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リアクション
第15章 御座船内外・2
相田 なぶら(あいだ・なぶら)は、パートナーの機晶姫、相田 美空(あいだ・みく)と共に、御座船の護衛に務めた。
「じゃ、サポート宜しくね。
でも、無理は禁物だから。危険だと判断したらすぐに下がってね」
「………………」
美空はじっとなぶらを見つめる。
美空が索敵し、なぶらがそこに突っ込む。その作戦を聞いた美空は、
(その戦法では、なぶらさんばかりが危険な目に遭いますわ……。
でも、そういう指示なら従うべきなのでしょうか……)
と案じたのだ。
(……いえ、なぶらさんは、無理はしない範囲で、「サポートを宜しく」とおっしゃったのです。
前に出ようとするのではなく、私は、できる範囲でサポートをできることを考えるべきですわ……)
「み、美空?」
そんな美空の心の声が聞こえるわけもなく、じっ、と見つめる美空になぶらはうろたえる。
やがて、こく、と頷いた美空にほっとした。
二人は御座船の甲板に出、ハイドシーカーを使って美空が敵の大まかな分布を調べようと試みる。
だが、精度を調節した途端、それが爆発した。
美空はその小さな爆発から身を引いて避ける。
「美空! 大丈夫?」
驚くなぶらに、美空は頷いた。
御座船に向かう敵は、予想していたよりも少なかったが、全体的に、この空間に充満している敵は多い。何よりも、
(巨大良雄さんに反応してしまったようですわね……)
爆発する一瞬前の反応を思い出し、美空は思う。
とにかく、ハイドシーカーに頼らず、索敵をしなくてはならない。
幸いにも、視界は良好で、視覚である程度までの判断はできそうだ。
なぶらは美空の判断に任せて様子を窺う。
ふ、と美空が顔を向けた。
「……あっちだね!?」
問うと、こく、と頷く。
「よし、美空は待機してて!」
氷雪比翼を使って突っ込むなぶらに気付き、屍龍の群れが群がってきた。
その背に乗る奈落人は、もはやゾンビではないが、屍龍に対しては効果があるはず。
なぶらはできるだけひきつけて、バニッシュを放つ。
「ギャアッ!」
致命傷には至らなかったが、龍が暴れ、奈落人が振り落とされた。
ダイヤモンドの騎士が具現化させた恐竜の群れは全て倒したが、いつ来るかも知れない次の襲撃に備えるべく、甲板に出た。
ドージェに会いにいく為、全力の戦闘でこの場を凌がなくてはならないことは解っている。
最も、巨大良雄とやらの防衛は国軍などの精鋭がやるのだろうから、自分は御座船の防衛だ。
いざという時の為に、今迄英気を養っていた。
しかし。
「パンツが……パンツ分が足りねえんだよ!」
国頭 武尊(くにがみ・たける)は叫んだ。
人に糖分が必須であるように、自分にはパンツ分が必須なのだ。
「くそう、かくなる上は、自力生産するしかねーか。
ここは想像が現実になるらしいしな」
ならば思い描くのは、過去の後悔、パンツを手に入れ損ねた相手、女神イナンナだ。
パンツ入手に失敗した挙句に放校処分まで食らってしまった。
逆恨みには違いないが、イナンナのパンツが欲しい! イナンナのパンツ!!!
セコールブランドのパンツを身につけたイナンナ出てこいぃぃ!!!
……という切なる願いが通じたか、武尊の前に、高級下着を身につけたイナンナの姿が現れ、武尊のテンションが上がった。
「やったぜ……!!」
イナンナは微笑み、パンツに手をかける。
「これをご所望ですか?
……では、今脱ぎますから、こちらに」
おいでください、と手を差し延べるイナンナにフラフラと近付いて、
「危ないっ!」
「ぎゃあっ!!」
目の前を焔の渦が通る。
「大丈夫ですか!?」
五月葉終夏のヴォルテックファイアによって、ウミウシが燃え上がった。
一気に近付いて来ようとしたウミウシを阻み、ニコラ・フラメルが防御のアイスフィールドを展開する。
「あああーっ!
オレの、オレのパンツがーっ!!」
喜びがマックスだっただけに、絶望も大きい。
「しっかりするがいい。
あれは君の望むものではない」
ニコラが呆れて正気に戻そうとするが、武尊の落胆は大きかった。
「ゴラァァ! 良雄ぉ!!」
「ひいっ! 何っスか!」
凄味を利かせたゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)に、良雄は縮み上がった。
「てめぇ、デカVerてめえがカツアゲされてんのを何ふんぞり返って見てやがんだ。
てめえもさっさと、小銭を出せや!」
「ええっ、でも俺」
前にカツアゲされそうになった時、所持金は無いのだと訴えたはずなのだが。
「金が無いだぁ!? そんな理屈が通用するか!
無けりゃ、出るまでジャンプするもんだろうが、なめてんのか、ゴラァ!」
そっちの方がよほど、そんな理屈が、と言ったところだが、筋金入りのパラ実生であるゲブーに、そんな理屈は通用しないのだった。
パートナーの地祇、バーバーモヒカン シャンバラ大荒野店(ばーばーもひかん・しゃんばらだいこうやてん)も、両手にハサミを持ってモヒカンの準備をしながら、フレーフレーア・ニ・キ! と声援を送っている。
『待て。大帝に無理を言うな。
カツアゲジャンプなら私がしよう』
ダイヤモンドの騎士が割って入り、その姿を見て、ゲブーは目を見張った。
胸元が大きく割れた、ダイヤモンドの騎士の鎧。
そこからは、Fカップのおっぱいがどどんと溢れていたのだ。
「……ひゃははは!
やっぱり俺様のおっぱいセンサーは正しかったじゃねーかよ!」
ケブーは勝ち誇って笑い出す。
ダイヤモンドの騎士がジャンプをする度に、その爆おっぱいが、上下に揺れ……
……などということが、現実に起きるわけがなかった。
気がつけば、ケブーはウミウシに襲われて瀕死の状態だった。
バーバーモヒカンが泣きながら助けを呼びに走り、龍騎士が駆け付けてくれて、助かったのだ。
「……生まれ変わったらモヒカンになりてえな……」
「しっかりして、アニキ! おっぱいも不死鳥だよ!」
今際の言葉に、バーバーモヒカンが必死に慰めた。
「想像の具現化か。
さすがナラカ、何でもアリか。
油断しないようにしねえとなー」
巨大良雄の防衛の為、ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)は、良雄に食い付くナラカの生き物を、片っ端から叩きのめして行った。
虚無霊とはまた違う、よく解らない魔物のような物達が、無数に貼りついている。
「食べて」いるようだが、良雄の体が欠けて行く様子はない。
何なんだと思っていたが、後で聞いたところによると、良雄は、その全体的な質量が縮み続けているというのだった。
ふと、違う気配を感じて顔を上げる。
屍龍の背に、奈落人の姿を見留めた。
こちらに向かっている。
「ふっ、俺向きの相手ってところか?」
奈落人が弓を放った。
「甘え!」
そのような遠距離から撃つ矢など、見極められる。
だが、躱したラルクの背後に、激痛が襲った。
「何!?」
振り返ると、背中に矢が刺さっている。
前方から撃たれたのだ。有り得ない軌道を通ったとしか思えなかった。
「ちっ、小細工を仕掛けやがって!」
背に矢を刺したまま、ラルクはだんっと足場(良雄の肩である)を蹴って、屍龍に飛びかかる。
奈落人は手綱を引いたが、龍の顎を蹴り上げて、その頭上に飛び乗る方が早かった。
「うらぁぁぁぁ!!」
一気に首筋を滑って、奈落人に拳を叩き付ける。
殴り飛ばされ、屍龍の背から落ちる奈落人の手から、弓を奪い取った。
「普通の弓だな……ん?」
びっしりと紋様が描かれてはいるが、形は普通の弓だ。
と思ったその時、弓がみるみる消えてなくなった。
ラルクの背に刺さった矢もだ。さすがに、傷は残っているが。
「……? どういうことだ」
ラルクは、奈落人が落ちた先を見下ろした。
白津 竜造(しらつ・りゅうぞう)は、深呼吸をひとつした。
「これが、ナラカの空気ってやつか」
デスプルーフリングの効果で、純粋なナラカの空気を吸っているのではないのだろうとは思うが、そこは気分というやつだ。
ここがナラカ。
ここに、ドージェがいる。
「ククク、いいねぇ、ゾクゾクして来やがったぜ!」
蹂躙飛空艇に乗って飛び出す。
ちょうどそこに居た小型の虚無霊を轢き潰しつつ、目は別の獲物を狙って飛び上がった。
片手に小型飛空艇の操縦桿を握り、片手に剣を握る。
屍龍に乗って向かって来る奈落人の姿が見え、にやりと笑った。
「俺向きの相手だな。
属性がどうのと考えるのは面倒くせえ!」
奈落人が使うのは、弓などの遠距離用武器だったが、威力が凄まじかった。
「……何だっ?」
龍鱗化した体でそれを受けながら、ビリビリとした痺れに顔を顰める。
毒ではない。だが見極めようとするのはすぐにやめた。
何だろうが、ぶった斬ってしまえばいいのだ。
相手より小型であることを生かして、動きを予測しながら高速移動で背後に回り込む。
「死ねえ!」
叩き斬り、斬りながら、目は既に次の獲物を狙っていた。
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