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薔薇色メリークリスマス!

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薔薇色メリークリスマス!
薔薇色メリークリスマス! 薔薇色メリークリスマス!

リアクション

「すみません、人混みに酔ってしまったようです」
「いいのいいの。気にしないで、真一郎さん」
 薔薇園を歩きながら詫びの言葉を口にした鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)に、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)はそう笑いかける。
「レモさんにプレゼントは渡せたし、ケーキも堪能したしね」
 だから、後は二人きりで過ごしたい……そんな風に、ルカルカは金色の瞳を真一郎に向けた。

 レモへのプレゼントは、ももいろわたげうさぎだった。パーティ会場が少し落ち着いた頃を見計らって、先に渡しておいたのだ。
「僕に、ですか?」
「うん。この前ヒラニプラに来てくれた時、素敵なお土産をくれたでしょ? すっごく嬉しかったから、そのお礼と、私からのクリスマスだよ♪」
 その言葉に、「ありがとうございます」とレモはお礼を言って、可愛らしいウサギを見やった。ふわふわでもこもこのうさぎは、愛らしくレモをじっと見上げている。
「ももいろわたげうさぎさんだよ。お名前をつけてあげてね。世話は凄く簡単だし一匹だと寂しがるといけないから、沢山連れてきたよ」
 実際、レモに渡されたカゴのなかには、六匹のウサギがまるまっていた。
「名前……考えますね。みんな、可愛いなぁ」
 蕩けそうに目を細めて、レモはカゴのなかのウサギを撫でる。
「よかった、気に入ってくれて。レモさんは、可愛いもの好きかなって思ったのよね」
 ルカルカの予想は、当たっていたようだ。それにレモは、ふわふわと柔らかいものを撫でるのがとても好きだった。

 そのときのレモの笑顔を思い出し、ルカルカはふふっと笑う。
「どうかしましたか?」
「ううん。ただ、サンタさんになれたかなーって」
 そして今からは。
 隣の人が、ルカルカのサンタになる時間だ。
「そうですか」
 真一郎はきまじめに頷いた。
 今日はパーティということで、白地にピンストライプのワイシャツにスリーピースのスーツと、ぱりっと決めている。スーツ越しにもそれとわかるほど鍛え上げられた身体は、黙っているとかなりの威圧感だ。
 しかし、真一郎の精悍な顔立ちに浮かんでいるのは、今はただ、優しい表情だけだった。
 本来は、こういった華やかなパーティのような場所は、真一郎は苦手としているし、それをルカルカもわかっている。
 クリスマスの夜のデートのために、こうして来てくれた優しさが、ルカルカには嬉しかった。
 同時に、こんなロマンチックな雰囲気でも、相変わらず肩の一つも抱こうとはしない不器用さも、真一郎の可愛さだとルカルカは思う。
「薔薇がいい香り。それほど寒くもないし、まるで春のようね」
「ええ、そうですね」
 ゆったりと小径を歩いているうちに、ルカルカはヤドリギの飾りを見つけ、指さした。
「ヤドリギの下で愛を誓うと永遠ってホント?」
「そういう言い伝えも、あるようですよ」
「ふぅん……それなら」
 えいっとばかりに、ルカルカはあたりにばらばらと魔法の力でヤドリギを呼び出した。濃い緑の葉が、二人のまわりにぽんぽんと次々現れる。
「いつもより多めに出してみました★」
 あはっと笑うルカルカに、真一郎はふわりと微笑んだ。
 いつもそう。こんな風に、真一郎は、ルカルカの子供っぽい部分も鷹揚に受け入れてくれるのだ。
 笑いあって、そっと指を絡める。それだけで、幸せな気持ちになれる。
 いつかは、ずっとこうして……と、そうお互いに願ってはいるのだが……。
(パラミタの情勢が安定したら結婚なんだけど、いったいイツになったら落ち着くのかなあ)
 それを考えると、少しだけため息がでそうになる。
(いつまでも恋人。ずっと刺激的な関係…ってのも悪くはないんだけどね)
 内心で、ルカルカは独りごちる。しかし、顔には出さずに、「じゃあ……」と愛を告げようとしたルカルカの前で、真一郎は「その前に、受け取ってください」と懐から小さな箱を取り出した。
「え、これって……」
「クリスマスプレゼントです。開けてみてください」
 嬉しいサプライズに、ルカルカはその場で小さく飛び跳ねて喜んで、プレゼントを受け取った。
 中に入っていたのは、可憐なハートのイヤリングだ。
「嬉しい、真一郎さん」
 プレゼントよりなにより、その気持ちが嬉しかった。
 無骨で不器用な真一郎が、どんな顔をして、これを選んでくれたんだろう? そう想像するだけで、可愛くて愛しくて、たまらなくなる。
「真一郎さん、大好き」
 心からそう告げて、ルカルカはもう一度、真一郎の手をきゅっと握った。

 終わりが見えない、せわしない軍務の日々だけども……だからこそ、こんな一瞬が、本当に大切だとも思えるのかもしれない。
 たとえ目に見える形で結ばれることが、すぐにはできなくても。こうして心とめく一瞬一瞬が、やがて、二人の永遠の絆になるのだろう。

 金の瞳をわずかに潤ませるルカルカの頬を、真一郎の指が優しく撫でた。