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ハロー、ゴリラ!(第1回/全1回)

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fairyland【6】


 多くのコミュニティを見てきた。
 主義主張を唱え活動するコミュは数あれど、これほどの重火器を揃えるコミュはそうお目にかかれない。
 ここから想像することが出来ることはひとつ、それ相応の資金源が森ガールにはあるということだ。
 戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)は乱戦模様の居住区画を人知れず動く。
「となれば、ここを潰しても組織はすぐに復活してしまう。我々が叩くべきはその裏側……」
 必要なのはスポンサーとなってる資金源や武器供給元の情報だ。
 そこから手を回し、活動資金を絶つことができれば、疲弊した組織を元に戻すのは難しくなる。
 小次郎は足を止めた。目の前の家屋に森ガールの影、銃を構え周辺を哨戒してるようだ。
「この状況下で防衛線をこんなところに……。それだけここには重要なものがあると言うことですか」
 しかし、ヘタに手を出して応援を呼ばれても面倒だ。どうすれば……。
「見つかる前に済ませてしまえばよいのですわ」
 はっと後ろを振り返ると、フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)が微笑んでいる。
 次の瞬間、撲殺天使メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)が森ガールをバットで強打。
「殴り捨てご免なのですよぉ〜」
 倒れる彼女を踏み越え、もうひとりの森ガールに迫る。
「環境保護を大義名分に掲げようと犯罪は犯罪なのです。数々の悪行三昧、このまま捨て置けませ〜ん」
「ふん……、だからわたし達をやっつけに来たってわけなのねぇ……!」
「やっつけるだなんて……。私はバットを使って『説得』に来ただけですよぅ〜」
 たぶん人はそう言う風にその単語を使わない。
 しかも、アゲハ特製のデコバットではなく、使い慣れた撲殺天使専用野球のバットである。
 真っ赤に塗られたバットは、殴り倒した相手の血を塗り込んだものだとか、そうでないとか……。
「気を付けて、メイベル。屋根の上にも森ガールがいるよっ!」
 不意にセシリア・ライト(せしりあ・らいと)は叫んだ。
 殺気看破で伏兵に気付き、後ろの屋根を指差すも……それと同時にロケット弾がこちらに発射された。
 しかし、メイベルは落ち着いたもの。バットを振りかぶり、凶悪過ぎるピッチャーライナーを返す。
 吹き飛ぶ屋根、そのドサクサに残った森ガールも2ベースヒット、蹴散らす。
「野球で私に挑もうなんて100年早いのですよぉ〜だ」
「よし、罠は仕掛けられてないみたい。人が来る前に頂くもの頂いちゃおうよっ」
 セシリアの先導で屋内に侵入、見たところ、ここは森ガールの会計室のようである。
 レトロな花柄カバーをかけられたPCを調べ、フィリッパは犯罪の証拠を集める。
「これは、先日ニュースになったテロの脅迫文……あ、こっちには爆弾設置の手順がこと細かに……!」
「収穫があったようですね」と小次郎。
「ええ、これだけの証拠があれば、空京警察も本格的に取り締まりに動くはずです。そちらはどうですか?」
「こっちも怪しい名簿が見つかりました。見て下さい」
 名簿は思ったとおり資金提供しているスポンサー一覧のようだ。
 先ほどのパークレスファミリーの名もある……が、組織による出資はそこぐらいで、あとはすべて個人出資者である。
 しかも、どこかで見た名前ばかり、有名ハリウッドスターの名前がズラリと並んでいるのだ……!
「そう言えば、スターの中にはイメージアップのため、寄付やボランティアに精を出す人も少なくないと聞きます。おそらく環境保護団体と言う建前に騙され、よく調べもせずに寄付金を出してしまったのでしょう。嘆かわしいことです」
 小次郎は名簿とメールのデータを手持ちのテクノコンピューターへ移す。
「ですが、ここにある犯罪の証拠を突き付ければ彼らも行いを改めてくれるはずです」
「……そうであってほしいですわ。でも、小次郎様、スターの方の連絡先はご存知なのですか?」
 至極当然の事実にはっとする。
「じ、事務所に電話したら……おしえてくれないですかね……?」