リアクション
コクピット内ではセルシウスが美羽とアリサからイコンの操縦指導を受けていた。
「はい、そこで操縦桿を戻して、ペダルを半分だけ踏んで!」
美羽がセルシウスの横から指示を出す。
「こうか?」
ガクンッと強い振動がイコンのコクピットを襲う。
「そなた、戻し過ぎだ!」
サブパイロット席に座ったアリサが怒る。
「ぬぅ……難しいものだな」
「初めてにしたら上手だと思うよ」
美羽が褒めると、アリサが突っ込む。
「そうか? 翔でももう少し上手かったぞ? あ、コラ!! 私をむち打ちにする気か?」
またしても大きく揺れたイコンにアリサが苦情を述べる。
「それにしても、美羽のグラディウス。イーグリット・アサルトタイプにしては反応がシビアだな」
「サブパイロットはベアトリーチェ仕様だから。セッティングが翔やアリサのイーグリットとは違うんだよ」
「セッティングはどう調整しているのだ?」
「えーっと、ベアトリーチェが言うにはバランサーを……」
暫し続いた美羽とアリサのイコン談義にセルシウスが口を開く。
「しかし、こうして龍以外で空を飛ぶというのは良いものだな」
「龍でも飛んでたの?」
「……そもそも龍自体が駄目だったのだ」
前方を見つめるセルシウスが首を横に振る。
「駄目? どうして?」
「恥ずかしい話だが、私は乗り物全般に酔いやすい体質でな」
「……」
「……」
アリサと美羽が顔を見合わせる。
「……イコンも乗り物、だよね?」
セルシウスが二人に向かって青い顔で振り返る。彼にしては珍しくサムズアップ等しながら。
「そなた……まさか……」
「美羽さん達、随分急いで急降下してきますね?」
下でイコン操縦訓練を見ていたベアトリーチェが声をあげ、コハクはデジタルビデオカメラを取り出す。
「カメラなんかでどうするのよ?」
「セルシウスの操縦指導が終わったら、これで記念撮影しようかと思って、グラディウスをバックにして」
智緒に笑うコハク。
……現に写真は撮られた。青い顔をしたセルシウスが警備員の小屋の手洗いから戻ってきた後で……。そして、その写真に収まるアリサのセルシウスに対する視線は、筆舌に尽くし難いものだったらしい。