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【原色の海】樹上都市の感謝祭

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【原色の海】樹上都市の感謝祭

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第7章 パーティの中で


「今日はやっと樹上都市さんまで行けるの! しかも、何か感謝祭さんやるらしいの! これはもう、探検するしかないと思うの〜!」
 及川 翠(おいかわ・みどり)が人差し指を立てて、勢いよく宣言した。
 そう、探検したい、という提案よりはもう決め込んでしまっているのが傍から見てわかるほど、キラキラ期待に目を輝かせているのだ。
 落ち着いた笑顔で徳永 瑠璃(とくなが・るり)が、
「へぇ〜、樹上都市さんで感謝祭さんをやるんですね……面白そうです、行きましょう!」
 と頷けば、サリア・アンドレッティ(さりあ・あんどれってぃ)も、
「えっ、樹上都市さんっ!? この前いけなかったし、私も行きたいっ!」
 と、言い出して。
(これはもう決まったも同然ね)
 年長のミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)はあからさまにワクワクした、幼い三つの顔に期待を込めて見つめられて口を結ぶ。
 ……嫌じゃない。嫌じゃないんだけどみんなもう少し大人だったらなあとミリアは思うのである。お出かけの度にひと苦労、まるで保育園の先生の気分。
「……翠、樹上都市に行くのは良いけど勝手にどっか行ったりしちゃダメよ?」
 一応釘を刺し、渋々頷くと、わーいっとみんなもろ手を上げて喜んだ。
 本当に聞いているのかなぁ、とミリアは不安が拭えない。
(翠って好奇心で勝手に色々やっちゃう事あるし……なんだか好奇心刺激されまくってるみたいだし、今日は一日翠を見張ってないとダメかしら、これ……)
 ミリアは気合を入れて「子供軍団の引率」になって樹上都市に向かったが、船から見える樹上都市の景色ではしゃいで、降り立ったときにまたひと騒ぎしたので、だんだん不安になってきた。
「じゃあ、しゅっぱー……」
「待ちなさい、翠!」
 早速走り出そうとする翠の首根っこをミリアは掴んで引き戻すと、しっかり目を見て低い声で告げた。
「一緒に行くって言ったでしょ。私から離れないで」
「は〜い……」
 それからサリアと瑠璃を見て、
「サリアは何があっても瑠璃と手を繋いで、一緒に行動すること。瑠璃、悪いんだけど翠で手いっぱいになりそうだから、よろしくね」
「はい」
 ミリアは好奇心のままに突進しない、比較的落ち着いた瑠璃にそう念を押すと、それじゃあまずは全員で衣装を借りに行きましょうと提案した。
「えっ!? 仮装していいの!? どこどこ?」
「だからもう、走らないのっ」
 言った側から翠が飛び出そうとする……これは苦労しそうだ。
「よーしっ、探検に出発ー!」
「勝手に行かないー!」
 ぶつからない、身を乗り出さない、ジャンプしない、○○しない尽くしで注意をして、着替え終わった時には既にミリアは疲労を感じていた。
 変なところに入り込んで怪我したり邪魔したり挟まれたりしたら、シャレにならない。皆にとって初めてだし、特にここは高さがあるから、下が海面でも落ちたら結構痛そうだ。
 サリアは瑠璃の手をちょいちょいと引っ張って、あちこちに連れまわした。お菓子を食べたり、手品を見たり、コーラスを聞いたり、ぬいぐるみをお土産にしたり。
 翠といえば、樹の螺旋階段の手すりを滑り降りたり、蔓を登ったり、まるでサーカスかアスレチックの公園にしている。流石に樹で組まれて上に葉を乗っけた家の庇に、それと気付かず飛び降りようとしたときはミリアも慌てたものだった。
「ほら翠、あっちにクレーンゲームがあるわよ」
「本当だ! やりたいー!」
 駆け出す翠はクレーンゲームの置かれた一角に飛び込んだ。行先が分かっていると安心するわね、とミリアは思う。
 クレーンゲームのコーナー。ヌイ族の族長が用意したそのひとつには先客がいた。
 一人の男の子が真剣な瞳でアームの動きを見つめている。アームが掴んでいたのはピンクのカバのぬいぐるみだったが、横にスライドする度に重みで揺れて、ずり下がっていく。
「……うーん、もうちょっと……あっ」
 つるり、カバが滑り落ち……幸運にも、タグがアームに引っかかった。
 最後の衝撃と共に出口に無事に落ちていったぬいぐるみを、少年――コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)は屈んで取り出すと、
 取れたぬいぐるみをだっこして、隣の女の子……恋人に手渡した。
「はい、あげるよ」
「ありがとう! 大事にするね!」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)はカバをほっぺたに近づけるとにっこり笑う。
 春の花をモチーフにした明るい色調と、花のように大きく広がったスカート、随所に花飾りを着けたドレスで、普段より一層可愛く思えた。美羽がいる所には、そこだけ春が訪れたような、春の花畑を思わせるような雰囲気になる。
 コハクはぼーっと見とれてしまった。
「……どうしたの?」
「あっ、うん、美羽があんまり可愛いから……」
 コハクは赤い顔で俯くと、照れ隠しをするようにわざと大きな声を出した。
「そっ、それより! 次はお布団を見に行こうか。……あっ、あのね、変な意味じゃなくて昼寝用の……」
「うん!」
 お昼寝布団の販売コーナーを眺めながら、
「これには守護天使やヴァルキリーの羽なんて入ってないよね」
 と冗談を言って、以前、ヴォルロスで起こった事件のことを思い出す。
「あの時は大変だったね。まさかもっと大きな事件がここで起こるとは思わなかったけど……」
「こうやって楽しんでいていいのかな?」
 レベッカの今後、ジルドのこと、この街の復興、ヴォルロスの修理……まだいろいろと問題はあるのだけど。
 でも、二人が関わってきたのも、一部だから。もっと細かいところは住人の仕事だし……。
 美羽は空いた手でコハクと手を繋ぎ、コハクの顔を見る。安心させるように、頷いた。
「あとは百合園のみんなに任せておけば大丈夫じゃないかな」
 顔を見てにっこり笑った。コハクはうん、と頷く。
 そしてお花の蜜のジュースを持ってきて、
「本当にお花畑みたいだよ」
「ありがとう」
 今はもう秋の足音が近づいているけれど、春のお花畑みたいに、この街にも希望が萌え出てきますようにと思うのだった。


 
「羽純くん、羽純くん!」
 振り返った遠野 歌菜(とおの・かな)は、いつも以上にあでやかで、そして、目立っていた。
 ――和装。花が描かれた和服独特の美しい柄は、華やかに賑やかにパーティに彩りを与えようと着てきたものだ。他の花妖精たちがシンプルなカッティングだったり、洋装だったりしたものだから、同じ花の柄でもまるで違って見える。
 月崎 羽純(つきざき・はすみ)も同じような和服で、二人が並ぶと初詣の夫婦のように見えた。
「ああ」
 だが、歌菜のいつもと違った和装を嬉しく思いながら、おそろいの和服を着ることよりも、初詣がそうであるように――こうして歌菜と一緒にパーティに参加出来る事自体が……とても幸せな事なんだと、彼は今更ながらに実感していた。
 歌菜は黒いトレイに載せた食事を、羽純に見せびらかすように持ってくる。
 開いたテーブルに手際よく並べると、フォークの先のピンクの花弁を楽しげに眺める。
「食べられるお花って、凄いな〜。甘くて美味しいね、羽純くん」
「歌菜、あまり山盛りに持ってくるな。少しずつにしろ」
「え? 美味しくなかった?」
「いや。見た目で楽しませてくれる上、美味い。だから分け合って、なるべく多く食べてみたいんだ」
「あ、そうだよね。あんまりいっぱいだとお腹いっぱいになっちゃうよね」
 納得すると、歌菜はフラワーサラダや、花を使った料理をちょっとずつつついて、飲み物に口を付けた。
「これも甘くて好き♪ お花の蜜で作ったドリンクなんだって! 私のイチゴでね、羽純くんのはリンゴ……」
 ね、同じ蜜でも全然味が違うんだね〜と、やっぱり、はしゃいでいる。
「飲み過ぎるなよ」
「うん!」
 そんなはしゃいでいるばかりに見える歌菜だったが、気になることはあったようで。歌菜は近くテーブルを囲む人に、色々と積極的に話を聞いていた。
 困った事が無いか、あれから都市に何かあったか? 都市や住人を気にかけていた。幸い和装は珍しくて人目を引いたので、あちらからも色々と話しかけてくれた。
 とりあえずあとは時間が解決するだろう……ということで、歌菜たちが次に向かったのはクレーンゲームのコーナーだ。
「ねぇ、あのぬいぐるみもかわいい〜! あ! あの猫の形のお布団と枕のセットが欲しいな! 羽純くん、挑戦してみよ♪」
 販売用とは別の、お昼寝用のお布団の入ったクレーンに挑戦する。狙いをしっかり付けて……、
「えいっ! あと、もうちょっと…って、あぁ〜! むー…なかなか上手く取れないな」
 悔しそうにほっぺたを膨らませる歌菜に、横から手とクレーンの動きを眺めていた羽純は、呟いた。
(ふむ、何となくだが、取り方のコツが分かった気がする)
「歌菜、代われ。俺が取る」
「あれ? 羽純くんが取ってくれるの?」
 羽純はレバーを握ると、しごく真剣にアームを見つめる。ぐいーんと動いたアームががっちりと狙いの場所を掴んで……崩れなければこっちのもの。
(取ると言ったからには有言実行しないとな)
「――わーっ、とっても上手! 有難う、羽純くん♪ これで一緒にお昼寝しようねっ♪」
 出てきた布団に顔を半ば埋めながら、恥ずかしいことを言ってしまう妻に頷きながら、羽純は愛おしく思った。


「なんだろうね、この動物」
 エドゥアルト・ヒルデブラント(えどぅあると・ひるでぶらんと)は、クレーンで取ったウサギとゾウが合体したような不思議生物――のぬいぐるみを、ひょいとつまみ上げた。
「こんなのがここにはいるのかな?」
 ヌイ族は商売人だ。ヴォルロスの着ぐるみ観光やヴォルロスから出ている遊覧船用、それに本拠地の島用に観光ガイドを作っている。
 エドゥアルトもここに来るまでパンフレットには一通り目を通してはいたのだが、樹上都市はヌイ族とは別の部族の領土とあって、通り一遍の事しか書いていなかった。
「違うんじゃねえ? 多分だけど、ここにそんなのがいるようには見えねーぞ」
 千返 かつみ(ちがえ・かつみ)が返答する。
 不思議生物どころか鳥と昆虫と花妖精と守護天使と観光客しか、さっきから見ていなかった。海上にあることを除けば、のどかなものだ。尤も知らない生物はいるかもしれないし、最近まで、海面にはトビウオみたいな刃魚とかいう怪物の魚が大量発生していたとは聞いたが。
「そうか。……じゃあ、次に行こうか」
「エドゥ、もうちょっと見てってもいいんだぞ。土産買っていくとか」
 かつみの言葉に、エドゥアルトは意外そうな、でも少し嬉しそうな顔で言いよどむ。
「いや、でも……」
「俺を振り回さないように気にしてるみたいだけど、お前静かな顔して好奇心旺盛なのバレバレだ」
 かつみはエドゥアルトの遠慮を取り払うように笑った。
「いいから、行きたい所にいこう」
「……うん」
 エドゥは嬉しそうに控えめに微笑む。
 そうして二人は色々見て回った。
 一応気になっているエドゥのために、ぬいぐるみのこの動物が何だろうって訊ねたり(ただ本当にウサギとゾウをくっつけただけの実在しない動物だそうだ。といってもパラミタは広いから本当にいるかもしれない)、鳥の声を聞いたり、あちこち登る高さを変えて、海や風景を眺めたりする。
 二人とも、この樹上都市──大海原からに突き出した大きな森に来るのは初めてだ。
 交通手段は行き交う小舟、桟橋、樹上へ上がるための木々に取り付けられた螺旋階段。樹木同士を繋ぐ吊り橋、床は木の中と樹の間に設けられた家、家の周囲のデッキといったもので、少々人間には不便に感じたが、これは住んでいるのが花妖精と守護天使だけだからだ。
 この森は元々、無人だったという。それも、今回のお祭りのきっかけとなった事件の怪物――の元となった、穢れ――によって、荒れ果てていたのだ。
 そこに、ティル・ナ・ノーグからこの“原色の海”へ移動してきた途中の花妖精たちが見つけて、かわいそうに思って住みつき、手入れをして蘇らせた。次に彼女たちを守るために守護天使たちが住んだのだ、という。
 こうして最後に主たる森がよみがえり、中央の巨大なオークの大樹が彼女たちに礼を言った。その時、周囲の植物が季節を問わず一斉に咲き乱れ――それから、これを記念して年に一回、夏の日、同じことを起こすことになった。
 去年もそのフラワーショーが開かれていたのだそうだ。
 今年はまた怪物によって大樹が傷ついたため、フラワーショーでなく、代わりに仮装で花を咲かせることにしたのだ、という。
 そう聞くとまだ焼け焦げたような葉の謎も解けて、別の感慨がある。
 歩いているうちに遠くからコーラスが聞こえてきたので、二人は演奏を聞きにそちらに足を向けた。


 海底都市に住むという、海の獣人――イルカやクジラ、シャチといった人々のアステリア族からは、女王ピューセーテールたちが訪れていた。
 滅多にない大人数での海上へのお出かけ、ということで、若い頃地上を回っていたという老宮廷学者が、あまり地上に出ない者たちに口うるさく指示を飛ばしている。その殆どがお節介だということに本人気付いているのか、いないのか。
「人数分の靴をもって来たからの、これを履いて……あれはこっちでこっちがそれで」
 顔を紅潮させた宮廷学者は、辺りをせわしなく見回していたが、彼らに気付くと足早に近寄って来た。
「おお、お主はあのいつぞやのコーヒーの!」
 その後ろから、ピューセーテールがゆっくりと歩いてきた。彼女自身歌声を披露するために、薄い青のドレスを着ていた。背中は相変わらず開いていたが、その上から薄いショールを重ねていたため、それと知らないものは傷跡に気付かなかっただろう。
「こんにちは、呼雪さん。ほら……今日は一緒に演奏すると言ってたでしょう?」
「そうそう、そうじゃった。今日はコーヒーどころか紅茶も、酒も飲めますからな」
「まあ、この人ったら演奏よりも、そちらををずっと楽しみにしてたのよ」
 早川 呼雪(はやかわ・こゆき)が、丁重なお辞儀を返す。顔を上げると、彼女たちの背後に、アステリアの手伝いに来ていた少年を見付けた。
「やあ、この前はお世話になったね。準備を手伝って貰うついでに観ていってほしいな」
 海兵隊の少年・セバスティアーノは畏まって礼をした。
「こちらこそお世話になりました」
 緊張したような視線がパートナーに向かっているのを見て、面白くないのはヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)だった。呼雪の背後から「ふふふ呼雪可愛いなー」とか見ていたのだが……。
(何で呼雪をみてるんだよー。この前も照れてたみたいだしさー)
「準備終ったのかな? 君はこっち(はぁと)」
 やけににっこり笑って、呼雪から離す。離された方――目の前にきた少年の方には、もう一人のパートナータリア・シュゼット(たりあ・しゅぜっと)がいた。
 可愛い嫉妬に巻き込まれたセバスティアーノに、タリアはにこやかに微笑みかける。
「セバスティアーノさん。終わったら、一緒に美味しいもの食べましょうね」
 アップルパイを作ってきたのよ、と言うと、セバスティアーノは頬を赤くして、
「は、は、はいっ」
 可愛らしい反応に、ふふ、と、タリアは笑う。それでますます緊張する彼に、ヘルはまだまだ子どもだなぁとちょっと安心した。
(んー、でもタリアちゃんとか女の人が好きみたいだし、道を踏み外す事はないかぁ)
 と、自分の事は置いておいて妙な言い回しをする。
 実際、呼雪を見ているのは一度目はかっこいいなー、というもので、二度目は特別な意味はなくて、呼雪の花の仮装を……ヘルがした仮装を見ていただけだった。
 裏方担当のヘルは樹木っぽい仮装をして、代わりに? 呼雪には白い花を中心に「盛り盛り」して、ゴージャスな装いだったからだ。
「えー? だって仮装だし、いっぱい付けた方が綺麗だもん。すごく似合ってるから安心して良いよ♪」
 なんて言って、だからセバスティアーノ以外の注目も浴びていた。
「……これはちょっと、飾りすぎじゃないか?」
 一方タリアはというと、舞台に出る獣人達と一緒にそれぞれどんな花や樹の仮装が似合うか選び合って、海のような青い花、白イルカや貝殻を髣髴とさせる白い花を、元々咲いている鬼百合と合わせてシンプルかつ華やかにまとめている。
「よく似合ってるよー。……さ、はじまるよー。僕は裏で聞いてるからね♪」
「ああ」
 ヘルは裏方に回って、呼雪とタリアはアステリアの獣人たちとスタンバイ。その間に、呼雪は“人の心、草の心”で傷付いた木々の心を感じ取る。
「大丈夫、この都市の木々はきっと負けないわ。それに、ドリュアス様やこの都市の樹木を愛する人達がいるもの」
 ここに来るまでタリアや他の契約者や花妖精たちは、傷ついた木々を手当てした。既に応急処置は済まされ、丁寧な仕事ぶりに共生を感じていた。
 先に始まった獣人達のコーラスに、舞台袖で静かに耳を傾ける。
 ピューセーテールの歌声は、鯨の獣人だからだろうか。清涼は大きく、深く、大海の流れを思わせる。そこに獣人たちの冷たい水、温かい水、細い流れ、急流、穏やかなもの……幾つもの流れが重なっていく。
 人間たちのオペラにも似ていたが、人の歌とは違う、不思議な揺らぎのある歌だ。
 その後、呼雪は“溟海の旋律”を奏でた。これは夏にアステリアの女王を訪ねた後、彼自身が海底で作曲した。繊細な海の旋律を記した曲で、“原色の海”の海底都市の歴史を曲想に持つが、海底の岩・“オルフェウスの竪琴”の音色と合わせることにより、より複雑な旋律を現すという。
 今ここに“オルフェウスの竪琴”はないが、代わりに獣人たちの声があった。
 彼はリュートを爪弾く音に、長い歴史の中で、本来周期的に現れる穢れの魔物から海域を守る為に戦ってきた女王と獣人達への思いを込める。
 ウロボロスの抜け殻から聞こえた歌を思い出し流れが元に戻った今も、いつか訪れるその時に乗り越えられるようにと祈りを込めて。
 タリアも呼雪の伴奏に合わせ、ヴォルロスの美しさや、木々の力強い生命力を希望を乗せて歌う。
 この原色の海に、穏やかな時が長く続くように……。