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ハロー、ゴリラ!(第1回/全1回)

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ハロー、ゴリラ!(第1回/全1回)

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fairyland【2】


 森ガール・コミュニティ『カフェ・くるみボタン』
 コミュニティの一角にあるカフェは森ガール達の憩いの場となっている。
 既に戦闘が始まったことに気付かず、まったり単館系映画の話をしながら、ハーブティーでお茶会中。
 ミス・ポテトヘッドこと五月葉 終夏(さつきば・おりが)は物陰から彼女達の様子を窺っている。
 ドルイドである彼女は風貌も手伝って、特に銃弾を浴びせられることなくここまで潜入することが出来たのだが……。
「どうやって仲間に入ろう……。やっぱり挨拶は大事だよね」
 ううん、と咳払い。
「こんにちはードルイドでーす」……じゃシンプル過ぎるかな。
「ちわー! ドルイドってるかーい?」……いやいや、フレンドリィ過ぎるでしょう。初対面だし、丁寧に。
「ごきげんよう、森ガールの皆様。本日も良いお天気ですわね、オホホホホホ……」……キャラが違うよ。
「なにしてんの?」
 ぎくり。振り返るとミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)が立っていた。
 ゆるゆるワンピース重ね着、ニットとマフラー、ぺたんこ靴で森ガールになりすましている。
「お、驚かせないでよぉ……。あのお茶会の仲間に入れてもらうための挨拶を考えてたんだけどね……」
「そんなの大丈夫。意外と普通に仲間に入れてくれるよ」
 ミーナの言う通り、席に着くと特に何か聞かれることもなく、お茶会に忍び込むことができた。
 森ガールと言うのは基本的に『人見知り』をする人が多い。あんただれ、なんて聞けるヤツはいないのだ。
 彼女達はちょうど空京センター街の話をしているところだった。
「なんかねぇ、やだよねぇ、あの人たち。すごく乱暴だし、言葉遣いも汚いしぃ……苦手だなぁ」
「うん、わかるー。センスないんだよねぇ。都会に住んで自然を顧みたりしないし、意識が低いよねぇ」
「あのぅ」と終夏。「言うほどあの人たちも自然をないがしろにしてるわけじゃないと思うよ?」
 そう言うと、落ちてる枝や葉っぱを集め、森ガールの頭をせっせと盛っていく。
ほら、君の頭にもギャル達と同じ森(盛り)が出来た。彼女達もいつも森(盛り)を忘れずに生きているんだよ
「えー、そのわりには毛皮好きだし、ゴミは散らかすしぃ、ガングロにしたり金髪にしたり自然に逆らってるよぉ?」
「そうだよー。そう言うの詭弁って言うんだよぉ。本で読んだもん」
「そ、そんなこと言わないで、センター街を攻撃するのはもうやめようよ」
 そう言うや、森ガールのひとりがアーミーナイフをテーブルに突き立てた。
「ひええ!」
「あ、ごめんなさい。あなたが思いもよらないことを言うものだからビックリしちゃったわ」
 説得に失敗した終夏の肩を叩き、ミーナは森ガールたちにお茶の続きを促す。
「ほら、差し入れの『朝顔の種』だよぉ。かわいくていいよねぇ、美味しいんだよぉ」
「あら、素敵だわぁ。森の小さなリスになったみたい。うふふ」
 パクパク食べる彼女達に、ミーナはニヤリ不敵な笑み。その理由はのちほど明らかになる。
「ところで、皆さん。わたくしから質問があるのですけど、よろしいでしょうか?」
 ここで、同じく変装して潜入してる荒巻 さけ(あらまき・さけ)が動いた。
 前ボタンで裾がフリルのシャツワンピース+ボヘミアンロングカーディガン。
 更にかごバッグ、ぺったん靴、頭に花飾り……そして、前髪パッツン、徹底した森ガールファッションである。
 おすすめカフェの話題や撮り溜めた猫の写真を見せて、自然と仲間に溶け込んでいた彼女。
 しかし、突然眼光に鋭い光が宿る。
「みなさまとーってもお強いですが、どうやってお強くなられたんですの? イメージトレーニング? 素振りとかですの? まさかモンスターを倒したりしていないでしょうし……。モンスターだって自然、ですものね。わたくしったら当たり前のことをいってしまって……。申し訳ありませんの」
 モンスターは倒しても良いのか、そこに争点を持ってくることで、彼女達の信条の矛盾を暴くつもりらしい。
 さけは思う。
 エロテロリストだかエコテロリストだか知りませんが、重火器をもった手練れの集団ですものねー。
 意思を引き継がれたらテロは終わりませんし。宗教ちっくなら、その信条から崩していくのが一番ですの。
 これで上手く仲間割れを起こしてくれればしめたもの……。
 と、若干ドス黒い彼女だが、どうもシボラサイドで嫌なことがあったようである。
 ところが……彼女にとってすこし誤算があった。
「もしかして、わたし達がモンスターを倒してレベルアップをしてるんじゃないかって、気にしてるの?」
「心配しなくてもそんなことしてないよぉ。わたし達人間としか戦わないもん」
「え……?」
 つまり人間を倒してここまで強くなったと、それはそれで大問題な気がする……。
 彼女達の信条のどこかに矛盾はあるのかもしれないが、少なくともモンスター関連ではそれはなさそうである。
「大変よ、侵入者よ!」
 ふと、声。森ガール達がその方向を見ると、二人の森ガールに引き立てられ、ひとりの男が連行されている。
 男はアイデンティティがメガネしかない悲しい男如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)
 連行してるのは変装したアルマ・アレフ(あるま・あれふ)ラグナ・オーランド(らぐな・おーらんど)だ。
「森の中をうろついていたのよ。これから尋問して何をしていたのか聞き出すわ」とアルマ。
「あら大変……、そこのお猿さんも?」
 お猿さん……怪訝な一言に振り返ると、なるほど、たしかに一匹の猿があとを着いてきている。
 なにか怪しいものを感じたが、アルマは「勝手に着いてきたみたい」と適当に誤摩化し、三人はカフェの裏に向かう。
「上手くいったわね」
「アルマちゃんに任せるのは心配でしたけど……、あんまり疑り深くない人たちで助かりましたわ」
 ラグナの言葉にぴくり反応するアルマ。
「どういう意味よ?」
「だってアルマちゃん、ナラカに行って以降ヤラレ役が板についてるから、変なことになるじゃないかと……」
「だ、誰がヤラレ役かァァ!!」
「ば、ばか。静かにしろ」と慌てて祐也は口を塞ぐ。むぐぐぐ……。
 それから、ところで……と彼はラグナに尋ねた。
「仕事なら近場にだってあるだろうに、なんだってこんな依頼を引き受けることにしたんだ?」
「空京でアゲハさんに声を掛けられたのです。あの人絶対宇宙人ですわ。あのそびえ立つ頭で宇宙にいる仲間と交信してるんですよ。逆らえば攫われて全身ペガサス盛りに改造される……だから、この依頼を引き受けることにしましたの」
「ああ、あっそう……」
 変な電波でも受信したんだろうかと首を捻りつつ、目標の武器庫を探す……とカフェのすぐ裏に見つけた。
 整頓された木棚に、ロケット弾や手榴弾、各種重火器がブティックの棚のごとく美しく並んでいる。
「ここを押さえれば敵戦力が半減するのは確実……。早いとこ済ませてしまおう」
 三人は手分けして、機晶爆弾を設置していく。
 お決まりの展開では設置し終わったところで敵に見つかるが、表の森ガールはお喋りに夢中で来る気配はない。
 随分危機感がねぇなぁ……と拍子抜けしつつ、祐也はそこから少しはなれ、起爆装置に手を置く。
「さて、とっとと破壊して撤退だ」
 スイッチ押し込んだその時、あっ、と思い出したようにラグナは言った。
「爆弾は機晶技術と先端テクノロジーで限界まで爆発力を上げる改造をしてますから気をつけて下さいね?」
「え?」
 さっきから不思議に思ってたけど、ラグナとアルマが妙に離れて避難してるのはそのためだったのか……!
 忠告はあまりにも遅し。予想外の大爆発に吹き飛ばされ民家に激突。動かなくなる。
「あらあら……」
「あらあら、じゃないわよ! ちょっと祐也しっかり……!」
 駆け寄ろうとしたアルマ、が、爆発で吹き飛んだ倉庫の破片が脳天を直撃。動かなくなる。
……やっぱり板についてますわ、アルマちゃん