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地球に帰らせていただきますっ! ~2~

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地球に帰らせていただきますっ! ~2~
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 母の秘密
 
 
 
 ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)の父、ディーグ・ウェンボリスは優秀な魔法使いだが、それ故忙しくヨーロッパと日本を行ったり来たりしている。定期的に手紙のやりとりはしているが、直接会えるのは1年半ぶりだ。
 といっても、ゆっくり家に帰っている時間はないらしく、今は日本の東京にあるホテルに滞在している。
 雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)も一緒に地球に帰ってきたのだが、前に働いていた地方自治体に挨拶に行くからと、そそくさと姿を消してしまった。ディーグが苦手なので、きっと逃げたのだろう。
「ベアったら……」
 どうしてあんなに良い父が苦手なのだろう、と思いつつ、ソアは父親の滞在するホテルへと向かった。
 多忙を極める父のこと、不意に緊急性の高い用件が入ってしまうこともある。実際に会えるまでは心配だったけれど、ホテルの部屋ではディーグが両手を広げて迎えてくれた。
「お帰り、ソア」
「お父さん、ただいまですっ!」
 大好きな父親との再会に、ソアはディーグに駆け寄ると全身で抱きついた。
 
 今日の夕食は、久しぶりに父娘一緒。
 夕食を食べながら、ソアはパラミタでの出来事をディーグに報告していった。
 イルミンスール魔法学校に入学して、深く魔法を学べていること。
 学校では、良い友達や先生に巡り会えたこと。
 他の学校や、パラミタの様々な場所へ冒険に出かけたこと。
 東西に分かれたシャンバラで、東シャンバラのロイヤルガードに選出されたこと。
 ソアが順序立てて語ってゆく話を、ディーグは目を細めて聞いた。
「向こうでも色々あったようだが、ソアはパラミタでよく学び、しっかりやっているようだな」
 娘のためになると送り出したとはいえ、親としてはやはり心配だったが……と言うディーグにソアは元気に笑ってみせる。
「時には困難にぶつかったりもしました。けれど……みんな良い経験で、大切な思い出です!」
 そんなソアをディーグは嬉しそうに見つめた。
「良い顔つきになったな。なんだか母さんに似てきたんじゃないか? はっはっは……」
「お母さんも、お空の上から見守っていてくれているでしょうか」
 小さい頃に亡くなった母を思い、ソアが宙を見上げる……と。
「そうだな、もう話してもいい頃か」
 ディーグは軽く咳払いすると、改まった口調でソアに言った。
「これまでソアには、『母さんはお空の上に旅立った』としか言っていなかったが……実はその『お空』というのはパラミタのことなんだ」
「え?」
 よく意味が分からず、ソアは首を傾げる。
「お前の母さん、実は守護天使なんだ。今もパラミタのどこかで生きているんだぞ」
「って……えぇーっ!?」
 思わず食事を噴き出しそうになったソアに、ディーグは満面の笑顔を向けた。
「こらこら、行儀が悪いぞ」
「も、もう。そうやって人を食ったようなことをするから、ベアにも苦手がられるんですよー!」
 そう言って抗議しながらも、ソアはパラミタのどこかにいるという母のことを思う。
 てっきり、小さい頃に亡くなってしまったと思っていた母が生きていたのは嬉しい。それも、今自分が暮らしているパラミタのどこかにいるだなんて。
(いつか会えるといいなぁ……)
 その日を夢見るソアの様子に、ディーグはほっとした笑みを浮かべた。
 ソアも、母の真実を受け止められるほどに成長したのだ、という感慨をおぼえながら――。