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秘密のお屋敷とパズリストの終焉

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秘密のお屋敷とパズリストの終焉

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【エピローグ】

 開いた、と思った途端、辺りを濛々たる煙が包んだ。
『ヤァヤァ、お見事お見事。今回はちょぉっと簡単にしすぎちゃったねエ』
『バーカ、どんなに簡単でも、納得行く答えが複数出せちゃ意味がないんだヨ』
『イヤァ、そこは、反省反省。皆サン大変失礼したネ。無事に答えが出てボクとしても万々歳だ』
 煙の中で、ヘンゼルとグレーテルの掛け合い漫才が聞こえてくる。
 ――どうやら今回の出題に関して、片方は若干不満があったらしい――
『それでは皆さん、またお会いしま――』
「まってよ!」
 ヘンゼル達が幕引きをしようとした、その時。
 ルカ・アコーディングがそれを引き留めた。
「お茶する約束だよ!」
『オット、そうだったね。ボクは気分が良いから、少しくらいお付き合いしてあげよう』
『ヘンゼル! 本気かい?』
 グレーテルの不満そうな声が聞こえてくるが、しかしそれを遮るように、ぱちん、と指の音が鳴る。
 すると、濛々たる煙はぱっと晴れ、そこはもう、元のお屋敷だった。扉に付いていた錠前も、大時計もない。
「さあお茶会の続きと行こうカ」
 残っていたのはぼさぼさ髪の二人の子どもだけ。
 そうして、お茶会は再開された。

 頭を使ったからだろうか。参加した多くの人達は、再びスイーツを山盛りにお皿に盛っていき、かしことシェスティンとさくら――実は、ずっと居たのだ、どこかに。――はお菓子の補給と給仕でてんてこ舞いとなった。

「頭を使うと、甘い物が食べたくなるというのは本当らしいな」
「そうだね、羽純くん」

「お腹の子のためにも、しっかり食べておかないといけませんね」
「……体重のコントロールが肝心なんじゃなかったか」
「もちろん、分かってますわ。でも今は糖分が欲しいんです」

「ちょうどお腹も空いたし、喉も渇いたし、スイーツが有り難いわね」
「ほんと。美味しいね、カーリー」

「うん、疲れた脳みそには甘い物がいいね……って、あれ、アディ? ……寝ちゃった」

「うーん、やっぱり働いた後のスイーツは格別ね」
「ちょっとセレン、カロリー取りすぎよ」
「あら、今夜セレアナをデザートに頂いたら、カロリーなんてあっさり消費出来るわよ!」
「ちょっと、セレン!」

 だいたい、そんなような会話があちらこちらから聞こえてくる。
 そんな中、ホールの一角では数人がヘンゼル達を取り囲んで――お茶を飲んでいた。
 以前被害に遭ったさくらなどは掴みかかりそうな勢いだったが、たぶん、掴みかかろうとしたら、すぐ消えて逃げられるのだろう。皆そう解って居るから、手出しはしない。
「で、あなた達は結局なんなの?」
 お茶会の発起人であるルカが問いかける。
「何、と聞かれてもネ。君達は自分が何ものであるか、正確に言えるのかい?」
「ボク達はボク達。こういう者さ。まあ、人間の言う分類で言うなら、『悪魔』的な存在かナ。正確には違うけど、だいたいそう理解してくれて構わないよ」
「何でこんなことするの。人を閉じ込めるのが楽しい?」
「うん」
「楽しいね」
 問いかけに、二人は顔色一つ変えず答える。
「巫山戯ないで、命をかけたゲームが楽しいとでも言うの?」
「まあ、人間とは尺度が違うしネ」
「っていうか、本気で殺す気は無いしネ」
 その言葉に、一同は顔を見合わせる。
「ま、確かに誰も解けなければ死んで貰うつもりだけどサ」
「本気で命かかってる、って思わせないと、誰も必死になってくれないしさー」
「そもそも、誰一人解けない謎を出すような奴、パズリスト失格だヨ。ボク達は、ちゃぁんと解けるように作ってるんだから」 
 ヘンゼル達はけらけらけら、と笑う。
 けらけらけら――と、笑ってから。
「だから、今回の出題、あれは絶対悪問だって。君も見てたダロウ、はじまりの2・8、って読めちゃうじゃないか」
「違うって! ちゃんと時間のヒントを出したぢゃないか。最終的には解けた訳だろう」
「なんだい、数字を並べるだけって、おもしろみの無い! 最初からボクの案を採用していれば良かったんだ」
「君の案こそ答えがいくらでも考えられてしまうぢゃあないか!」
 喧嘩を始めた。
 どうやらまだ、今回の問題について、彼らの間では決着が付いていないらしい。
「……ま、まあまあ、喧嘩しないで……っていうか、ここでしないで」
 何人かが仲裁に入るが、二人はぷいっとそっぽを向いてしまう。
「ちなみに、グレーテルの案は何だったの?」
「5↓・3←、って謎があったろう、アレを一つずらすだけさ。4↓、2←、ってね」
 グレーテルはそう言うと、ぽんっ、と音を立てて消えてしまった。言い逃げだ。
「えーと、同じように解くと……はじまりの、1?」
「違う違う。ま、よく考えてみてよ。ボクもそろそろお暇しようかな。ケーキありがと、美味しかッたよ」
 ぢゃあね、と笑うと、グレーテルもぽん、と煙と共に消えてしまったのだった。

「と、いう、わけ、で、閉じ込められた、けど、楽しかった、です……っと。送信」
 ヘンゼル達が消えたあと、ルカはパートナーであるルカルカ・ルー(るかるか・るー)に報告のメールを入れていた。今日ルカルカは自宅でのんびりして居るはずである。
 やがて返信メールが返ってくる。曰く。
【何危ないことやってるの。っていうか、私も話聞きたかった】
 だ、そうで。
「えへ、帰ったら自慢しちゃおうかな」
「全く……何を言っているんだか……」
 ルカの言葉に、コードは本日最大のため息を漏らした。

 それから。
「ののちゃんの秘密は、私が絶対守るからね……!」
「レオーナ……!」
 若干すれ違ったままの乙女同盟が、密かに結成されたとか……なんとか。

 ともあれ、すったもんだのお茶会はまだもう少し、盛り上がりそうである。


―幕―


担当マスターより

▼担当マスター

常葉ゆら

▼マスターコメント

ご参加頂いた皆様、誠に誠に、ありがとうございました。
ラストリアクション、お楽しみいただけましたでしょうか、常葉です。

なお、全ての謎が解けた(鍵の番号を 左9876 右5432 と記入した)方は

レオーナ・ニムラヴスさん
布袋佳奈子さん

の2名でした!
ただ、左から23456789、となっていた方もいたりして、惜しかったです。(ちょっと答えの書き方がわかりにくかったかも知れません……)
また作中でも触れたとおり、 左8765 右2345 という方も多く、「ああ確かになぁ」と反省し、ちょっと最後にヘンゼル達に喧嘩して頂きました。
なかなか、スパンと割り切れ、画像を必要とせず、適度な手応えの謎を拵えるというのには、まだまだ修行が必要なようです……

***


さて、これで本当に最後なんだなぁ……と思うと名残惜しくて、出来るだけ、少しでも多く描写を、したいと、思ったら、公開がギリギリになってしまいました。
でも、ルールに抵触しない範囲で、描写のご要望には可能な限りお答えした……つもりです。
もう彼ら彼女らを描くことも無いんだなぁと思うと……涙が。

本当に本当に、今までご参加いただいた皆様、シリーズ通してお付き合いいただいた皆様、もちろん、今回初めましてだった皆様も、ありがとうございました。
最後に一つ、謎が残りましたが――もうきっと皆さんなら解けるコトと思います。
最初はね、この謎になる予定だったんです。
でも、ヘンゼルが作中で語ったとおり、「答えがいくつでもあり得てしまう」のと、若干メタネタになってしまうかなという危惧があったので、没にしました。
でも、でも、この謎、とってもよく出来て居てですね……(苦笑)出さずには居られなかったので、こんな形で出してしまいました。
どうぞ最初のヘンゼルの言葉とも合わせて、考えて見てくださいね。
「正しい答え」はもちろん用意したのですが、でもきっと、皆さんのキャラクターの数だけ、答えがあるんじゃないかな、なんて。
……格好付けました。すみません。

さて、名残は尽きませんが、そろそろ筆を置かせていただきます。
今後についてですが、少なくとも三千界では引き続き執筆させて頂きます。
(プライベートシナリオのペースはゆっくりですが、パブシナなどでも参加して居るので、またお会い出来れば宜しくご贔屓に・笑)
そのほかはまだ白紙ですが、もしどこかでお見かけ頂きましたら、またよろしくお願いいたします。

長い間本当に本当に、ありがとうございました。


常葉ゆら