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リアクション
晴天の日、とある小さな教会にて、ジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)とフィリシア・レイスリー(ふぃりしあ・れいすりー)は二人だけのプライベートな挙式を執り行うことになった。
式場に向かう二人の表情は晴れており、挙式するまでジェイコブもフィリシアも内心不安を抱えていたとは微塵も思わせない。
結婚の前夜、全ての準備を終えたジェイコブとフィリシアは、向かい合って座り、お互いに心の中を整理していた。
ジェイコブの心の中では、婚約して半年、あまりにもスムーズに結婚に行きついたことが引っかかっていた。もう少しじっくり考えるべきではないか。もし急いて事を仕損じたら、フィリシアのことを傷つけてしまうのではないか……。
ちらりとフィリシアの表情を窺うと、フィリシアの表情にもどこか陰りが見えた。結婚式までの様々な準備での疲れもあるだろう。だがそれだけでなく、どこか不安の色も確かに浮かんでいた。
「--フィル」
ジェイコブは、フィリシアを呼んだ。 そして、フィリシアの顔を真っ直ぐに見つめて、ジェイコブは確信した。
フィリシアがジェイコブのことを必要としているように、ジェイコブもフィリシアを必要としているのだ。
ただのパートナーとしてではなく……
「……ええい、お前じゃないとダメなんだ、理屈はいらん! フィル、オレはお前を命がけで幸せにする!」
その言葉が、ジェイコブの胸の内の全てだった。
改めてのプロポーズに、フィリシアは驚いたように目を見開いた。ーーその瞳の端から、ぽろぽろと涙が溢れ出した。
そして、二人は互いの温もりを感じながら幸せな眠りについたのだ。
そんな昨夜の出来事を思い返しながら、控え室ではタキシード姿のジェイコブがぼんやりとフィリシアを待っていた。
昨日のフィリシアに告げた想いに偽りはない。そう、確かめるように記憶を辿っていた。
「ごめんなさい、お待たせして……」
そう言ってジェイコブの元に現れたのは、スレンダーラインのウェディングドレスを身に纏い、美しくドレスアップされたフィリシアだった。
ジェイコブは、しばらくぼんやりとフィリシアを見つめていた。
「あの……どうかしたかしら?」
フィリシアの控えめな声にジェイコブははっと我に返り、そして二人は挙式に臨んだのだった。
式は滞りなく進み、指輪交換になった。
ジェイコブはぎこちなく指輪を受け取り、震える指先でフィリシアの薬指に指輪をはめた。
フィリシアもジェイコブの指に指輪をはめる。二人は改めて、これから夫婦になるのだ、という想いを噛みしめる。
「それでは、誓いの口付けを」
神父の言葉を受けて、ジェイコブはフィリシアに向き合った。
ゆっくりと、フィリシアの唇に自身の唇を合わせる。不器用だが精一杯の想いを込めて……。
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