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リアクション
第1章 きゅっと約束
「あ……」
百合園女学院で、愚痴をこぼしていたミルミ・ルリマーレン(みるみ・るりまーれん)は、空気の変化を感じて、顔を上げた。
「ミルミちゃんむぎゅーっ」
「きゃーっち!」
「ふふふ、前回から腕を上げたわね……っ、ふふふー」
ミルミに抱き着いてきたのは、牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)だ。
出会うなり抱き着くことの多いアルコリアの気配を、ミルミは最近察知できるようになっていた。
今日は後ろから抱き着こうとしたのに、アルコリアは前から抱き留められてしまった。
「えっへん」
胸を張るミルミを前に。
「話は全て机の下で聞かせてもらいました!」
アルコリアも胸をづばんと張った。
「お見合いしたくないなら遊びにいこー。なんなら、シーマちゃんに羽付けて、ミルミちゃんの影武者でお見合いに参加させるので!」
「そ、それいい! それでお願い」
「うんうん、しーまちゃんへんたいはびおさんとけっこんおめでとー! ぱんぱかぱーん! ってねー」
「ぱんぱかぱーん!」
パートナーのシーマがいたら断固拒否したとは思うが、白百合団の仕事でこの場には来ていない為、勝手にファビオとのお見合い話が進められていく。
が……。
「でも、ミルミとしてお見合いして、ミルミとの話が進んじゃったらマズイからなぁ」
ミルミはふうとため息をついた。
「それじゃ、会場に攫いにいこうかー」
「え?」
「ライナちゃんとかに、手紙渡しておくよ。『ミルミちゃんが欲しければ私を倒してみよ』とか『ミルミちゃんは預かった、返して欲しくば〜』とか。果たし状とか脅迫状とかいろいんなパターンのね!」
アルコリアの言葉の意味が良く分からず、ミルミは不思議そうな顔をしていた。
「んー、実際には当日、こう説明すれば大丈夫だと思いますよ?」
ぎゅむーっとミルミを抱きながら、アルコリアは言う。
「アルコリアさんが抱きかかえて連れてった、どうしようもなかった。って」
「アルちゃん……」
「ねー? ミルミちゃん。コンサート出席しないといけないのにー、お見合いとかも必要なのにー、凄い力でだきしめられてー、連れ去られちゃうんだよねー? どうしようもないよねー?」
「でも、そしたらアルちゃんのイメージが」
「イメージ? 別に何も変わらないと思いますよ?」
至極当然のように言うアルコリア。
「……そ、そうだねっ。ふふ」
抱きしめられて、ミルミは嬉しそうに笑う。
「それじゃ、よろしくねっ、アルちゃん。アルちゃんの分のチケット、ミルミが用意しておくよ」
「りょーかい。クリスマスコンサートにむぎゅーしに行きますよー」
「コンサートは静かに聞くから大丈夫だと思う、ダンスパーティの時に来て!」
「わかりましたー。その後は、空京で面白そうな地球の美術展やってるみたいだから、そこいこ」
「うん、いくいく〜っ」
ミルミもぎゅっとアルコリアを抱きしめ返して、2人はすりすりし合いながら約束したのだった。
〜コンサートから抜け出して〜
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