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【創世の絆】超巨大イレイザーを討伐せよ!

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【創世の絆】超巨大イレイザーを討伐せよ!

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迷子
「うーん……どこではぐれたかな……」
クラン・デヴァイス(くらん・でう゛ぁいす)と、アリス・クリムローゼ(ありす・くりむろーぜ)は、迷宮のマッピング中に、ヘビ型アヴァターラと出くわしてしまった。戦闘力のない彼らは、ヘビからひたすらに逃げたのだが、どうやらはぐれてしまったらしい。
「あそうだ、途中までは作ってあるからマップ見れば良いのか……あでもまたヘビにあったらまずいしな……」
逡巡するアリスの前に、コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)の巨体がぬっと現れた。アリスが驚いてキャッと叫ぶ。
「大丈夫、安心したまえ。私は蒼空学園のハーティオンだ。
 この巨大イレイザーを我らの移動要塞として使えればと、退治の傍ら調査にやってきたのだ。宜しく頼む」
「よかった、お仲間ね。あたしはアリス・クリムローゼ。よろしくね。……ところで、そのう……」
ちょっと言いよどむアリスに、ハーティオンのパートナーのラブ・リトル(らぶ・りとる)が元気良く声をかける。
「蒼空学園のアイドル、ラブちゃんよー♪」
ラブがそれ以上宣伝をしないうちに、急いで高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)が割って入った。
「鈿女よ。よろしく。で、何か言いかけていたのじゃない?」
「そのう……あたしのパートナーと……クランって言うんですけど……敵から逃げている途中ではぐれちゃって……」
「なるほど、探しに行きたいと?
 ならばちょうど良い。われわれもこのイレイザーの核についてのヒントを探している。
 鈿女博士とそのための内部調査に来たのだ。
 このニルヴァーナを平和目的で探索する者ならば誰でも仲間だ、協力しよう」
「どうもありがとう、助かります」
ハーティオンの言葉にアリスがちょっと改まった口調で礼を述べた。鈿女はシャンバラ電機のノートパソコンを操作しながら歩いている。実に器用だ。
「これを直接この移動要塞につなげればよかったんだけど、さすがに規格がねぇ。
 まあ、調査結果を入力して、即時分析できそうなものはしていくということで。
 あとなにか資料の採取よね。弱点に繋がる情報があるかもしれないし、出来れば持ち帰りたいところだわ」
「……なるほど」
感心したようにアリスが頷くと、ラブも負けじとアリスの頭の横に飛んできた。
「あたしにはこの巨大イレイザー……通称『ラブちゃんキャッスル』を操る最強の策があるのよ!!」
「ら、ラブちゃんキャッスル……?」
アリスが目を白黒させる。
「核に対してあたしの『幸せの歌』を聞かせてあげるのよ!! 歌ってのはね、ハートとハートのぶつかり合いなのよ!
 つまり、ハートでこのイレイザーを上回ればこいつを屈服させる事が出来るってわけ!」
全員が、ジト目でラブを見る。
「あ、何よあんた達その目は! あたしの歌の無限のパワーに勝てるものなんて、この世にないんだから〜♪」
「……あ、あそこに」
鈿女がわざとらしい声を上げ、通路の途中に蹲るクランを指差す。ハーティオンもギクシャクと大きな動きでそちらに歩み寄る。
「やあ、彼を探していたのではないか?」
「あ、そうですー!」
アリスが叫んでクランに駆け寄る。
「やーれやれ……助かったぜ……」
クランがつぶやいた。アリスが助けを連れて戻ってくるまでの間、ひたすら救助を待っていたのだ。アリスとはぐれてしまい、動くこともできないまま、彼は物の輪郭が辛うじて見える程度の闇の中で待っていた。その間に彼は一体だけはぐれたヘビ型アヴァターラに出会ったのだ。
(……コイツとコンタクトが取れて制御できるならばそれはそれで個人の手駒に出来るかも……?
 それをダシに何かしら恩が売れれば何かと有利か……。もちろん失敗する確率も高いだろうが……。
 どの道助けが来るまでやる事ないしな……)
クランはヘビ型アヴァターラに色々とコンタクトをとってみた。しかし、ヘビは攻撃すらせず、思いっきりスルーしてどこかへ行ってしまったのであった。
「……そう来るか」
 かくして一人いじけていたクランを無事保護し、ひと段落したところで、近くに来ていたななならの一行が合流した。情報交換をしている途中、北都、アキラは周囲に異様な気配が満ちてくるのをいち早く感じ取った。
「おーい、なんかヤバイ気配だよっ!」
北都の言葉にクランとアリス、ななな以外の全員が身構える。戦闘力のないアリスとクラン、それになななは、データ分析に余念がない鈿女とともに、ハーティオンとラブが護衛を引き受けることにした。アキラがかざすLEDランタンを持ち上げる。ぞぞぞぞ……という効果音が聞こえてきそうな感じのヘビ型アヴァターラが天井といわず床といわず、這い進んでくる姿が浮かび上がった。
「おいでになりましたね」
妙に丁寧にリオンが言い、イナンナの加護で全員を守護した。そこへシュウシュウという威嚇音とともに、天井から、壁面から、床から、ヘビたちがいっせいに飛び跳ねて襲い掛かってきた。リオンがサイドワインダーで飛びついてきたヘビの頭部を潰し、ルシェイメアの真空波がヘビを切り刻む。ラブが叫びで周囲のヘビにダメージを与え、ハーティオンと北都がファイナルレジェンドで止めを刺す。
「魔法でも物理でも効くみたいだな。そんなには強くないし……」
アキラが感想を述べる。
 だがいかんせん数が多い。潰しても潰しても次々とやってくる。ここで全員が釘付けはまずいと、唯斗が呼びかけた。
「コイツらは任せて核に急げ。こーゆーのを抑えて本隊を活かすのも忍者のお仕事なんですよ?
 ほら、俺のが上だって分からせてやるからかかって来い」
「わかった 後を頼む! ……気をつけろよ」
クローラが言って、撤退を告げた。ダークビジョンを使って全員を安全な通路へと案内してゆく。リカインが万一のために取っておいたレゾナント・アームズを発動し、手にした盾を振り回して時折追っててくるヘビを撃退している。セリオスが時折振り返ってサンダークラップを見舞い、リカインの援護を行った。
 どうにかヘビ型アヴァターラのいないエリアにたどり着き、全員が一息ついた。
「何かわかった?」
なななが鈿女に問いかける。
「確かに要塞としての機能はあるけど、どのように各部に命令が出ているのかがわからない。
 私たちの技術や伝達方法とは異質なものを使っているようなのよ」
「とすると……移動要塞をこちらで操作できる可能性は低そうだな」
ハーティオンが腕組みをしてうーんと唸った。