蒼空学園へ

イルミンスール魔法学校

校長室

シャンバラ教導団へ

「死の予言」を打ち砕け!

リアクション公開中!

「死の予言」を打ち砕け!

リアクション

■□■

===
汝、師王 アスカ(しおう・あすか)は、
恩人であるジェイダス・観世院(じぇいだす・かんぜいん)をかばって、
ジェイダスを憎む元愛人の一人の男に殺されるであろう。
===


(死の予言を見て考える限り私がジェイダス様と会わなかったら
死なないで済むような内容だったけどぉ……
これって裏を返せば私が守らないとジェイダス様が死ぬって事……よね)
ジェイダス・観世院(じぇいだす・かんぜいん)を守るため、
師王 アスカ(しおう・あすか)は、
パートナーの
蒼灯 鴉(そうひ・からす)
オルベール・ルシフェリア(おるべーる・るしふぇりあ)に協力を求めて、
一計を案じることにした。

「ジェイダス様! 私とデートしませんか?」



こうして、鴉とオルベールは、
仲良く並んで歩くアスカとジェイダスの尾行を続けている。

「まさか、
あの美を愛するジェイダス理事長が
お子様体型の童顔アスカの誘いに応じるなんて!
絶対、死の予言を阻止しなきゃね!」
気合いを入れているオルベールと対照的に、
鴉は、偽デートの様子をにらみつける。
「……」
(ああ、愛人の前に俺が殺してえよ……)
恋人であるアスカがジェイダスと歩く様子に、
鴉は嫉妬の炎を暗く燃やす。

それには気づかず、
アスカは、庭園を歩きつつ、ジェイダスに耳打ちする。
「ジェイダス様、
つかぬことをお聞きしますけど……。
以前、別れた方で、ジェイダス様を恨んで……というか、
恋い慕いすぎておかしくなってそうな方に心当たりありませんか?」
「さて。
君は、夜空に輝く星の数を数えたことがあるかな?」
「ジェイダス様……」
がっくし。
そんな擬音を出しつつ、アスカは脱力した。

そうした時だった。

「うわあああああ!
ジェイダス様!
僕より綺麗な男ならともかく、女なんかと!」
刃物を持った若い男が飛び出してきた。

アスカが、ジェイダスをかばって立ち、
次の瞬間、くずおれる。
ワンピースからは、赤い液体がしたたり落ちた。

「きゃああああああああああああ!?」
オルベールが立ちすくんで絶叫する。

「……殺す!!」
鴉が飛び出し、ジェイダスの元愛人を打ち据える。
手からナイフが弾き飛ばされ、
元愛人は組伏された。

「おお、なかなかだね」
「ボケッとしてるんじゃねえ!
アスカを早く!」
鴉がジェイダスに叫ぶ。

「そうだった。
せっかくのかわいらしいワンピースが台無しになってしまったね」
ジェイダスが、倒れたアスカに手を差し伸べる。
「は、何言って……」
鴉が呆然とする中、
アスカが、土埃を払って立ち上がる。
「ありがとうございます、ジェイダス様。
ベタでしたけど、効果はありましたねー」
アスカは、血糊と分厚い板を服の下に仕込んでいたのだった。

「でも、やっぱりさすが、見抜いてらっしゃったんですねー」
「私も、この芝居に参加すべきか、迷ったのだけれどね。
君のパートナーをこれ以上、驚かせるのは、美しくあるまい?」
「あはは、たしかに、二人には黙ってて悪いことしましたー」
「アスカ、おまえ……」
鴉が、組み伏せている男の身体に負荷をかける。
「ぎゃああああああ」

「あ、そうそう!
あなたには言いたいことがあったのよぉー」
アスカは、元愛人を立たせると、
思い切り平手打ちを喰らわせた。
「な、なにをする!」
「それはこっちの台詞よぉ!
こんな事する位なら、
ジェイダス様をもう一度振り返らせる位の
気概をみせなさいよぉ!」
口をぱくぱくさせる元愛人に、アスカが続ける。
「この人は確かにちょっと自由気ままな猫さんだけど
『美』にはいつだって平等よ〜?
一番いい方法はねぇ……自分を手放した事を後悔させるほど美しくなる事よ♪」
ウインクしたアスカが、ジェイダスに振り返る。

「ね、ジェイダス様♪」
「ああ。もちろんだとも」
ジェイダスが鷹揚にうなずいた。
「えへへ。
ジェイダス様〜
お礼はほっぺにちゅーでいいですよぉ?
なんちゃって〜……」

「なにが『美』だ……」
鴉が低い声で、アスカとジェイダスのやり取りに割り込んだ。

「こんなわけのわからない茶番劇に俺を巻き込みやがって!
こうなったのは全部、おまえのせいだ!
責任を取ってもらうからな!」
「う、うわあああ、やめろおおおお!?」
鴉は、元愛人の男を押し倒すと、
やり場のない怒りをぶつけ、本気で殴り始めた。

「あー……。
な、なんだか大変なことになっちゃったみたい?」
アスカが困ったように言う。

その近くで、オルベールは、
まだ、抜け殻のように呆然としていた。
アスカが無事だったのにほっとして、力が抜けてしまったのだった。

「ふふ。
なかなか君らしくて元気のいい舞台だった。
楽しませてもらったよ。
それに、身を持って私をかばってくれたこと、礼を言うよ。
ありがとう」
ジェイダスは、アスカの頭をなでて礼を言った。
「ジェイダス様……♪」
幸せそうにするアスカだが、
すぐ後ろでは、鬼の形相の鴉が、ジェイダスの元愛人の男を殴り続けていた。