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仲秋の一日~美景の出で湯、大地の楽曲~

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仲秋の一日~美景の出で湯、大地の楽曲~

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「まず、どの店に入ればいいのかわからない」
 ロイヤルガード宿舎前で、皇 彼方(はなぶさ・かなた)は腕を組んで考え込んでいた。
「そうなんだよね。女の子向けのものを取り扱っている店がいいんだろうけれど……男2人で入るのって変だよね」
 その隣で、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)も、はあと息をついた。
 2人は、それぞれのパートナー、そして恋人でもある相手、テティスと、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)に贈るプレゼントを買いに、街に訪れていた。
「となるとやっぱり、目指す店は……」
「百貨店かな」
 彼方とコハクは顔を合せて頷き合うと、百貨店に向かって歩き出す。
 テティスと美羽はロイヤルガードの任務で、今日は出かけている。
 女性向けの任務ということもあり、彼方とコハクには声がかからなかった。
「プレゼント、プレゼントっていってもなぁ……どんなものがいいんだか、さっぱりだ」
「そうだね……。美羽の好きなものがいいんだろうけれど、欲しい物なら自分で買うだろうしね」
 うーん。と、2人は腕を組んだり、眉間に皺を寄せながら考える。
 2人共、パートーナーと両想いであるものの、恋人としての進展といえば、ないようなものだ。
 だから、たまには彼女が喜んでくれるようなプレゼントでも買おうかという話になったのだが。
 何を贈れば喜んでもらえるのか、さっぱりだった。

 結局何も決まらないまま、2人は百貨店を訪れて。
 ふらふら歩きまわって、アクセサリーショップへとたどり着いた。
「似合いそうなものを選べばいいのか? いや、俺が似合うと思っていても、本人にはびみょーかもしんねーし」
「美羽が喜びそうなものかぁ……」
 彼方とコハクはちらちらとアクセサリーを見る。
 なんだか、見る事さえも気恥ずかしい。
「プレゼントをお選びですか?」
 そんな2人に、20代半ばくらいの店員が近づいてきた。
「は、はい!」
「そうです」
 2人とも何故か赤くなって返事をする。
「大切な女性へのプレゼント、ですね?」
 店員の言葉に、2人はこくこくと頷いた。
「小鳥遊美羽様と、テティス・レジャ様にですね」
 言い当てられて、2人は赤くなってしまった。
 美羽もテティスも、コハクと彼方も有名なのだ。
「明るくて、とても元気な小鳥遊様には、少し大きめのこういったアクセサリーがお勧めです。テティス・レジャ様には、落ち着いた感じのこちらのアクセサリーなどがよろしいかもしれません」
 店員は美羽には可愛らしい物を、テティスには大人っぽい物をいくつか選んでくれた。
「美羽は……うん、リボンがとっても似合うんだよね。好んでつけてるし」
「テティスも、そう髪とかリボンで留めたらか、可愛いかも……」
 想像しながら、彼方は照れていた。
「それじゃ、このリボンをください」
「俺は、こっちのリボンを」
 コハクは可愛らしい花が描かれた、リボンを選んだ。
 彼方は、金色の高級感のある細いリボンを選んだ。
 代金を支払い、ラッピングをしてもらうと、2人は内ポケットの中に、隠すように、護るように、あたためるように入れて。
 また恥ずかしげに笑い合って、店を後にした。

 大切な彼女達は喜んでくれるだろうか。
 多分、最初に見せる顔は――驚きの表情だろう。
 その後に続く顔と、言葉。
 それからリボンをつけた恋人の姿を思い浮かべて、少し緊張しながら2人は宿舎へと戻っていった。