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    ★    ★    ★

『さあ、第3ターンに入りました。1位は、相変わらず遠野歌菜選手&月崎羽純選手です。2位争いは……、おおっと、コハク・ソーロッド選手とクリスティー・モーガン選手が同時に加速ゾーンに飛び込んできた。両者さらに加速します』
「じゃあ、みんな、いっくよー!」
 テンコ・タレイアが、加速器を作動させました。
「クリストファーの分も、負けない!」
「負けるものか。速く、さらに、もっと速く!! ……えっ!?」
 クリスティー・モーガンとコハク・ソーロッドが一気に加速されましたが、速度の上がっていた分、さらに大幅に加速されたコハク・ソーロッドが限界を超えてコースを飛び出してしまいました。どうやら、加速器で加速はするけれど、設定速度を超えると射出されるように設定されているようです。もっとも、飛び出してしまったとしても、外はシャンバラ大荒野ですので危険はほとんどないという具合です。
「ああ、コハク! 大丈夫!?」
 コースから思いっきり飛び出していくコハク・ソーロッドを見て、小鳥遊美羽が叫びました。
 ところが、コハク・ソーロッドが飛び出した直後、どこからか飛んできたビームがコース内に突き刺さりました。コハク・ソーロッドがコースアウトしなければ直撃していたコースです。
「なんだ!?」
 突然の謎の攻撃に、クリスティー・モーガンもあわてて回避行動に移りました。
 フィールド加速器の中に飛び込んできたビームは、フィールドチューブ内で曲げられ、サブレーン内に追いやられました。そこで、周回軌道に曲げられ、圧縮されていきます。とはいえ、光速に近い世界の出来事ですから、レース用のチューブの横に突如光に満ちた細いチューブが現れたようにしか見えません。ただ、そのままではどうしようもないので、途中でビームがやってきた方向へと放出されました。加速器でビーム増幅した物を倍返しです。
「コハク、大丈夫!?」
 自分の安全よりも、コハクの安否を心配して、小鳥遊美羽が通信で呼びかけました。
「大丈夫、怪我はしていないから、美羽はレースを頑張って」
 ほどなくして、元気なコハク・ソーロッドの声が返ってきました。

 時間は少し遡ります。
 ――戦いが始まる……。
 意識が目覚めました。そう、コア・ハーティオンの中で。
 何かが、コア・ハーティオンを呼んでいます。それは助けを求める声でしょうか。それとも、戦いがあげる不気味な咆哮でしょうか。
「何? どこかで戦闘でもしているの?」
 コア・ハーティオンをモニタしていた高天原鈿女が、不自然な振動を感じて遠くを見やりました。閃光が走ります。あれは、ビッグバンブラストではないのでしょうか。
 ピッ。
 コア・ハーティオンとラブ・リトルをモニタしていたパソコンに、信号が感じられました。
「ふぁーあ、あれ? なんで、あたしこんなとこで寝てるの?」
 龍帝機キングドラグーンの制御ユニットの中ですぽぽーんで寝ていたラブ・リトルが、目をこすってから大きくのびをしました。
「あっ、鈿女、おはよー。えっ、どうしたの?」
 唖然とする高天原鈿女に、ラブ・リトルがきょとんとした目をむけました。もっとも、双方モニタ越しなので、直接ではないのですが。
「ラブが目覚めたと言うことは、まさか……」
 高天原鈿女が、コア・ハーティオンの方を振り返りました。
 そして、コア・ハーティオンが目覚めました。理由は分かりません。あるいは、理由などないのか、あるいは重要ではないのかもしれません。
「私を呼ぶ……。人が……、世界が……、時代が……! 行くぞ、龍心機ドラゴランダー! 合体だ!」
『ガオオオオン!!』
 突如動きだしたコア・ハーティオンが、唐突に龍心機ドラゴランダーと龍帝機キングドラグーンとの合体シークエンスに入りました。
「ちょっと、あたしも乗ってる……!?」
 そんなラブ・リトルの声を無視して、コア・ハーティオンがグレート・ドラゴハーティオンになりました。
「行くぞ、何かがくる」
 そうつぶやくと、グレート・ドラゴハーティオンはレースが行われているジェットコースターの方へと急ぎました。そこへ、どこからかビームが飛来しました。同時に、コハク・ソーロッドがコースから飛び出してきます。
「危ない!」
 グレート・ドラゴハーティオンが、その巨大な手でコハク・ソーロッドを受けとめました。いや、ともするとこの行為の方が危険かもしれませんが。ともあれ、握り潰すことなく、コハク・ソーロッドを無事受けとめることには成功しました。
『黄龍合体! グレート・ドラゴハーティオン!! 心の光に導かれ、勇気と共にここに見参!』
 コハク・ソーロッドを掴んだまま、グレート・ドラゴハーティオンが名乗りをあげました。ちょっとはた迷惑です。

『コハク・ソーロッド選手、そのまま超加速でコースを飛び出していってしまいました。リタイアです! 2位は、クリストファー・モーガン選手の物となりました。小鳥遊美羽選手、パートナーのリタイアを胸に、3位をキープしています』
「飛空艇の調子が……。ルカ、先に行け!」
 後方グループからの脱出をはかっていたルカルカ・ルーとダリル・ガイザックでしたが、どうも、ダリル・ガイザックの小型飛空艇が不安定のようです。事前のメンテナンスはちゃんとしてありましたから、フィールド加速器との干渉でも起こしたのでしょうか。いずれにしろ、レースは生き物だと言うことで、状況は刻々と変化しているということです。
「でも……」
 ダリル・ガイザックを残して先に行くことをルカルカ・ルーが渋ります。けれども、先頭集団が競り合いに夢中になるあまりリタイアを出した今こそ好機です。
「チャンスを逃すな!」
「分かったわ!」
 ダリル・ガイザックに叱咤され、ルカルカ・ルーが超加速で小型飛空艇を素早く操作し、そのポテンシャルを最大まで引き出しました。一気に、加速して先頭グループに迫ります。
『4位には、なんと、ルカルカ・ルー選手が一気に躍り出た。これは凄い、ごぼう抜きです。5位には、おっぱいで奮起した風森巽選手&ココ・カンパーニュ選手が一気にのし上がってきました。6位には、ミルディア・ディスティン選手、綾原さゆみ選手&アデリーヌ・シャントルイユ選手、源鉄心選手&トレリン選手が一気に上がってきました。これは、上位グループに手が届くのか? このあたりの競り合いも見逃せなくなってきました。それらと入れ替わるようにして、イコナ・ユア・クックブック選手は9位まで後退してしまいました。いったいどうしてしまったのでしょうか。同じように、10位には、エリシア・ボック選手とスープ・ストーン選手&ナウディ選手が下がってきています。ちょっと、ここで息切れしたか。おっと、ここで御神楽舞花選手、加速器に辿り着いた』
「いきますよ〜」
 タイモ・クレイオが御神楽舞花の乗る小型飛空艇を加速させました。
『御神楽舞花選手、順調に順位を上げ、逆に下がってきたティー・ティー選手&リラード選手とならんで12位です。14位は、ノーン・クリスタリア選手です。ここに来て、じりじりと足踏みしています。15位は、クリストファー・モーガン選手が最下位から浮上してきました。入れ替わって最下位となったのはダリル・ガイザック選手です。ルカルカ・ルー選手のサポートに回ったせいか、順位を落としています。おかげで、ジェイダス人形の群れに追いつかれてしまいました』
「こ、これは、視界が……」
 さすがに、予想外の事態に困惑するダリル・ガイザックでした。周囲には、たくさんのジェイダス人形が飛び交い、まるでマグロの大群に囲まれているかのような光景です。思いっきり邪魔になって、思うようにスピードが出せません。
『それでは、現在の順位を確認してみましょう』

 1.52 遠野歌菜&月崎羽純
 2.41 クリスティー・モーガン
 3.37 小鳥遊美羽
 4.36 ルカルカ・ルー
 5.29 風森巽&ココ・カンパーニュ
 6.28 ミルディア・ディスティン
      綾原さゆみ&アデリーヌ・シャントルイユ
      源鉄心&トレリン
 9.26 イコナ・ユア・クックブック
10.25 エリシア・ボック
      スープ・ストーン&ナウディ
12.24 ティー・ティー&リラード
      御神楽舞花
14.23 ノーン・クリスタリア
15.22 クリストファー・モーガン
      ジェイダス人形群
16.18 ダリル・ガイザック