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シャンバラ一武闘大会

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シャンバラ一武闘大会
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リアクション

 

第六十一試合

 
 
『さあ、第一回戦も残り少なくなって参りました。続いては、六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)選手対、神崎 瑠奈(かんざき・るな)選手です』
「よろしくお願いしま〜す」
 蒼空学園の制服を着た神崎瑠奈が、ちょこちょこっと武舞台に駆けあがってきて挨拶した。先輩の神崎輝たちに倣って、頭には青い薔薇の髪飾りをつけている。
「六本木優希です。良い試合にしましょう!」
 六本木通信社の腕章をつけた六本木優希が、槍を掲げて応える。
『それでは試合開始です』
「いっきまーす」
 開幕早々、神崎瑠奈が機晶爆弾を投げつけてきた。
「いきなり!?」
 あわてて、六本木優希がヴァーチャーシールドをファランクス体勢で構えて防御を固める。爆風が、凄い勢いで吹き抜けていった。
「でも、二個は持ってなさそうですね」
 冷静に状況を判断すると、六本木優希がシールドに身を隠しながら接近していった。
「アテナ、お願い!」
 神崎瑠奈が、守護霊アテナを呼び出す。その攻撃で、六本木優希の盾が炎と共に弾き飛ばされた。
「何、今の? フラワシ?」
 見えない敵からの攻撃に、即座に六本木優希があたりをつける。
これで、どうですっ!
 光条兵器「深き森の杭」を呼び出した六本木優希が、ライトブリンガーを駆使して光のパイルバンカーを撃ち込んだ。
「きゃっ!」
 フラワシを貫通され、ピンポイントで狙われた神崎瑠奈の花飾りが砕け散る。
 ダメージを受けた神崎瑠奈が、ばったりと倒れて動かなくなった。
「えっ、花だけのはずだけど、大丈夫?」
 六本木優希が、倒れた神崎瑠奈に手をさしのべた。死んだふりがばれたのかと、神崎瑠奈がおずおずと立ちあがる。
 そして、六本木優希と握手をすると、一目散に神崎輝たちの方へと泣きながら走って行った。
「あーん、負けちゃったですぅー」
『勝者、六本木優希選手です』
 
 
第六十二試合

 
 
魔導書 『複韻魔書』(まどうしょ・ふくいんましょ)選手の不戦勝です』
 
 
第六十三試合

 
 
『続いては、ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)選手対、メイちゃん選手の戦いとなります』
「少し腕が鈍っているかもしれませんので、ちょっとつきあっていただきましょう」
 ゆっくりと武舞台に上がってきたウィング・ヴォルフリートが言った。胸には、首から提げている神獣鏡が鈍く輝いている。
「うん、いいよー。後で、ちゃんと御挨拶にいくねー」
 頭に紙風船をつけたメイちゃんが、あどけない表情で言った。
「ちょっと待ってください、あの子と戦うんですか?」
『もちろんです。なめてかかると危ないかもしれません』
 メイちゃんが、見た目子供なのでちょっと動揺したウィング・ヴォルフリートに、放送席から湯上凶司が答えた。
『さあ、試合開始です』
 時間も押し迫ったので、シャレード・ムーンが容赦なく試合を開始する。
「こんにちはー」
 笑顔でメイちゃんが突っ込んできた。
「仕方ない、小手調べといきますか」
 相手の力量を確かめようと、ウィング・ヴォルフリートが最低限の動作で真空波を放った。
 パン!
 あっけなく、メイちゃんの頭の風船が割れた。
「あれれれれ、御挨拶する途中だったのにい」
 しまったあと、メイちゃんが立ち止まる。
『勝者、ウィング・ヴォルフリート選手です』
 
 
第六十四試合

 
 
『さあ、いよいよ、第一回戦、最終試合になりました。秋月 葵(あきづき・あおい)選手、鑑 鏨(かがみ・たがね)選手、どうぞ!』
「絢爛登場! ゴチメイ・レッド! なんちゃって」
 武舞台に勢いよく駆けあがった秋月葵が、元気よく拳を上に突きあげて叫んだ。その姿は、ココ・カンパーニュのコスプレである。先日、フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』とお揃いで買ってきたおニューの服だ。紙風船も、ミニシルクハットの先につけている。唯一違うところと言えば、胸の部分のパットがあからさまに詰め込んでいるのが分かるというところだろうか。
「パチモンだ」
「パチモンですね」
「だから使用料を……」
「版権取ってあったっけか?」
「いいんじゃないの、まねでもー」
「みなさん、何をこそこそと……」
 円陣を組んで何やら悪巧みしているゴチメイ隊に、アルディミアク・ミトゥナが困ったように突っ込みを入れている。
「なんとも派手だな……」
 胸元に錆びた鏡を下げた鑑鏨が、秋月葵をじっと見つめて言った。
『さあ、試合開始です』
「試合だもん♪ だから全力でやっちゃうよ〜♪」
 秋月葵が、星拳と同じデザインにした手甲のついた手でパンチを繰り出した。その動きで弾き飛ばされた念動球が鑑鏨にむかって行き、レーザーを放つ。
「むっ」
 でレーザーを受けとめた鑑鏨が、で念動球を叩き割った。
「やるよね。だったら……」
 秋月葵がパチンと指を鳴らした。鑑鏨の背後から忍び寄ったフラワシが、彼の身体を押さえて動けなくする。
「これは……」
「ゴメンね、手加減できなくて……。私のフラワシは凶暴なんだ……」
 秋月葵が空飛ぶ魔法で空に舞いあがった。
「全力全開! スターライト・バスター!」
 まさに必殺の一撃を放とうとする。だが、その瞬間、二つの銀の影が秋月葵に体当たりして、空中から叩き落とした。鑑鏨のシルバーウルフたちだ。
「あいたたた……」
「残念だったな」
 お尻をさすっている秋月葵の紙風船を、鑑鏨が鞘でパチンと潰した。
「ちぇ、胸バットがずれなければ負けなかったのに……」
 そう言いながら、秋月葵が周囲に飛び散った胸パッドを拾って服の中に入れなおした。
『勝負ありました、鑑鏨選手の勝ちです』