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新ジェイダス杯第1回

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新ジェイダス杯第1回

リアクション

 

6ターン

 
 
『さあ、波乱の最後尾グループに続いて、トップグループも激戦が続いています。
 なんと、ここに来て、リース・エンデルフィア選手、ついにトップに躍り出ました!』
「お師匠様。お師匠様の遺志は、この私が継ぎます。ですから、迷わず成仏してください!」
 ぶつぶつと祈りを捧げながら、リース・エンデルフィアが一心不乱に飛び続けている。
 
    ★    ★    ★
 
「凄いな、いつの間にかトップだぜ、じいさん」
 スクリーンを見ていたナディム・ガーランドが、救出されて観客席に戻ってきていたアガレス・アンドレアルフスに言った。
「我が輩のボディガードとしては落第じゃ!」
 まだ髪の毛からボトボトと海水を滴らせながら、アガレス・アンドレアルフスが叫んだ。
「まったく、このままでは、我が輩ではなく、リースの奴が大英雄になってしまうではないか」
「まあまあ。応援しましょうよぉ」
 ぶつぶつ言うアガレス・アンドレアルフスを、セリーナ・ペクテイリスがなだめた。
「くそう、あの子買っときゃよかった……。はっ、今からでも間にあうかも」
「だから、地道に稼ぎましょうよ……」
 悔しがる葛城吹雪の背中を、コルセア・レキシントンが困ったようにポンポンと叩いた。
 
    ★    ★    ★
 
『さあ、トップグループ、二番手につけたのは神代明日香選手です。その後を、すばらしい飛びを見せたカレン・クレスティア選手が追います。その後は、確実な飛びに専念した緋桜ケイ選手が続き、天城一輝選手は5位に順位を落としてしまいました。けれども、まだまだトップ争いは予断を許しません。
 続く第二グループは、その自信通り慎重さも兼ね備えたテクニックで機雷群を突破してきた雪国ベア選手とソア・ウェンボリス選手が、前を行くハーリー・デビットソン選手を抜いて順位をあげています。
 同じく、彩音・サテライト選手のトラップ回避に導かれた綺雲菜織選手、ハーリー・デビットソン選手に追いついた』
「クルクル飛んで、面白かったよね。あっ、あれ、人形しか乗ってないのになんで走ってるの?」
 レースを楽しんでいる彩音・サテライトが、横を走っている見た目ただのバイクにしか見えない機晶姫のハーリー・デビットソンの方へと手をのばした。
「これ、ばっちいから触ってはいけないのだよ」
 あわてて、綺雲菜織が、彩音・サテライトの手を引っ込めさせた。
「ドルンドルンドルンッブォンッ!」
 オイルは男の勲章だぜとハーリー・デビットソンが反論したが、当然のように、誰にも伝わらなかった。
 
    ★    ★    ★
 
『さあ、後続も、機雷群に突入します。
 おおっと、この状況で、佐々木弥十郎選手、エリシア・ボック選手にしかけるか!?』
「ライバルを蹴落とすなら、このタイミングだねえ。ワタシの歴戦の魔術で……」
「そんな物に引っ掛かるものですか!」
 佐々木弥十郎の殺気を逸早く察知したエリシア・ボックが、パラミタイルカで一気に水中に飛び込んで逃げようとした。だが、勢い余って、そのまま水中機雷にもろに激突する。
「しまった、ここでは水中にも罠があるのでしたわ……!」
 今さらながらに思い出すが遅い。爆発した機雷からピンクのバブルが噴き出して、あっという間にエリシア・ボックをつつみ込んだ。そのまま、凄い勢いでピンク色の発泡で海が沸き立つ。
「こ、これは……。うわあ!?」
 突然海中から噴き出してきた泡に、ふいをつかれた佐々木弥十郎が呑み込まれた。
 たかが泡だが、なんだかいい気分になって、二人とももうレースのことなどどうでもよくなる。
「あははは、泡、気持ちいいですわ。まるで泡風呂です」
「これも運命かあ、ははは。楽しいねぇ
『――ちょっ、馬鹿かおまえ。おい、しっかり……だめだ、こりゃあ』
 驚いて佐々木八雲が佐々木弥十郎の頭の中で叫んだが、返ってくるのはめくるめくピンクの思考だけである。
「……というわけで、お姉ちゃんは泡風呂に入って、負けちゃいました。おわりっと」
 ノーン・クリスタリアが、携帯で試合結果を御神楽陽太に報告する。すぐにメールで返信が来た。
『テレビで一緒に見てました。残念ですが、怪我がなかったので何よりです。頑張ったねと伝えておいてください』
 
    ★    ★    ★
 
『またもやリタイアを出してしまった機雷エリア。今大会最大の鬼門のようです。
 さあ、ラストグループは、これからどうやってこの難関をクリアしていくのでしょうか。
 ほぼ一列となって、各選手進んでいます。
 グループ先頭はジュレール・リーヴェンディ選手。パートナーのカレン・クレスティア選手とは、ずいぶんと離れてしまいました。
 12位は笹野朔夜選手、13位は皆川陽選手ですが、少し小競り合いがあったようです』
「御主人様のために、またライバルを蹴散らしますよ」
 テディ・アルタヴィスタが、前を文字通り走っている笹野朔夜(笹野桜)にむかって突風を放った。これで足許をすくおうというのだ。
『――ん? 殺気です! 桜さん、気をつけて!』
 逸早くテディ・アルタヴィスタの攻撃を感じた笹野朔夜が、笹野桜に注意をうながした。
 ほとんど反射的に、笹野桜がバーストダッシュで横に移動する。
 直後に、笹野朔夜(笹野桜)がいた場所を突風が吹きすぎて、激しく波を起こした。
「このワタシの走りを邪魔しようなどと、なんと無粋な!」
 懐から取りだしたティアマトの鱗製の扇を広げると、ジャンプ一番、とって返した笹野朔夜(笹野桜)が伸身宙返りをして、上から皆川陽にむかって扇を叩きつけようとした。
「御主人には、傷一つつけさせはしない!」
 華麗な笹野朔夜(笹野桜)の空中技に、テディ・アルタヴィスタが即座に反応してブレイドガードで鋭いエッジのある扇を弾き返した。その刃を起点として、半回転した笹野朔夜(笹野桜)がテディ・アルタヴィスタたちとすれ違って海上に着水する。滑るようにしてのばした脚を回し、水飛沫を上げながら反転して再びかけ始める。そうしないと沈んでしまうからなのだが、その華麗な動きは、まるで水面が硬い岩でできているかのように確かなものであった。
 
    ★    ★    ★
 
「いったい、前の人たちは何をやっているんだもん」
「そんなことより、後ろの人をなんとかしてほしいですぅ」
 笹野朔夜(笹野桜)たちの戦いに見とれていた秋月葵に、魔装書アル・アジフが泣きそうな声で言った。
 さっきからジーッと注がれ続ける南鮪の視線に耐えかねて、必死にお尻の所を手で押さえている。
 魔法少女の衣装はミニスカートだとはいえ、パンツが見えてしまうわけではないのだが、なにしろ今はパラミタイルカにまたがって乗っている格好だし、当然海水でびっしょりと濡れてしまっている。
「シューティングスター☆彡で、やっつけちゃってもいいですかぁ」
「そんなことで遅れるわけにはいかないんだもん。ただでさえ、ブービーなんだから。一気に前に出て、パンティー番長をおいてきぼりにするんだよ」
 そう言うと、秋月葵は必死にスピードを上げた。
 
    ★    ★    ★
 
『現在の順位です。
 すでに3割近くの選手が脱落するという激戦となっています』
 
1 △リース・エンデルフィア
2 ▼神代明日香
3 △緋桜ケイ 悠久ノカナタ
  △カレン・クレスティア
5 ▼天城一輝
6 △ソア・ウェンボリス 雪国ベア
7 ▼ハーリー・デビットソン
  △綺雲菜織 彩音・サテライト
9 ▼佐々木弥十郎 リタイア
  △エリシア・ボック リタイア
11 ジュレール・リーヴェンディ
12 笹野朔夜
13△皆川陽 テディ・アルタヴィスタ
14△秋月葵 魔装書アル・アジフ
15△南鮪