瞥し、踵を返す。
 その一瞥には、真理を求める者の、知識に対する冷たい欲望が込められていた。

担当マスターより

▼担当マスター

宇賀野美也

▼マスターコメント

 こんにちは、宇賀野です。「影を生む妖刀」のリアクションをお届け致します。
 いかがでしたでしょうか。今回はまたバトル面で凝ったアクションを投稿なさる方も多く、ああ、この演出熱い! と思いながら楽しく書かせて頂きました。

 最初は二三回で終わらせるつもりだったこの話、もう二回分を使ってしまいました。皆様のアクションからヒントを頂くことも多く、この人のこの活躍がなければこの展開はありえなかった、というような流れも多々あります。皆様と共に物語を作ることの楽しさをほとほと実感させて頂いている次第です。

 さて、それではまたご縁がありましたら、どこかの世界にて。
 お会いできる日を楽しみにしております。