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魔女と傭兵と封じられた遺跡

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穂波


「ここは……当たりかもしれませんね。『研究室』のようです」
 キメラたちを倒して入った部屋。そこを探索しながら御神楽 陽太(みかぐら・ようた)のパートナーである御神楽 舞花(みかぐら・まいか)はそう言う。
「それではここにある可能性が高いのですわね。『恵みの儀式』を終わらせる方法が」
 エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)は研究室を見回してそう言う。
「ここをくまなく探しましょう。私は向こうを探してきます」
 舞花とエリシアにそう言って、穂波は二人のもとを離れようとする。
「少しお待ちください。……この部屋に入る前で解除された罠を見つけましたが……解除したのはあなたですわね?」
 その背中に声を変えて止めるエリシア。
「そんな……穂波さん、力は使わないでくださいと……」
 舞花とエリシアは穂波がその器の魔女としての力を使わないようにと頼んでいた。それは穂波が力を使って倒れたのを見ているのと、嫌な予感がするからだった。
「大丈夫ですよ。本当に『力』は何も使っていませんから。今回は技術だけです。……ある意味その技術こそが器の魔女の力とも言えますが」
 本当に恵みの儀式等には何も影響はないと穂波は言う。
「でも……いえ、私達の方で罠の方を警戒していれば、穂波さんが力を使う必要はなかったんですね」
 そこは自分たち契約者全員の落ち度だと。
「それでも、お願いします。力は使わないでください」
 舞花は穂波にお願いする。
「わたくしからもお願いしますわ」
 それにエリシアも続く。
「分かりました……今日はもう使わないと約束します。…………とにかく今はこの部屋を探しましょう。私の勘でもここが当たりだと言っています」
 そう言って穂波は今度こそ二人の元から離れていく。
「儀式が終われば穂波さんは永遠の眠りにつく…………今のままで終わらせることは出来ませんよね」
 その結果が幸せだとは舞花は思えない。
「それでも、儀式を終わらせる方法は見つけないといけません」
 ミナホのため、いずれは終わらせなければいけないからと舞花は気合を入れて儀式の終わらせ方を探すのだった。


「恵の儀式が終われば永遠の眠りに……ね」
 研究室を探索しながら、奥山 沙夢(おくやま・さゆめ)はその手を少し休めてそう呟く。
「穂波ちゃんは誰も死なせずに終わらせるって言ってたけど……それは自分も含めて、だよね?」
 雲入 弥狐(くもいり・みこ)は瑛菜たちに言っていた穂波の台詞を思い出してそう言う。
「はい。そうですよ。私自身も死なせずに終わらせる方法を探してここに来ました」
 二人の会話が自分のことだと気づいた穂波はそう答える。
「けど、穂波ちゃんは儀式が終わったら『永遠の眠り』につくって」
 そう沙夢は聞いている。
「はい。確かに儀式が終われば私は生きる力を補充できず生きることは出来ません。でも、それは死ではありません。本当に起きられれない『永遠の』眠りにつくだけです」
「……それって、死と何が違うの?」
 悲しそうに弥狐は言う。
「仮に恵みの儀式がまた始まればまた起きることができるでしょう……それは私の望むことではありませんが。それに、ミナホお姉さんに忘れられるわけじゃない。それが一番大きな違いです」
 そう言って穂波は頭を下げて二人とはまた違う場所を探しにいく。
「沙夢……あたし悲しいよ。このまま穂波ちゃんがいなくなるなんて嫌だよ」
 離れた穂波を見ながら弥狐は言う。
「諦めたくない…………他に方法はないの?」
「分からないわ…………正直、誰もが幸せになる方法があるとは私には思えない……」
「沙夢…………」
 唇を噛みしめる弥狐。その様子を見て沙夢はそれでもと続ける。
「それでも……村長との約束は守るわ。記憶を失う前の、確かに穂波ちゃんの母親だったあの子との」

 『穂波の心を守る』……その約束をどんな形であれ果たすと沙夢は誓うのだった。