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調薬探求会との取引

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調薬探求会との取引

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 手紙についての話を終えた後。

「エリザベート校長達の要求を受け入れて作製には問題はありませんか?」
 ロアはアキラと話し終えたシンリに訊ねた。作製というのは自分とウルディカがグラキエスを救うに必要な魔力を失わせる薬の事。
「……確かに魔力だけの存在の魔術師がいれば作業は楽だけど、無理なら無理で何とか出来なくもないから心配無いよ。ただ、手間が掛かるだけで」
 シンリは手を止め、隠さずに修正が必要な状況を話した。
「……何とかというとここでの採取か?」
 ウルディカは条件として出したここでの採取の事を思い出した。
「その通り。例のレシピの素材や通常使用の物に君達の依頼にも使える物をね。何より妖力という所に使いようがあると思って」
 シンリはにこやかに言った。
「……妖力、か。確かにここの鍋や湯には何かしら効果はあったが」
 ウルディカは以前ここに来た事を振り返り、シンリの思惑にも納得していた。
「それで妖怪の山所在の素材が無いにも関わらず採取を」
 情報収集が得意なロアはすぐに集めた情報を脳裏に呼び起こし、確認をする。
「半端な物を渡すわけにはいかないからね。依頼されたからには相応の物を作るのが依頼された者としても調薬を誇りにする者として当然の事」
 シンリは穏やかな表情を少しだけ引き締めた。調薬と依頼に対しては真摯でもう一つの調薬団体とは対立関係ではあるがそれを依頼には持ち込まない。
「ありがとうございます」
 手を抜かず出来る限りの事をしようとしているシンリに対しロアは丁寧に感謝を述べた。
「ただ、他の手があるから退いた訳ではないのだろう」
 ウルディカはシンリが退くにはまだ何かあると感じた。
「察しがいいね。平行世界だよ」
 とシンリ。
「……平行世界の素材を採取するという事か。平行世界にしかない素材もある可能性もあったな」
 グラキエスはシンリの一言から彼の思惑を見抜いた。
「そうだよ。もしかしたら使えるかもしれないからね。以前にも言った通りレシピ通りにした物が必ずしも有効とは限らないからね。実際に作るのとは違うし服用する人にもよるから。有用な素材があればあるほど調整の幅が広がるからね。それに調薬出来ない状況になるのは勘弁だから」
 シンリは軽く肩をすくめた。
「レシピに記載されている素材は揃ったという事ですか」
 平行世界や魔力喪失薬の情報が入ったノマド・タブレットにレシピを映して確認するロア。
「オリジナル素材もあるから全部という訳じゃないけど……それなりに順調かな」
 シンリは慎重に答えた。優秀な仲間と調薬友愛会から届けられた物とで必要素材は順調の揃えていっている。要改良も考え、上質の素材採取にオリジナル素材の生成に尽力している。
「問題は同化現象が起きた際に上手く立ち回れるかかな。当日は時間制限もある上に僕らが知っているのはこの世界だけだからね。他の世界が重なるとなると。そもそも平行世界については手紙に載っていた程度しか聞いていないし」
 シンリは少し抱く不安要素を明らかにした。
「それでしたら」
 『コンピューター』を有するロアはそう言うなりタブレットを有用に利用して平行世界についての詳細をシンリに教えた。

 平行世界の情報を得た後。
「ありがとう。助かったよ。同じでいて違うか。採取の人員は多めの方が良さそうだね。まぁ、喜んで採取の準備をするはずだろうけど」
 ロアに礼を言うシンリはすでに採取の事に思いを巡らせていた。
「そうか。他に必要な物は無いか」
 ウルディカは自分達が協力出来る事が無いか訊ねた。これも魔力を失わせる薬の早い完成のためだ。
「最近の様子とか聞かせてくれたらと思うんだけど」
 シンリは現在のグラキエスの状態について訊ねた。
「それについては……」
 代表してウルディカが話を切り出し、間々でロアやグラキエスが加わり細かな話となる。シンリは真剣に耳を傾け、しっかりと記憶していった。
 この話が終了するとまたあれやこれやと魔力を失わせる薬について話を交わした。